セントルイス・カージナルスが誇るノーラン・アレナドとポール・ゴールドシュミットが、カナダ政府の外国人に対する新型コロナウイルス規制により、同国のトロント・ブルージェイズとの連戦を欠場する。潜在的なリスクとメリットを判断したうえでワクチン未接種の両選手について同チーム監督は理解を示すが、コロナ禍以来、この問題は度々発生している。スポーティングニュースのDavid Suggs記者がリポートする。
国境を超えるブルージェイズとの対戦で浮上するコロナ禍の弊害
セントルイス・カージナルスはMLB全体で最も激戦が繰り広げられている地区のひとつで戦っている。ナショナル・リーグ中地区のトップを走るミルウォーキー・ブルワーズをゲーム差2.5で追いかけ、まさに1試合も落とすことができない状況である。
しかし、今週に行われるトロント・ブルージェイズとの敵地シリーズにおいて、カージナルスは間違いなくチームのベストメンバーを2人とも欠くことになる。ノーラン・アレナド三塁手とポール・ゴールドシュミット一塁手が新型コロナウイルスのワクチン接種に関するルールに抵触するため、同シリーズに出場できないからだ。球団社長のジョン・モゼリアク氏が7月24日(日本時間25日)にシンシナティ・レッズとの試合後に発表した。
その後、2人の選手は個人的事由による決断であるとコメントした。
MLB公式サイトは、アレナドが「これはただ個人的な選択です。私はここで政治的な主張をするつもりはありませんし、スポークスマンの役割を担おうとも思いません。私はただ自分自身と私の家族のために最良の道を選んでいるだけです。何も攻撃する気はありません」と語ったと報じている。
同じように、ゴールドシュミットの「簡単な決断ではありませんでした。しかし、この問題が始まってから1年以上もの間、私はできるだけ多くの医師や専門家たちに相談し、自分自身で理解しようと努めてきました。そして私の結論は、ワクチン接種の潜在的リスクは、潜在的メリットを上回るというものです」というコメントも伝えている。
ブルージェイズの本拠地トロントはカナダにあり、カナダ政府は外国からの入国者全員に入国14日前より先に新型コロナウイルスのワクチン接種を2回とも完了していること(ジョンソン&ジョンソン社製ワクチンは1回)を条件としている。
この条件はこれまでにもいくつかのMLBチームに影響を与えてきた。トロントに遠征するチームから欠場選手が出るケースが多々あったのだ。シアトル・マリナーズはエースのロビー・メイ投手が古巣相手の試合に登板できなかった。メイはブルージェイズに在籍していた2021年シーズンにサイヤング賞を獲得している。ほかにも、今月初めにはカンザスシティ・ロイヤルズがトロントでの4連戦シリーズで10人もの選手を欠いたことで大きな話題となった。
ゴールドシュミットとアレナドは、ワクチン未接種を理由に欠場した最大のスター選手であるかもしれない。先週末までのゴールドシュミットは打率.333、出塁率.416、長打率.603、本塁打22本というMVP級の成績を挙げている。アレナドはプラチナ・ゴールド・グラブ賞級の守備力と安定した打力で、野手では最高の5.2 bWARを積み上げている。
アレナドとゴールドシュミットのワクチン接種に対する姿勢について、カージナルスのオリバー・マーモル監督は「正直に申し上げるのですが、私は彼らの決断を心から尊重します。彼らとはよく話し合いました。私は彼らの考えを尊重し、そして合意します。そこには何のわだかまりもありません」と述べたことをMLB公式サイトは報じている。
カージナルスには彼らの穴を埋めるだけの若い選手層を持っている。とくにブレンダン・ドノバンとノーラン・ゴーマンは有望だ。しかし、それでも地区首位を争うチームにとっては大きな痛手であることは間違いない。
マーモル監督がこうも言ったとMLB公式サイトは伝えている。「私は別の見方をしています。今シーズンここまでチームを引っ張ってきてくれた2人の決断を尊重するだけの力を球団組織全体が持っているのだと。誰もが自分自身が納得できないものを自分の体に入れたくはないでしょうから」
オースティン・ロマイン捕手もまたワクチン未接種を理由にブルージェイズとの2連戦シリーズを欠場する。
シリーズを欠場することで、アレナドは38万4,416ドル(約5251万円)、ゴールドシュミットは24万1758ドル(約3303万円)を、それぞれ失うことになる。ロマインは1万989ドル(約150万円)を失う。
原文:Cardinals' Nolan Arenado, Paul Goldschmidt ruled out of Blue Jays series due to vaccination status
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本編集部