大谷翔平も驚異的な活躍をみせた2022年のMLB、シーズン中に起きた「22」の素晴らしい出来事

2022-11-11
読了時間 約5分
(Getty Images)

ヒューストン・アストロズのワールドシリーズ制覇で幕を閉じた2022年のMLB。大谷翔平が昨季に続いてリアル二刀流で記録的活躍をみせたが、それ以外も様々な記録達成劇やドラマがあった。忘れがたい「22」の出来事を本誌ジェイソン・フォスター(Jason Foster)記者が解説する。


2022年のMLBシーズンでは数多くの素晴らしい出来事が起きた。そもそもあの醜く長期化したロックアウトのあとでシーズンが行われたこと自体を喜ぶべきでもある。1試合も行われないのではないかと疑ったことさえあったのだから。

しかしシーズンが始まると私たちは数多くの楽しくエキサイティングな出来事を目の当たりにした。それらは個人記録、チームの快挙、あるいはさらに大きな分野での出来事までもが含まれる。

そのなかでも特に印象的だったものがある。2022年MLBシーズンに起きた22の素晴らしい出来事をあげてみよう。順不同である。

1. アーロン・ジャッジが62本の本塁打を打った

ステロイドの時代が終わって以来、これだけの本数の本塁打を量産した選手はほかにだれもいない。そして今回はジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)のアメリカン・リーグ最多本塁打記録に注釈がつくことはない。さらに素晴らしいことがある。ジャッジは単なる本塁打マシーンではなかったということだ。どのチームも欲しがる完全無欠な打者だった。本塁打と打点だけではなく、出塁率、得点、長打率、OPS、OPS+、そして合計塁数でもリーグ1位だったのだ。ジャッジがスポーティングニュースの年間最優秀選手賞(MVP)にも他に圧倒的な差をつけて選出されたのは当然の結果だ。フリーエージェントとなった今オフ、一体どれだけの巨額契約を獲得するだろうか。

2. 多くの新人選手が大活躍した

2022年にデビューした新人選手たちの才能レベルはとてつもなく高い。フリオ・ロドリゲス(シアトル・マリナーズ)は本塁打を量産した。マイケル・ハリス2世(アトランタ・ブレーブス)のグラブは不可能と思えたボールをいくども捕らえた。チームメイトのスペンサー・ストライダーは時速100マイル(160キロ)越えの速球を連発して人々の度肝を抜いた。スティーブン・クワン(クリーブランド・ガーディアンズ)はひたすら塁に出続けた。アドリー・ラッチマン(ボルティモア・オリオールズ)は生捕手のポジションを獲得した。彼らだけではなく、ジェレミー・ペーニャ(ヒューストン・アストロズ)とブレンダン・ドノバン(セントルイス・カージナルス)の名も忘れてはならない。

そして新人選手についてはまだいくつか話題がある。

3. メジャーリーグ初ヒットが本塁打だった新人選手が史上最多だった

2022年ではその数は21人だった。メジャーリーグ新記録である。それ以前の記録は18人だった。新人選手についての話題はさらに続く。

4. スペンサー・ストライダーが前人未到の偉業を達成した

アトランタ・ブレーブスに所属するこの新人投手はMLB史上最速でシーズン200奪三振に到達した。130イニング目での到達は、たとえばランディ・ジョンソン、ノーラン・ライアン、サンディ・コーファックス、こうした野球殿堂入りを果たした伝説的な剛腕投手の誰よりも早かったのだ。さらに驚くべきことに、ストライダーがシーズン開幕当初は救援投手としてデビューし、初の先発登板は5月30日だったのだ。

新人選手についての話題はまだ続く。

5. オニール・クルーズが時速122.4マイル(約197キロ)の打球を打った

8月24日のブレーブス戦でクルーズ(ピッツバーグ・パイレーツ)が打った打球はスタットキャストが導入されて以来の最速記録を叩き出した。打球はライトフェンスを直撃し、そのまま右翼手のロナルド・アクーニャ・ジュニアの手に収まった。そのためクルーズのこの打球は凄まじいシングル安打となった。下がその動画だ。

