カネロ vs. ゴロフキン第3戦:決着戦へのそれぞれの動機、そして敬意は戻るのか

2022-09-14
読了時間 約3分
(Ed Mullholland/Matchroom)

カネロことサウル・アルバレス(メキシコ)とゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)の「未完のビジネス」となっていた第3戦(トリロジー)が、日本時間2022年9月18日昼頃、いよいよ実現する。宿命のライバル対決最終章へのそれぞれの動機と、そして当初お互いがお互いに抱いた敬意が戻るのかについて、ドム・ファレル(Dom Farrel)記者が伝える。

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カネロ vs. ゴロフキン:4年を要した最終章の実現

両者が最後に戦ってから、多くの関係者やファンが何年も待たされた。それぞれの現在の立ち位置から推し量ると、3度目の戦いを行うのに値するかどうか疑問に思っていたことだろう。だが、第3戦正式発表後の最初の記者会見で、カネロとゴロフキンが第2戦(2018年9月)以来の対峙を終えたあとには、ボクシングファンの関心レベルは指数関数的に増幅していた。

カネロとゴロフキンは、9月17日(日本時間18日)にラスベガスのT-モバイル・アリーナで3度目の戦いを迎える。両者の初戦と第2戦も同地が舞台だった。カネロとゴロフキンが対決する場所として最適な環境であり、そして、これが決着の場となる可能性がある。

注目の第3戦にはカネロが持つ、WBAスーパー・WBC・IBF、およびIBO・『The Ring』誌認定の世界スーパーミドル級タイトルが懸けられる。カネロはニューヨークでの記者会見で、「この試合を遠ざけたくない。我々の3度目のこの試合こそが最高のものになるだろう」と語った。

両者は、この3度目の戦いで何が得られるのかを理解しているのだろう。

現世代・中量級最強を決める宿命の対決の背景には、一筋縄ではいかない緊張関係がある。スーパースター同士の対決では、ある意味それは予想されていたことかもしれないが、1勝0敗1分で有利な状況にありながら、なぜカネロはゴロフキンよりも好戦的で挑戦者のように語ったのか。一方で、ゴロフキンは「未完のビジネス(Unfinished Bussiness)」 ── やり残した仕事と位置づけ第3戦にこだわり続けた。果たして、現代ボクシング史のなかでも偉大なファイターとなった両者のこの戦いの先には、何が待ち受けているのだろうか。

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カネロ vs. ゴロフキン第3戦:それぞれのトリロジー決着戦への動機

カネロとゴロフキンが2017年に戦ったとき、多くの人々は疑問の目を向けたものの、戦いは引き分けに終わった。さまざまな評論家がゴロフキンが勝っていたと口々に指摘した。続く第2戦は、カネロがクレンブテロールの陽性反応によりネバダ州アスレチックコミッション(NAVA)によって6か月の資格停止を受けたため延期となった。カネロはメキシコで食べた(クレンブテロールが成長促進剤として投与された)牛肉のせいだと供述した。

第2戦もフルラウンドとなったが、ファンと専門家はゴロフキンに再び勝利の評価をつけた。ところが、カネロは多数決(マジョリティデシジョン)で勝利した。ゴロフキンはカネロを「麻薬詐欺師」と蔑んだが、それでも「やり残した仕事」を片付けるために彼と戦いたいと主張し続けてきた。

「もし彼が何か間違ったことをしたなら、それを完全に忘れ去ることはできない」とゴロフキンは米スポーツメディア『ESPN』の取材に語ったことがある。ゴロフキンは、ミドル級で今も不動の地位に立てる実力を示してきたが、今年2022年、40歳という節目の年齢を迎えた。45歳で世界王者になったジョージ・フォアマンの例はあるが、遺恨を残すカネロに勝たずしてキャリアを終えることはできないということなのだろう。明確な動機である。

タイソン・フューリー vs. デオンテイ・ワイルダー、マニー・パッキャオ vs. エリック・モラレス、モハメド・アリ vs. ジョー・フレージャーなどの過去の著名な「トリロジー(3度の対決)」を振り返ると、常に劇的な結末を迎えている。そうした歴史的な前例からも、カネロとゴロフキンのトリロジーは、両者が前に進むために必要なものだったのかもしれない。

