投手・大谷翔平の6月における好成績の裏に秘密兵器の存在:炎上したヤンキース戦後に「PitchCom」を使い始めたから?

2022-07-05
読了時間 約2分
(Getty Images)

6月に入るまで、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平は、先発投手としてはまずまずの働きをしていた。勝利数はあまり増えなかったが、5月には先発したすべての試合で6回以上を投げた。ところが、6月2日のニューヨーク・ヤンキース戦では3本の本塁打を浴び、4失点と打ち込まれ、わずか3回でマウンドを降りた。

6-1での敗戦が決まった後、当時監督だったジョー・マドン氏はヤンキースが大谷の球種を見抜いていたのではないかと示唆した。

「ヤンキースは投手の癖を見抜くのがとても上手いんだ」とマドン氏はスポーツニュース専門ウェブメディア『スポーツネット』に語っている。

それを聞いた大谷は笑ってこう答えた。

「僕にはよく分かりません。相手チームに聞いてもらった方がいいですね」

ひとつだけ確かなことがある。もし大谷の癖が見抜かれていたとすれば、それはエンゼルス投手コーチのマット・ワイズでも気がついていなかったということだ。投手の癖が見抜かれることはエンゼルスにとって大きな問題になりつつある。

まずは大谷のこの件であり、その数日後にはマイケル・ローレンゼンが1回を投げたあとに自分の癖が見抜かれているのではないかとマイク・トラウトに相談したことがあった。そして極めつけは6月28日(日本時間29日)のこの出来事だ。センターを守っていたトラウトがエルビス・ペゲーロの癖を指摘する仕草を見せたのだ。

ツイート訳:センターのマイク・トラウトはエルビス・ペゲーロが投球の癖を(敵に)見抜かれていることにいらだっている。もううんざりだと思っているようにも見える。

関連記事:マイク・トラウト、大谷翔平のトレード放出はロサンゼルス・エンゼルスを救う苦渋の選択となるのか

エンゼルスにとって由々しき事態となっていたが、ヤンキース戦での炎上のあと、大谷は見事に復調した。そのわけを最も分かりやすく説明する言葉とは「(球種サイン出しの)近代化」である。

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大谷は直近4試合で『PitchCom』(訳者注:捕手が投手にサインを伝える電子機器。捕手はボタン操作で球種を伝え、投手は音声でそれを受け取る)を使用した。MLBはサイン盗み防止と試合のペースアップを理由に今季から同端末の使用を承認した。これにより相手チームに球種を見抜かれ難くなる。そして大谷は歴史的な快投を演じたのだ。

大谷翔平の4月と5月の投手成績

今シーズン開幕後の2か月、大谷の成績はまずまずであったが、2021年にMVPを受賞したときの活躍を期待するファンからするとやや物足りないものだった。安定はしていたが、凄いとは言い切れないレベルだったのだ。

4月と5月の成績

選手名 投球回数 防御率 奪三振 与四死球 FIP WHIP 被本塁打
大谷翔平 44 回1/3 3.45 63 10 2.50 1.04 5

大谷翔平の6月の投手成績

大谷は6月に5試合で先発登板した。成績は大幅に向上したが、ヤンキース戦での数字が全体に影響を与えてしまっている。

6月の成績

選手名 投球回数 防御率 奪三振 与四死球 FIP WHIP 被本塁打
大谷翔平 29 回2/3 1.52 38 7 2.59 0.98 3

これでも悪くはないが、直近の4試合に限れば、つまりPitchComを使い始めてから、大谷の成績はさらに目覚ましい。

選手名 投球回数 防御率 奪三振 与四死球 FIP WHIP 被本塁打
大谷翔平 26 回2/3 0.34 36 6 1.10 0.75 0

大谷がやってのけていることは、ほかにそれほど例があることではない。まるで2019年6月にマックス・シャーザーが記録した防御率1.00とFIP 1.59を思い起こさせる。シャーザーはその月に大谷より2試合多い6試合に先発登板したことは考慮に入れるとしても、大谷の過去1か月の活躍はそれと肩を並べるといってよい。

大谷は6月29日(同30日)のシカゴ・ホワイトソックス戦で腰を痛めたような素振りを見せた。大事に至らないことを祈るばかりだ。大谷がこの調子でPitchComを使いこなしていけば、シーズン後半戦では思いもかけないことが起きるかもしれない。

(翻訳:角谷剛)

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