世界最古のゴルフトーナメント『全英オープン』開幕直前に、米PGAツアー(以下PGA)がリブ(LIV)ゴルフに関して反トラスト法(独占禁止法)に違反する措置をとったかどうかの調査を米司法省が開始したと報じられた。これに対しリブゴルフCEOのグレッグ・ノーマンは、PGAの自業自得だと断じた。しかし、PGA側はかつての調査と同様にお咎めなしになると確信している。
PGAへの独禁法違反調査は、現地時間の7月11日に米経済紙『The Wall Street Journal(WSJ)』によって伝えられた。リブゴルフが行った6月の開幕戦『リブゴルフ・インビテーショナル・ロンドン』初日に、PGAはフィル・ミケルソンやダスティン・ジョンソンらツアー会員だった17人の選手に対し、無期限のPGAツアー参加資格停止の措置をくだし排除した。
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PGAは同紙の報道後、司法省からの調査を受けていることを公に認めていた。司法省はリブゴルフ参加者サイドにも聞き取りを行っているとも報道された。
こうした報道を受け、ノーマンはリブゴルフ・インベストメントの本部がある南フロリダ・パームビーチの地元紙『Palm Beach Post』の取材に対し、PGAへの調査は「彼らの愚かさの証である」と語った。
「(PGAの)代わりに私たちが(司法省からの)電話を受けて、ただこう言うだけさ。『我々が解決してやる』とね。こんなのは簡単に解決できることであって、バカバカしいだけだ」とノーマンは話した。
ノーマンは続けて、PGAは「自分たちでこの事態をもたらした」と糾弾。リブゴルフはPGAツアーの一部でありながら、「独立した個人事業主であるゴルファーに、何かほかのことをして生計を立てる権利」を与えただけのことだと話す。ノーマンは以前、ゴルフ界のなかでのリブゴルフの立ち位置を以下のように語っていた。
ゴルフ界のエコシステムのなかで共存し、メジャーのなかで共存し、DPワールドツアーのなかで共存し、PGAツアーのなかで共存し、選手がどこででもプレイできるように、一からビジネスモデル全体を構築しました。
なぜ米司法省はPGAツアーを調査している?
前述通り、7月11日、米経済紙『The Wall Street Journal』は、リブゴルフ参加者に対するPGAの措置に関して、米司法省の独占禁止法部門から、当該選手の代理人に連絡があったと報じた。
PGAは、サウジアラビアの政府系ファンドが資金提供する新興リーグである『リブゴルフ』への参加を選択したメンバーのPGA会員資格を停止を発表。措置発表直前に10選手がツアー会員から脱退したが、その意思の有無にかかわらず、17選手に対して措置がくだった。資格停止の期間については明言されておらず、事実上の無期限停止になっている。
PGAが連邦政府によって調査されたのはこれが2回目であり、1度目は1994年に実施されている。当時の連邦取引委員会は、今回のリブゴルフの件と同様に、PGA会員がコミッショナーの許可なしに非PGAイベントに参加することを禁止するPGA規則を調査した。 WSJ紙の報道によれば、テレビのゴルフ番組の大会に出演・出場した選手が罰則の対象になっていた。
この件に関して、連邦取引委員会は1995年に「疑義取り下げ」の形で、調査を終えている。
司法省の調査について「別に予想外ではありませんでした」とPGAの広報担当者はWSJ紙に語っている。「私たちは1994年にも同じようなことを経験しており、同様の結果になることを確信しています」と自信を持って答えた。
PGAツアーの選手は独立した個人事業主なのか?
ゴルフ界へのリブゴルフのセールスポイントの一番の売りは、ゴルファー自身が誰のためにゴルフをするかを自由に選択できるという触れ込みだった。WSJ紙によると、リブゴルフは選手とエージェントに書簡を送り、PGAが選手のリブゴルフへの参加を禁止した場合、「連邦政府がPGAの違法行為を調査して罰する可能性が高い」と述べていたと伝えている。
「プロゴルフをプレイするために、単に(リブゴルフと)契約したからといって個人事業主であるプロゴルファーの権利を禁止する正当な理由は認められていません」と書簡に記されていたという。
事実として、PGAツアーに属する選手は、独立した請負業者(個人事業主)であり、プレイする場所(大会)を自由に選択できる。ただし、PGA会員が非PGAイベントに参加できる報酬額と大会(開催地)を制限するPGA規制がある。PGAツアー会員である選手は、PGA主催ではないイベントでプレイするためのリリースリクエスト(出場申請)を提出する必要があり、開催地が北米以外に限り(つまり欧州やアジアなどの大会)、シーズンごとに最大3回許可される。
しかし、このリリースリクエストは規則上、PGA側が拒否することもできる。
スポーツ弁護士でフロリダ大学の講師でもあるダレン・ハイトナー氏は、米専門誌『Golf Digest』に、PGAはリブゴルフでプレイしようとしている選手たちをどのように扱ったかという点において、法律の範囲内で対処してきたと評価した。
「(PGAツアーが独占禁止法に違反しているとは)思いませんね。なぜなら、選手には禁止自体の根拠となる別の選択肢(ほかのPGA主催大会や北米以外のイベント出場許可)があるからです」とハイトナー氏は同誌に語っている。
「PGAは、独自のポリシーを順守し、優遇措置を提供せず、差別的な行動をとらない限り、選手個人をランキングから除外する権利を有する非営利団体です」
この問題がいつ解決するかについては、現時点では不明となっている。
(翻訳・編集:スポーティングニュース日本編集部)