カネロの動機もまた、今、ゴロフキンを倒す必要があるということだろう。それを示すように、我々が知る普段のカネロと比較しても、よりアグレッシブな側面をみせているからだ。

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カネロ vs. ゴロフキン第3戦:両者の間に再び敬意は成り立つのか

ただ、カネロがゴロフキンという存在自体をあまり気にしていないことは明らかだ。件のニューヨークでの記者会見ではそれを垣間見せた。一方、ゴロフキンにとっては、カネロという存在は忌むべきもので、まるで取り除くことができない「慢性的な痒み」になってきていた。この2人はいずれ殿堂入りすることは間違いないが、そこに敬意があるのかが問われている。結局のところ、カネロがゴロフキンにリスペクトを示すのかになるだろう。

記者会見で、カネロは対戦相手が自身に敬意を示すとき、カネロも相手にも敬意を示すことを好むと話した。ところが、ゴロフキンが自身の過去について話したとき、カネロは敬意を示さなかった。すべての話を終わらせてさっさと先に進みたいという態度をとった。

「これ(ゴロフキンとの第3戦)はオレにとって私的な戦いだ…彼は裏表のある男だ。彼はナイスガイのふりをしているが、そうじゃない。彼はナイスガイのふりをして『私はただ、戦いを求めているだけです。それだけで私は幸せです』とほざくんだ。そして別の場所でも(自分を偽って)ペチャクチャと喋り倒すんだろう」

カネロはそう話すと「ただ男になって、アンタが本当に言いたいことを言ってみろって」と挑発した。なぜこうした口ぶりになったのか。ゴロフキンとの第2戦を含めると、カネロはこの4年間で8勝1敗。スーパーミドル級に関しては、わずか11か月で世界主要4団体王座統一を成し遂げた。その9試合のなかで唯一の黒星は、WBA世界ライト級スーパー王者ドミトリー・ビボルに敗れた2022年5月の試合だ。ゴロフキンとの会見はその1か月半後の6月末に行われた。

おそらく、ビボル戦の敗北がカネロを好戦的な心理状況に駆り立てたのだろうか。

ビボル戦とゴロフキン戦のプロモート契約を結んでいるマッチルーム・ボクシング社のエディ・ハーン氏は、スポーティングニュースの取材に対し、アルバレスは(ビボルに)負けたことに怒っていて、ゴロフキンに対してそれ(怒りのエネルギー)を利用(原動力に)することを確信していたと語った。

もっとも、試合においては冷静になって自身を抑える必要があるだろう。戦いに集中したカネロは、どんな対戦相手にとっても悪い兆候になる可能性があるからだ。 

ゴロフキンは、カネロ戦との第2戦以来4連勝しており、IBFとIBOのミドル級タイトル獲得後、日本で村田諒太を撃破してWBAスーパー王座を統一した。怪我や第3戦成立の遅れがゴロフキンのキャリアに影響を与えることになったが、リング上で宿敵カネロに借りを返すことだけは常に心に秘めてきた。

外野から見れば真のライバル関係であることは間違いないが、ゴロフキンはスポーティングニュースに、「スポーツの観点からのみ『それ』を見ている」と語った。メディアやプロモーターに関係なく、大金から切り離した勝負論だけで、敬意を持ってライバル対決に向き合いたいという意向を示しているのだ。

では、日本時間9月18日に決着の舞台に立つカネロは、ひとりのファイターとして、そのゴロフキンのまっすぐな勝負論に共鳴するのか、だ。少なくとも第1戦の頃まではお互いに敬意といえるようなものを抱いていた空気があった。

カネロとゴロフキンはスーパーミドル級の主要4団体のベルトを争うことになるが、それはこのライバル対決において、最も重要な側面ではないかもしれない。彼らはそれぞれが望んだ「モノ」をこの3度目の戦いで手に入れることができるのか。両者の間にある軋轢は、決して解消されないのか。

ファン、メディア、プロモーターやほかのファイターたちが何年も待たされ、決着を観たがったトリロジーが実現することだけは確かだ。どんな結末となるのかは、我々も見守るしかない。

原文:Canelo vs. GGG 3: Unfinished business and respect on the line in Canelo Alvarez vs. Gennadiy Golovkin 2022 trilogy fight
編集:スポーティングニュース日本版編集部
※同記事は英語版記事を翻訳、日本向けに追記編集した記事となる。

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