モータースポーツ界の頂点に立つF1の72年の歴史のなかで名だたるドライバーたちが生まれ、後世に名を残す存在となった。歴代のトップドライバーたちの優勝回数、ポールポジション獲得数、最速ラップ記録数について、ネイサン・エバンス(Nathan Evans)記者がリポートする。
1950年に開始されたF1グランプリ(フォーミュラ1世界選手権)は、これまでに延べ111人のドライバーがチェッカーフラッグを受け、レース優勝の栄誉を手にしてきた。
そのなかでも、キャリアを通じていくつものレースで優勝するだけではなく、世界チャンピオンの座に何回もついたことがある伝説のドライバーたちがいる。
スポーティングニュースではF1の歴史を探ってみた。グランプリ(以下GP)で最も多くの優勝、ポールポジション、そして最速ラップの記録を刻んだ歴代のドライバーたちを紹介する。
F1史上最多の優勝回数を挙げたドライバー
ルイス・ハミルトン(103)
F1の歴史の中で最も成功したドライバーはルイス・ハミルトンである。イギリス・スティーブニッジ出身のこの男は、これまでのF1キャリアで103勝をあげている。そのうえ、今も所属するメルセデスでさらに勝ち星を積み上げようとしている。ハミルトン以外に優勝回数を3桁の大台に乗せたドライバーはいまだかつて存在しない。
ハミルトンは世界チャンピオンになった回数でもトップタイである。2008年に初めてこのタイトルを獲得して以来、これまでに7回を数えている。
ミハエル・シューマッハ(91)
F1歴代最多勝利の第2位はドイツの英雄、ミハエル・シューマッハである。91勝を記録している。ハミルトンと並び、世界チャンピオンのタイトルも7回獲得した。しかも、2000年から2004年までは5年連続である。所属していたスクーデリア・フェラーリとともに、この時期のF1シーンでまさに圧倒的な存在だった。
セバスチャン・ベッテル(53)
セバスチャン・ベッテルは世界チャンピオンのタイトルを2010年から2013年まで4年連続で獲得した。そして同国人のシューマッハに次ぎ、F1歴代第3位のレース優勝回数を挙げた。
ベッテルは2022年シーズンもまだ現役続行中である(編集部注:第13戦ハンガリーGP直前に2022年限りでF1引退を表明した)。所属するチームはアストンマーチンだ。過去にはレッドブルやフェラーリなど、F1の世界でメジャーファクトリーとされるチームに所属したこともある。
アラン・プロスト(51)
F1の歴史で最も成功したフランス人のドライバーはアラン・プロストである。1981年のフランスGPで初優勝をあげ、キャリア通算で51勝を積み上げた。プロストはまた自身のF1チームも作ったことでも知られている。1997年から2001年まで「プロスト・グランプリ」のチーム名で参戦した。
2022年1月まではルノーF1チーム(現在はアルピーヌF1に改称)のスペシャル・アドバイザーを務めたプロストは今も世界中のレース場で姿を見ることができる。
アイルトン・セナ(41)
アイルトン・セナはF1史上で最も偉大なドライバーのひとりだ。1985年に初優勝してから、歴代第5位となる優勝回数を挙げた。しかし、その輝かしいキャリアは1994年のサンマリノGPにおける突然の死で幕を下ろした。
セナは世界チャンピオンのタイトルを3回獲得している(1988年、1990年、1991年)。史上最も雨に強いドライバーともして知られている。現在でも多くのドライバーたちのアイドルとして憧憬の的である。
マックス・フェルスタッペン(34)
このリストのなかで最も新しいF1レースウィナーであるオランダ出身のマックス・フェルスタッペンは、2015年のデビュー以来、ここまでのキャリア(10月30日のメキシコGP後の段階)で34勝をあげている。
デビュー以来、毎年レッドブルでドライブしているフェルスタッペンは、2021年のワールドチャンピオンの際には物議を醸したが、2022年は後続のドライバーたちをつねに圧倒し、もはや誰も驚くことがない形でタイトルを獲得した。メキシコGPでは、1シーズンのF1レースで14勝という新記録を樹立。シーズン最大獲得ポイントでも歴代トップとなった。
フェルナンド・アロンソ(32)
スペイン出身のフェルナンド・アロンソはルノーに所属していた2005年と2006年に世界チャンピオンのタイトルを獲得した。これまでにF1史上第6位の32勝をあげている。
