マイク・トラウト、大谷翔平のトレード放出はロサンゼルス・エンゼルスを救う苦渋の選択となるのか

2022-07-03
読了時間 約3分

エンゼルスはマイク・トラウトを放出できるのか

マイク・トラウトは公に不満を口にするタイプではない。

トラウトはポストシーズンに出場できたのはこれまでに1度しかない。それも2014年に遡る。そして、これまでに3回のMVP受賞を果たし、9年連続で同賞投票最終候補トップ5に入った。ちなみにMVP最終候補入り連続記録は2021年でついに途切れた。このシーズンのトラウトは36試合しか出場しなかったからだ(それでもbWar は1.8だった)。それにもかかわらず、ロサンゼルス・エンゼルスは負け続けてきた。もちろんトラウトに責任はないし、そのことはトラウト自身も知っている。

トラウトのキャリアを通して、エンゼルスの投手陣は崩壊し続けてきた。球団オフィスが大金を投じて獲得してきた選手のほとんどは期待外れだった。

繰り返すが、それでもトラウトは公に不満を口にするタイプではない。トラウトはいつもエンゼルスにいることに満足していると言ってきた。負けたこととプレーオフを逃したことは悔しいが、変化はすぐに表れることを確信しているとも言っていた。

だがしかし、6月28日(日本時間29日)の試合中、トラウトもついにいらだちを隠せなくなってしまった。

全米中のエンゼルス・ファンはそれを目撃した。そしてとても不安になった。あのマイク・トラウトがいらだっているのだ。うんざりしているようにも見える。怒っているのではない。ただ失望しているのだ。

その場面をもう一度見てみよう。

ツイート訳:センターのマイク・トラウトはエルビス・ペゲーロが投球の癖を見抜かれていることにいらだっている。もううんざりだと思っているようにも見える。

もちろん、これは一瞬の出来事だ。我々はあまり深読みするべきではないのだろう。だがどうしても本音が仕草にでてしまった決定的な瞬間だったように感じてしまう。それが他の誰でもない、マイク・トラウトだったからだ。

昨年のこのツイートをどうしても思い出してしまう。

ツイート訳:エンゼルスのニュースハイライトはいつもこんな感じだ。「マイク・トラウトは3本のホームランを打ち、打率を.528まで上げました。大谷翔平はこの100年間誰もやってこなかったことをやっています。そしてタイガースはエンゼルスを8-3で下しました」

我々はエンゼルスにどんな未来が待っているかも考えざるを得ないだろう。

トラウトはチームに留まる。そのことはほぼ間違いない。2030年シーズン終了までの長期契約を結んでいるからだ。単年では3,450万ドル(約46億5800万円)になる。あるいはエンゼルスはトラウトをトレード放出するべきだという意見も出てくるだろう。それはけっして完全に間違っているわけではない。だが、健康な状態のマイク・トラウトと交換するに相応しい才能をエンゼルスが手に入れることを考えるのは難しい。トラウトはまだ30歳なのだ。しかも、年俸の一部をカバーする現金も支払わなくてはいけないかもしれない。第一、本当にトラウトをトレード放出などできることだろうか。その代わりに何を得られるとしてもだ。

トラウトはまったく衰えを見せていない。今年ここまでの68試合で23本の本塁打を打ち、191 OPS+ と 4.2 bWARの成績でMLBのトップクラスだ。

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そうなると、こちらの疑問の方が現実味を帯びてくる。大谷翔平はどうなのだろうか。

エンゼルスは大谷翔平を放出できるのか

大谷は誰もが期待した以上のことをやってのけている。リーグ屈指の先発投手であると同時に、屈指の強打者でもあるのだ。そして、2023年シーズンの後にはフリーエージェントになる。

このことをどう考えたらよいのだろうか。大谷はエンゼルスとあと246試合分の契約を残している。今年はあと84試合、そして2023年の162試合だ。

大谷は競争心が強く、野球界の最大の舞台で競うことへの欲求をしばしば公言している。エンゼルスがまたも期待外れのシーズンを終えたあと、大谷はエンゼルスに残ることを選択するだろうか。トラウトがそうしてきたことを見た後でもあるのに。いつかトラウトがこんなことを大谷に囁くかもしれない。「俺にはもう遅すぎる。でも翔平、お前は後悔するなよ」

さらにもうひとつの問題がある。エンゼルスは大谷を繋ぎ止めるために必要となる巨大な資金を本当に用意できるのだろうか。

トラウトとアンソニー・レンドンの2人だけにエンゼルスが向こう4年間に支払わなくてはいけない年俸は以下の通りだ(特別ボーナスなどは含まない)。

  • 2023年: 7250 万ドル(約98億円)
  • 2024年: 7250 万ドル(約98億円)
  • 2025年: 7250 万ドル(約98億円)
  • 2026年: 7250 万ドル(約98億円)

そして、仮に大谷がエンゼルスに譲歩して、7年総額2億4500万ドル(約331億円)、年平均3500万ドル(約47億3600万円)のやや控えめの契約を結んだとしよう(それより高くなるかもしれないが、議論を進めるためにこう仮定する)。エンゼルスは少なくとも向こう5年間、たった3人の選手に毎年1億500万ドル(約142億円)を払わなくてはいけなくなるのだ。

ベンチ入り枠26人のうちのたった3人に支払うには大金過ぎないだろうか。

そこで2人の選手だけに絞るとなれば、それはトラウトとレンドンであり、大谷はトレード放出されるだろう。馬鹿げたことに聞こえるかもしれない。しかし、大谷がフリーエージェントとしてチームを離れることをエンゼルスがただ許容するわけがない。その可能性はゼロだ。

そしてトラウトと大谷だけがチームに残る可能性もゼロだ。レンドンの契約は固定されたものであるからだ。もしこのままレンドンが故障から抜け出せないと、史上最悪の契約になるかもしれない。

それでは大谷とレンドンを残し、トラウトをトレード放出する選択肢はあるだろうか。少なくとも考慮の余地はあるだろう。もし大谷とトラウトのどちらかを選ばなくてはならないとすれば、若い方を選ぶかもしれないからだ。なにしろ大谷は1人で2人分の仕事をこなせるのだ。

これがエンゼルスの現状である。オールスター前で早くもプレーオフ進出の望みがまたも消えそうになっている。もはやトラウトか大谷をトレード放出するしかない。レンドンとの契約がある以上、2人ともチームに残すことはほぼ不可能だからだ。

トラウトとは違い、エンゼルスのファンは失望しているのではない。激怒しているのだ。

(翻訳:角谷剛)

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