井上尚弥はタパレス戦を制し、パウンド・フォー・パウンドのトップに上り詰めるか?|12.26 スーパーバンタム級4団体統一戦

2023-12-22
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Getty and Naoki Fukuda

テレンス・クロフォードと井上尚弥、2人のスーパースターの体重差を考えれば、直接対決は現実的ではない。それだけにパウンド・フォー・パウンドNo.1の座に輝くのはどちらか、この年末に井上が挑む4団体統一王座戦の結果に注目が集まる。

名門『The Ring』誌(リングマガジン)元編集人で本誌格闘技部門副編集長のトム・グレイが、井上がタパレス戦後にPFPキングに昇格するのかを分析する。

井上に対して一歩先んじるPFPキングのクロフォード

12月26日(火)、井上尚弥はこの12か月間で2度目となる4団体王座統一をかけてリングに上がる。WBC/WBOスーパーバンタム級王者の井上と対戦するのは、IBF/WBAスーパーバンタム級王者のマーロン・タパレス。両者が激突する4団体統一戦ならびにアンダーカードは、日本ではNTTドコモの動画配信プラットフォーム『Lemino』(レミノ)で独占無料生配信される。

この試合結果にかかっているのは、単なる4団体統一王座だけではない。もし大方の予想通りに井上が勝利すれば、1976年以来ボクシング界でなし得ていなかった、スーパーバンタム級で初の統一王者誕生となる。

しかしながら、井上が手に入れられる栄誉を全て獲得したとしても、タパレス戦の勝利で現在のパウンド・フォー・パウンド(PFP/P4P)ファイターとしてトップの称号を手に入れられるかは別の話だ。この原稿執筆時点で、世界トップのファイター2人の間にある壁は25ポンド(約11kg)、PFPトップの座を実際に拳を交えて決めることは不可能だからだ。

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そのトップに立つのが男子初の2階級4団体王座統一を果たしたテレンス・クロフォードだ。本誌『スポーティングニュース』は現在、『The Ring』と『ESPN』とともにウェルター級アンディスピューテッド王者クロフォードをPFPの世界ナンバー1、井上をナンバー2のファイターにランクしている。これは何も、井上と比べてクロフォードが圧倒的な強さを発揮しているという訳ではない。事実として言えるのは、クロフォードが旧友でありライバルでもあるエロール・スペンスJr.を相手に見せた素晴らしい戦いが、この2023年を象徴する試合だったということだ。

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ボクシング界は何年もこの対戦を待ち続けた。クロフォードはその期待に応え、後世に語り継がれるような戦いを見せた。36歳のスイッチヒッターはスペンスを3度マットに沈め、8ラウンドのうち7ラウンドで優位に立ち、9ラウンドで決着をつけた。試合後、統一王者の座に就いた『バド』がアリーナを去る時には、かの拳聖シュガー・レイ・レナードにも比べられていた。

クロフォードが2023年にリングに上がったのは1度だけだ。それでも、保持していたWBO世界/The Ring誌認定スーパーライト級王座に加えて、残る3団体の同級世界タイトルを手にする伝説的な偉業を成し遂げている。そして井上同様、世界チャンピオンとして10年目を迎えようとしているクロフォードは、ここまで40勝0敗という完璧な記録を残している。

タパレス戦勝利でも足りない? フェザー級転向後が本番か

一方、25試合しかしていないとは言え、もし年末の東京で勝利を収めれば、井上はクロフォードに肉薄するだろう。すでに4階級制覇を達成した井上のパフォーマンスはどれも印象的で、多くのファンが彼は無敵だと信じている。クロフォードが捕まえるのが難しい、正確なパンチを放つボクサーであるのに対し、井上は『モンスター』の異名通り、立ちはだかる者を打ち倒すボクサーだ。

もし今回の試合に勝った井上がPFPのランキングで1位にランクされなかったとしたら、逆転するための鍵はフェザー級へのランクアップとなるだろう。ルイス・アルベルト・ロペスやレイ・バルガス、ブランドン・フィゲロアらに勝利すれば、これまでの輝かしい実績をさらに箔がつく。 それに対し、クロフォードには次の試合、キャリアを決定づけるような対戦相手が誰となるのか見えてこない。

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どちらがランクのトップに立つにしても、ボクシングファンにとっては井上とクロフォード、この2人が同時代に戦っている姿を見られるのは特別なことであり、とても幸運なことだ。2人はすでに偉大なボクサーの仲間入りをしている。2人が目指す先にあるのはボクシング界の歴史に名を残す、不朽の名声だけだ。

※本記事は国際版記事(著者: Tom Gary)を翻訳し、日本向け情報を追記・編集した記事となる。翻訳・編集:石山修二、編集:スポーティングニュース日本語版編集部 神宮泰暁