2022年のMLBワールドシリーズを制したヒューストン・アストロズの原動力となったジェレミー・ペーニャ。カルロス・コレアという大黒柱を失ったアストロズにとっては、待望の後継者として七面六臂の活躍をみせた。そんな救世主のワールドシリーズでの軌跡をエドワード・ステラン(Edward Sutelan)記者が紹介する。
コレアの後継者となったペーニャの躍動がチームに活気
カルロス・コレアはヒューストン・アストロズの救世主になるはずだった。2012年ドラフトで全体1位指名を受け、2015年にはメジャーリーグに昇格すると、たちまちチームの将来は輝かしいものになったと思われた。コレアは瞬く間にホセ・アルトゥーベと並ぶスター選手となり、そしてのちにサイン盗みスキャンダルで評価が地に落ちることになるアストロズを象徴する存在となった。
2022年シーズン前にコレアはFA移籍でチームを去った。アストロズはチームの将来を託すことができる遊撃手を探すことを余儀なくされた。そのポジションについたのがジェレミー・ペーニャである。その当時はあまり知られているとは言えない新人選手だった。2021年のMLBパイプラインではチーム内有望株選手ランキングの第4位であったに過ぎない。
11月5日(日本時間6日)まで時計を早送りすると、アストロズのファンはコレアの後継者に悩むことはもうない。ペーニャはポストシーズンを通して絶好調であったが、ワールドシリーズではその勢いはさらに増した。カイル・タッカーがワールドシリーズ制覇を決定するフライボールをグラブに収めた後まもなく、ペーニャのワールドシリーズMVP受賞が決定した。MLB史上、新人選手がこの賞に選出されたのは3番目のことである。
「チームメイト全員のおかげだよ。毎日の準備で僕を助けてくれた。個人の賞は素晴らしいことだけど、僕らが本当に欲しかったのはコミッショナーズ・トロフィー(ワールドシリーズ優勝トロフィー)だったのさ」とペーニャは語った。
ペーニャの活躍はどれだけこの栄誉に相応しいのか。
まずは安定性を挙げたい。ペーニャはワールドシリーズの全6試合で最低1本以上の安打を打った。なにしろフィラデルフィア・フィリーズはチーム全体でもそれができなかったのだ。
そしてペーニャの安打が持つ意味が大きい。第1戦では2塁打を打ち、カイル・タッカーの本塁打でホームベースを踏んだ。第2戦では先制のタイムリー2安打でホセ・アルトゥーベをホームベースに迎え入れ、さらにヨルダン・アルバレスの2塁打で自らホームベースも踏んだ。アストロズが0-7で大敗した第3戦でも、チーム全体で5安打のうちの1本はペーニャが打ったものだった。
続く3試合ではペーニャの活躍はさらに神がかり的となった。第4戦ではワールドシリーズで初の複数安打を打ち、この試合3点目となる得点をあげた。第5戦では3安打だった。まず初回に先制となるタイムリー安打、4回には新人遊撃手としてワールドシリーズ史上初となる本塁打を打った。この本塁打が決定打となり、アストロズは3-2で勝利した。
そして第6戦、ペーニャは6回にアルトゥーベを1塁に置いた場面でシングル安打を打ち、アストロズのチャンスを広げた。そしてアルバレスの勝ち越しスリーラン本塁打で生還したのだ。
コミッショナー・トロフィーがアストロズのオーナーであるジム・クレーン氏に手渡されたあと、ペーニャはワールドシリーズ最優秀選手賞(MVP)トロフィーを受け取った。ラリー・シェリー(1959年、ロサンゼルス・ドジャース)、リバン・ヘルナンデス(1997年、フロリダ・マーリンズ)に次ぎ、MLB史上3人目の同賞を受賞した新人選手となった。ペーニャは先にアメリカン・リーグ・チャンピオンシップシリーズでもMVPに選出されている。同じポストシーズンで両方のMVPを受賞した新人選手はペーニャ以前にはヘルナンデスしかいない。さらに言えば、シェリーもヘルナンデスも投手であり、ペーニャは野手としては初の新人MVP受賞者である。
ペーニャは自身のMLBにおける最初のシーズンで多くの称号を獲得した。新人遊撃手としては史上初のゴールドグラブ賞、アメリカン・リーグ・チャンピオンシップシリーズMVP、そしてワールドシリーズMVPである。次世代スター選手としての重責は十分以上に果たしたと言えるだろう。
原文: Who won World Series MVP in 2022? How Jeremy Peña led Astros to a championship
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本版編集部