ここからは新人選手以外の話題になる。

6. アルバート・プホルスが通算700本塁打を達成した

シーズンが始まる前はプホルスがこの大台に到達することは難しいと思われていた。しかし42歳のプホルスは若き頃のパワーを取り戻し、本塁打を連発してセントルイス・カージナルスの躍進に貢献した。8月1日からシーズン最終戦までの期間、プホルスの成績はOPS1.098、本塁打17本という素晴らしいものだった。通算700号は9月23日のロサンゼルス・ドジャース戦で飛び出した。この試合2本目の本塁打だった。シーズン終了時、プホルスの通算本塁打は703本にまで積み上がった。誰もが予想しなかった本数だ。

7. ミゲル・カブレラが通算3,000本安打を達成した

プホルスの快挙よりちょうど5か月前の4月23日、カブレラ(デトロイト・タイガース)がコロラド・ロッキーズ戦でライト前にシングル安打を打ち、これがキャリア通算3000本目となった。記録が生まれたあとの歓喜と祝福はまさに感動的なシーンだった。野球ほど歴史的な記録達成に敬意を払うスポーツはほかにない。

このほかにも歴史的快挙は生まれた。

8. 大谷翔平が驚異的な活躍を続けた

歴史的な大谷(ロサンゼルス・エンゼルス)の2021年シーズンを越えることは不可能だと思われていた。スポーティングニュースではそれをスポーツの歴史で最も偉大なシーズンに選出したくらいである。しかし大谷はそれをやってのけた。2021年は打撃成績がずば抜けていたが(投手成績も悪くはなかった)、2022年は投手成績がずば抜けていた(打撃成績も悪くはなかった)。この数字を見てほしい。打者としては本塁打34本とOPS+ 135、投手としては15勝9敗、防御率2.33、そして奪三振219個である。合計のbWARは9.6だ。まさに超人的である。

そして超人的な話題はこれ以外にもある。

9. ジャスティン・バーランダーが史上屈指のカムバックを果たした

考えてもみてほしい。バーランダーはほぼ2シーズンを全休した(2020年と2021年を合わせて先発登板1回のみ)。そして2022年に38歳で復活すると、サイヤング賞級の成績を残したのだ。信じがたい快挙だ。18勝、防御率1.75、そして0.829 WHIPはアメリカン・リーグ1位である。さらに所属するヒューストン・アストロズはワールドシリーズを制覇した。素晴らしい1年だ。

10. ナショナル・リーグ東地区タイトルレースは素晴らしかった

2022年の同地区ほど盛り上がったレースはほかにない。ドラマ、トラッシュ・トーク、そして楽しいエピソードに満ちていた。振り返ってみよう。まずニューヨーク・メッツがいったんは10.5 ゲーム差をつけた。しかしブレーブスが急浮上し、メッツと並んだ。そして10月の第1週に両チームの直接対決3連戦シリーズがアトランタで行われた。ブレーブスがこのシリーズを3連勝し、のちにタイブレークを制することにつながる。数日後、両チームはまったく同じ101勝61敗でレギュラーシーズンを終えたのである。この地区優勝タイトル争いで両チームは自分たちが考える以上に消耗してしまったのかもしれない。なぜなら、どちらもプレーオフの第1ラウンドで敗退してしまったからだ。それでもこの戦いは至高のエンターテイメントを野球ファンに提供してくれた。

ナショナル・リーグ東地区の話題を続ける。

11. エドウィン・ディアスがトランペット演奏とともに入場し、人気を呼んだ

ニューヨーク・メッツのクローザーであるディアスがプルペンから入場する際のテーマソングに、ブラスタージャックスとティミー・トランペットの『Narco』が使われた。ディアズがマウンドに向かうたびに球場は観客が熱狂するエンターテイメント会場と化した。本物やおもちゃのトランペットを持ち込むファンも現れ、近年のメジャーリーグで指折りの記憶に残るクローザー入場劇が生まれた。なにしろティミー・トランペット自身も何回か球場に現れ、ライブで演奏したのだ。野球は楽しくあるべきであり、そしてこれは楽しかった。

