【コラム】WBCは野球界最高の大舞台になったと言えるのか? 2023年大会は何が違う?

2023-03-07
読了時間 約3分
(Getty Images)

2023年3月、野球世界一を決める国際大会、第5回ワールド・ベースボール・クラシック(2023 World Baseball Classic™|以下WBC)が開催される。

ここでは、本誌『スポーティングニュース』のジェイソン・フォスター記者が、今大会の存在価値や位置付け、過去の大会との違い、MLBのワールドシリーズやサッカーのワールドカップ級のイベントになれるのか、といったことについて思いを綴る。

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WBCは真の意味での大舞台になったのか?

今回のワールド・ベースボール・クラシック(以下、WBC)は今までとは違うようだ。そこには期待がある。そこには興奮がある。そこには想像がある。前回までと違い、私はとても楽しみにしている。

表面的にはその理由は明らかだ。私たちはメジャーリーグの真剣勝負を11月から見ていない。期待があって当然だ。各チームの豪華な代表選手ラインアップを見れば興奮せざるを得ないだろう。

大谷翔平がチームメイトのマイク・トラウトを相手に投げるかもしれない。ほかにもいくつかの興味深い対決が実現するかもしれないことを考えると、想像力がかき立てられる。

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こうしたことが、前回までの大会にまったく存在しなかったというわけではない。しかし、2023年は水面下でもっと別の何かが起きているような気がするのだ。それは数字で表せるものではない。しかし間違いなく感じられることだ。緊張感は今までになく高い。すべてがただ壮大に感じられる。

大物選手たちの多くが出場を志願している。出場が叶わなかった選手は大きな失望感を隠さなかった。彼らの真剣さが伝わってくる。高いレベルの戦い、国を代表する誇り、新たなチームメイトとの友情、そうした要素が今大会ほど鮮明になったことはかつてないように思える。記念するべき大会になるだろう。初めてと言うべきか、ついにと言うべきか、WBCが真の意味での大舞台になったのかもしれない。

私の同僚であるRyan Faganの記事にあるように、WBCはこれまでずっと豪華なエキシビションのようなものだった。選手たちは真剣に勝とうとしていたのかもしれないが、そこに緊張感はなく、また本当の意味での栄誉もなかった。遊びのようなものだったのかもしれない。だが、今年は違う。

「僕らの頭の中にはひとつのことしかないよ。優勝するために頑張る。それだけだ。たくさんの強敵チームがいるけど、僕が代表チームに参加することを決めたすべての理由は優勝するためだ。ほかには何もない。それ以外は失敗でしかない」

アメリカ代表チームのキャプテンを務めるマイク・トラウトは、1月20日のビデオ・インタビューでそう言っている。

これは記者会見における建前的な発言ではない。彼らは本当に勝利を欲しているのだ。

WBCの価値は『次のレベル』に到達する?

そうなると、私には疑問が生じてくる。WBCはワールドシリーズと同等かそれに近い価値を持ったと考えてよいのだろうか?

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それは必ずしも狂った考えではない。FIFAワールドカップはサッカー界最高の名誉であり、プレミアリーグで優勝することよりはるかに価値があると万人に認められているではないか。それは一日にして成ったものではない。数十年ですらない。ワールドカップは100年近い歴史を経て、現在の地位を確立した。

それに比べると、WBCはせいぜいティーンエイジャーだ。しかし、これからどのように成長するかは誰にも分からない。ワールドカップの歴史を紐解くと、その可能性も見えてくる。

第2次世界大戦によって12年間の空白期間が生じる以前、ワールドカップは3回しか開催されていない。1950年に再開し、1958年にはペレが登場し、ワールドカップは世界中で最大のスポーツイベントへと成長していった。

WBCは4回開催された後、新型コロナウイルスのパンデミックによって2021年大会が中止になり、好評だった2017年大会の興奮が冷めてしまった。似たような経緯を感じてしまうではないか。

ここで明確にしておくが、WBCがワールドカップの半分レベルに到達するまでにはまだ何十年もかかるだろう。しかし、今から30年後、ひょっとしたら私たちは2023年大会を思い出して、あれが「本当の」あるいは「近代的な」WBCだったと言うかもしれない。

あの大会こそが、このイベントの名誉と価値を次のレベルにまで引き上げたのだと。

そのためには何が必要になるのだろうか。大谷がまたも超人ぶりを発揮して、マウンドで圧倒的なパフォーマンスを見せて、何本かのホームランを打ち、世界を驚かせたらよいのだろうか。マイク・トラウトが大活躍して、現代最高選手のステータスを取り戻せばよいのだろうか。この2人が決勝戦の最終回、ランナー満塁の場面で対決すればよいのだろうか。最高の選手層を誇るドミニカ共和国が本領を発揮して他の国を圧倒すればよいのだろうか。私たちが予想もしなかった選手がビッグプレイを連発して人々の視線を独り占めすればよいのだろうか。

今年の大会がどのような結末を迎えるにせよ、WBCは野球界で最も栄誉ある真剣勝負のイベントへと成長する可能性を持っている。それほど野球に熱心ではない人々にもアピールし、世界中に野球を広めて、新たなファン層を開拓することができるイベントに、である。

まだまだ道は遠いかもしれない。しかし、いつかは始まらなくてはいけないのだ。2023年はその良き出発点になるかもしれない。

原文: World Baseball Classic finally seems ready to become "a thing"
翻訳:角谷剛

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