創設65年目、ついにメジャーリーガーを輩出した高校野球部の物語【後編】

2018-08-19
読了時間 約2分

ブレット・グレイブスは2011年ドラフトでセントルイス・カージナルスから26巡目指名を受けたが、拒否してミズーリ大学に進学した。彼は2014年ドラフトでオークランド・アスレチックスから3巡目指名を受け、入団。マーリンズが2017年12月にルール5ドラフトで彼を獲得したが、今年の春先は故障でプレーできなかった。

彼はマイナーリーグで7度リハビリ登板をした後、念願のメジャーリーグに到達した。デビュー戦では最初の打者、マーク・トランボを内野ゴロに打ち取った。次打者ノーラン・アレナドからは三振を奪った。

「グレイブスのボールは好きだね」とマーリンズの捕手JT・リアルミュートは、オールスターゲーム開催時にスポーティングニュースに語った。

「彼は本当に、本当に良い速球、それから素晴らしいカーブを持っている。最近投げ始めたカッターもある。コマンドも良く、内野ゴロを量産できる」

ハウエル高校野球部の成功はもちろん、偶然の産物ではない。1997年にサンフランシスコ・ジャイアンツから18巡目指名を受けた元ハウエル高校のスター、ダレン・セシルのようなアシスタントが、野球の文化を育んだのだ。

「それはある意味、世界に向けて、自分が達成し得る可能性に向けて目を開かせてくれた」とネイト・オーフは言った。

「すでに何かを成し遂げた人たちの文化に触れることで、さらに大きな夢を見られるようになる」

そしてトニー・パーキンスの存在は、全てが回り続けるためのエンジンだ。

「トニーはものすごく組織的に細かく、練習プランなどを管理していた」とグレイブスは言った。

「彼はプログラムを作って、運営することにとても長けていた。それを初日から実行するんだ。どんな高校のプログラムでも、そういったものは重要だと思う。彼は本当に細かいんだ。全員が全てを見られるようにして、全員が同じページにいるようにする。僕らはそれ故、正しいことにいつも集中できたと思う」

パーキンスがヘッドコーチとしての23年間で大事にしてきた哲学は「壊れていなければ、直さない」だ。

「練習も、子供たちへのアプローチも、仕事の仕方も変わりません。キャンプでさえ、同じことをします。多少の微調整はしますが、コピーアンドペーストの繰り返しです。それで上手くいっているのです」と彼は言った。

「自分の椅子に座って、優勝したときやベスト4入りしたときの写真を眺めているとき、それは長い道のりだったことを思い出します。そして今私たちが話している2人の男は、その中心人物でした」

バイキングスの野球部について語る上で、C&Hとエンジェルファイアの話は欠かせない。パーキンスがハウエル高校野球部の監督になって最初の20年間、チームはC&Hボールパークでホームゲームを戦った。それはセントルイス地域における、他のどのホームグラウンドとも違っていた。

その球場はまず、キャンパスの外にあった。高校から車で15分ほどの距離だ。球場にはちゃんとしたスタンドがあり、いつも様々な年代の人で一杯だった。野球を見に来た人、あるいはただ近くを走っていた人。ハウエル高校の試合日は、駐車場を確保するため30分前には到着していなければならなかった。プレーオフの試合では、最低でも2時間前だ。

「とてもホームだと感じられた。兄のジャロンがプレーしていた頃、まだ子供だった僕はいつも球場に試合を観に行っていたんだ」とオーフは言った。

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「彼らと同じくらい良い選手になれるとは思わなかったけど、気付けばそこでプレーしていた。あの頃を思い出すのは楽しいね」

2013年は、ハウエル高校がC&Hをホームにしていた最後のシーズンだった。2014年、新しいキャンパスの球場に移った。それは素晴らしい施設で、学校の中にある。でも、それはC&Hではない。

「場所を変えるにあたり、それが最も難しい点でした」とパーキンスは言った。

「たくさん血と汗、そして涙を流した。そこで長年働いたんだ。その場所から離れるのは、私にとって難しいことでした」

もうひとつ、エンジェルファイアについて。それはハウエル高校野球部のウェブサイトの、昔ながらのドメインネームだ。「www.angelfire.com/mo2/fhbb/」。そのウェブサイトは、パーキンスが1998年頃に学校の体育オフィスにあるコンピュータで作ったウェブサイトそのままだ。バイキングスの卒業生やファンの中から、そのサイトをブックマークしていない人を見つけるのは難しい。

「いつもそのサイトを見ていたよ」とグレイブスは言った。

「ツイッターが生まれるよりも前に、彼らは掲示板やらブログやらを持っていたんだ。チームに関する全てがそこに載っていたから、いつも見ていた」

そこには、ハウエル高校野球部の殿堂入り選手たちが載っている。それからトップチームと2年生、1年生チームのスケジュール、現在と過去の年間成績、歴代記録、大学野球でプレーした卒業生、サマーキャンプ情報、卒業生のゴルフ大会の結果、チームの一員になるための情報、コーチの経歴やドッジボール大会の結果。初期のウェブサイトと現在の違い? 4度の州チャンピオンに輝いた記録が報告されていることだ。

オーフもグレイブスも、エンジェルファイアの話になると笑った。

「僕の心に残っているウェブサイトのひとつだね」とオーフは言った。

「2人の兄が同じチームにいて、彼らが残した成績も見ることができた。よくサイトを見て、色々チェックしていたよ。僕が卒業するとき、僕の成績やら何やらがそこに残るのも良かった。エンジェルファイアのことは一生忘れないだろうね」

グレイブスとオーフはエンジェルファイアのサイトに登場しているが、彼らは今、他のクールなウェブサイトにも自分のプロフィールページを持っている。MLB.com、そしてベースボールリファレンスだ。

(完)

原文:MLB rookies Brett Graves, Nate Orf give strong St. Louis prep program its first big-leaguers
翻訳:Muneharu Uchino

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