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楽しさについてさらに語ってみよう。

12. ボルティモア・オリオールズには誰もが驚いた

2022年のMLBで最も驚くべきニュースはオリオールズの快進撃ではなかっただろうか。過去3回のフルシーズンで平均111敗していたチームがシーズンを勝ち越すことなど、誰も予想することはできなかった。とくにトレード期限ではこのチームは売り手側でもあったのだ。しかし、オリオールズは勝利を積み重ね、最終的に83勝79敗でシーズンを終えた。2016年以来初めての勝ち越しシーズンである。野球といかに予測困難なスポーツであるかを示す新たな好例となった。

予想外だった喜ばしい話題はほかにもある。

13. ウィントン・バーナードがメジャーリーガーになった

あるいは記憶にない名前かもしれない。しかし、この大きな話題を呼んだ動画を見たことがある人は多いのではないだろうか。11年間のマイナーリーグ生活で5つのチーム組織を渡り歩いたバーナードがついにコロラド・ロッキーズでメジャー昇格を果たしたことを母親に電話するものだ。心温まる瞬間だった。31歳になっていたバーナードのデビュー戦は8月12日だった。その日に初安打を打ち、8月中にさらに11安打を積み上げた。最終的にシーズンで12試合に出場し、打率.286 の成績を残した。長年の努力と忍耐が実を結ぶところを見るのはいつでも素晴らしいことだ。

そのような話題はまだまだある。

14. カイル・ライトが21勝をあげた

投手の才能を評価するうえで勝利数は必ずしも最適の統計ではない。それでも、このブレーブスの右腕があげた数字は満足するべきものだった。2021年のワールドシリーズで活躍したとは言え、シーズンのほとんどを3Aで過ごした投手が翌シーズンに20勝以上をあげるとは誰も予想しなかったに違いない。それまでのライトはメジャーリーグの舞台では極めて不安定な成績だったのだ。ところが今シーズンのライトはMLB最高のチームで先発ローテーションの一番手を任されるまでに成長した。チームにとっては非常に喜ばしいサプライズだっただろう。

投手の話題を続ける。

15. サンディ・アルカンタラは完投型投手を復権させた

先発投手がせいぜい5回を投げるのが当たり前となった時代において、このマイアミ・マーリンズの右腕は2022年シーズンに6試合を完投した。2016年以来の最多記録であり、どの投手より2倍も多い。今シーズンの投球イニング数は228回2/3で、大差でのMLB最多投球回数を誇る。14勝9敗、防御率2.28、0.980 WHIPの成績を残し、自身2度目のオールスターに選出された。古き良き時代を彷彿させるシーズンだった。

古き良き時代と言えばまだ話題がある。

16. 2人の三冠王が誕生するかもしれなかった

三冠王は野球において達成することが最も困難なシーズン記録のひとつだ。1950年からたったの4回しか実現していない。しかし、2022年には2人の打者がこの偉業に限りなく近づいた。ナショナル・リーグではカージナルスのポール・ゴールドシュミットが長い間、打率、本塁打、打点のすべてでリードしていたが、シーズン終盤で失速した。アメリカン・リーグでもアーロン・ジャッジがシーズン最終シリーズに入るまで三冠王の可能性があった。本塁打と打点ではジャッジが圧倒的にリードしていたが、打率(.311)ではミネソタ・ツインズのルイス・アラエス(.316)に5厘差で敗れた。どちらのケースも非常に惜しいところだった。