アロンソが最後に優勝したレースは2013年のスペインGPだ。しかし、アロンソは40歳になった現在も現役ドライバーである。アルピーヌに所属し、2022年シーズンのカナダGPでは予選2位に入り、世界を驚かせた。決勝では9位で終わっている。2001年のデビュー以来、現役最長のキャリアを誇るドライバーでもある(2022年8月1日現在で41歳、F1キャリア22年目)。
ナイジェル・マンセル(31)
イギリス出身のドライバー、ナイジェル・マンセルはその荒々しく攻撃的なスタイルからフェラーリのファンからは「ライオン」のニックネームで呼ばれた。1980年から1995年までのキャリア通算で31勝をあげている。
1992年にF1世界チャンピオンのタイトルを獲得したあと、マンセルはCARTインディカー・ワールドシリーズへの参戦を決意し、そこでも1993年にチャンピオンとなった。CARTのデビュー年でチャンピオンとなったのも、F1とインディカーの両方で同時にチャンピオンになったのも、モータースポーツ史上マンセルただひとりである。
ジャッキー・スチュワート(27)
コース上でのあまりにも速いペースから「空飛ぶスコットランド人」のニックネームで呼ばれたジャッキー・スチュワートは世界チャンピオンのタイトルを3回獲得した。
スチュワートはF1でのキャリア通算で27勝をあげ、1966年のインディアナポリス500では惜しくのところで優勝を逃した。1997年から1999年までの間、自身のチームであるスチュワート・グランプリ・レーシング・チームを率いた。
ジム・クラークとニキ・ラウダ(25)
モータースポーツのレジェンドとも呼べる2人がトップ10リストの最後を飾る。ジム・クラークとニキ・ラウダはともにその輝かしいキャリア通算で、それぞれ25勝をあげた。
歴代F1ドライバーのキャリア通算優勝回数10傑
ドライバー | F1レース優勝回数 |
ルイス・ハミルトン(*) | 103 |
ミハエル・シューマッハ | 91 |
セバスチャン・ベッテル(*) | 53 |
アラン・プロスト | 51 |
アイルトン・セナ | 41 |
マックス・フェルスタッペン(*) | 34 |
フェルナンド・アロンソ(*) | 32 |
ナイジェル・マンセル | 31 |
ジャッキー・スチュワート | 27 |
ジム・クラーク&ニキ・ラウダ | 25 |
(*)は2022年度現役ドライバー
F1史上最多のポールポジション回数を挙げたドライバー
ドライバー | ポールポジション回数 |
ルイス・ハミルトン(*) | 103 |
ミハエル・シューマッハ | 68 |
アイルトン・セナ | 65 |
セバスチャン・ベッテル(*) | 57 |
ジム・クラーク | 33 |
アラン・プロスト | 33 |
ナイジェル・マンセル | 32 |
ニコ・ロズベルグ | 30 |
ファン・マヌエル・ファンジオ | 29 |
ミカ・ハッキネン | 26 |
F1の歴史で最も多くのポールポジションを獲得したドライバーもやはりルイス・ハミルトンである。通算103回は第2位であるミハエル・シューマッハがその輝かしいキャリアで獲得した通算68回を大きく上回る。
F1史上最多の最速ラップ獲得回数を挙げたドライバー
ドライバー | 最速ラップ獲得回数 |
ミハエル・シューマッハ | 77 |
ルイス・ハミルトン(*) | 61 |
キミ・ライコネン | 46 |
アラン・プロスト | 41 |
セバスチャン・ベッテル(*) | 38 |
ナイジェル・マンセル | 30 |
ジム・クラーク | 28 |
ミカ・ハッキネン | 25 |
ニキ・ラウダ | 24 |
ファン・マヌエル・ファンジオ, ネルソン・ピケ & フェルナンド・アロンソ(*) |
23 |
かの天才ルイス・ハミルトンもすべての分野で1位にはなれないようだ。F1の歴史で最も多くの最速ラップ記録を叩き出したのはミハエル・シューマッハである。キャリア通算77回は現在61回のハミルトンでも抜くのは難しいだろう。2022年はここまで所属チームのメルセデスが苦しんでいることもある。しかし、世界チャンピオンに7度輝いたハミルトンなら、逆転は絶対に起こり得ないと断言はできない。
なお、マックス・フェルスタッペンは2022年のメキシコGP時点で19回となっており、来季にもトップ10入りの可能性がある。
原文:Which driver has the most wins in F1 history? Top 10 with most victories in Formula One
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本版編集部