17. シアトル・マリナーズが長い冬の時代を終わらせ、ついにプレーオフ進出を果たした

マリナーズはそれまで21年間もポストシーズンから遠ざかっていた。北米プロスポーツにおける不名誉な最長記録である。2021年に健闘した翌年、9月30日にカル・ローリーが打ったサヨナラ本塁打によって、ついにマリナーズはその壁を乗り越えた。この若いチームの躍進によって、太平洋岸北側に野球熱が再び戻ってきた。プレーオフに進出すると、ワイルドカード・シリーズでトロント・ブルージェイズを下す殊勲をあげ、続くアメリカン・リーグ・ディビジョン・シリーズでもアストロズを相手に小気味よい戦いを見せた。第1試合はドラマティックであったし、第3試合は延長18回の死闘を演じた。結果としてこのシリーズは全敗してしまったが、マリナーズのファンは心配することはない。このチームはすぐにまた、前回よりはるかに早くプレーオフに戻ってくるだろう。

ようやく実現した出来事と言えばこんな話題もある。

18. サンディエゴ・パドレスがついにノーヒットノーラン試合を達成した

それが実現するまでに54年かかった。4月9日のテキサス・レンジャース戦でジョー・マスグローブが被安打0で試合を終わらせた瞬間、パドレスにとって球団創設以来初となるノーヒットノーラン試合が実現した。それまでパドレスはその記録を持たない唯一のMLBチームだったのだ。

そして、ノーヒットノーランと言えばもうひとつある。

19. ワールドシリーズでノーヒットノーランがあった

1956年のワールドシリーズでドン・ラーセンが完全試合を達成して以来途絶えていたあることが起きた。第4戦でアストロズが4人の投手を継投させてフィラデルフィア・フィリーズ打線を無安打に抑え込んだのだ。ワールドシリーズの歴史で2度目となるノーヒットノーラン達成だった。フィリーズは3人の走者を出したに留まった。すべて四球によるものである。クリスチャン・ハビエル(先発して6イニングを投げた)、ブライアン・アブレイユ、ラファエル・モンテロ、そしてライアン・プレスリーの見事なリレーで、1本の安打も許さなかった。

ポストシーズンの話題を続ける。

20. 拡張されたポストシーズンが待ち望んでいたドラマを作った

多くの人が14チームに拡大されたプレーオフ制度をいまだに好んではいないだろう。しかし新制度が発効した1年目に早くも多くのエキサイティングなドラマが生まれた。ワイルドカード・シリーズではフィリーズとマリナーズのカムバック劇が見られ、ガーディアンズがサヨナラ本塁打でシリーズを制し、パドレスがレギュラーシーズン101勝のメッツをくだした。そしてナショナル・リーグ・ディビジョン・シリーズではフィリーズが番狂わせでブレーブスを破り、パドレスがドジャースをこれも番狂わせで破った。誰がこれを予想できただろうか。そう多くはいないはずだ。

21. ダスティン・ベイカーが監督として初めてワールドシリーズを制覇した

ほぼ30年の月日が必要だった。しかしこれでベイカー監督の野球殿堂入りは確実になっただろう。1993年に監督としてのキャリアを開始してから、ありとあらゆる栄誉を手にしてきたが、ただひとつワールドシリーズ優勝だけは縁がなかった。長い間10月の悲劇を象徴する存在であったが、もうそうではなくなった。

ベイカー監督についてはもうひとつある。

22. ダスティン・ベイカー監督はスコアブックをつけるのに忙しく、ワールドシリーズ制覇を決定したアウトの瞬間を見逃した

30年も待ちに待った監督としての初戴冠を目の前にして、ベイカー監督が固唾をのんでフィールドを見つめていたと思うだろう。しかし、そうではなかった。ベイカー監督は野球人そのものなのだ。だから、常に自分のなすべき仕事を最優先させる。何十年も挑戦し続けてきた目標がまさに達成されようとしていても、すべてが終わるまで喜ぶことさえしない。

これらが2022年MLBシーズンに起きた22の素晴らしい出来事だ。春季キャンプが開始されるまで長い冬の間、我々野球ファンの心を温めてくれるだけの思い出は十分あるだろう。

原文: The 22 coolest things that happened during the 2022 MLB season
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本版編集部

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