日本時間6月2日(日)朝、張志磊(ちょう・しらい)ことチャン・ジーレイ(中国)とデオンテイ・ワイルダー(アメリカ)が激突する。ヘビー級元世界王者対決は、それぞれの復活へむけた重要な一戦だ。
サウジアラビア・リヤドのキングダムアリーナで行われるこの一戦は、フランク・ウォーレン率いる「クイーンズベリー・プロモーションズ」とエディ・ハーン率いる「マッチルーム・ボクシング」という、英国2大プロモーターによる5対5対抗戦を前座にして行われる。
なお、同イベントは、スポーツ専門の配信サービス『DAZN(ダゾーン)』の各種有料プラン加入者向けPPV(アドオンコンテンツ)としてライブ配信される。
🥊この試合の見どころ:復活を期す元王者対決
チャン・ジーレイ(26勝2敗1分、21KO)は、前WBO世界ヘビー級暫定王者だ。『ビッグバン』は、ジョー・ジョイス(イギリス)を2度にわたって破り、アジア人初のヘビー級世界王者としてそのベルトを保持していた。だが、今年3月のジョセフ・パーカー(ニュージーランド)戦で何度もダウンを奪いながら、まさかの判定負けを喫し、タイトルを失っている。
これまでの26勝のうち21戦でKO勝ちを収めているチャンではあるが、今回ばかりはワイルダーの代名詞でもあるパワーに警戒して臨む必要がありそうだ。
「ジョセフ・パーカー戦の敗戦は完全に私のミスだった」と、チャンは香港の英字新聞『South China Morning Post』の取材で語っている。
「自分の戦い方がよくなかったし、そもそも練習で準備してきた戦略を充分に活用できなかった。確かに(ワイルダー戦では)彼の重くて力強いパンチをガードする必要があるだろう。それに合わせてトレーニングも調整していく」
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一方のワイルダー(43勝3敗1分、42KO)は、元WBC世界ヘビー級王者だが、こちらも直近のパーカー戦で敗戦しており、さらにここ4試合では1勝3敗と苦戦が続いている。
『ザ・ブロンズボンバー』はこの試合で復権を果たし、年内に米国ヘビー級期待のプロスペクト、ジャレッド・アンダーソンとの対戦を実現させようと目論んでいる。そのためには、リスクを犯してでも、最近影を潜めている攻撃的なファイトを見せねばならないだろう。
ワイルダーは英スポーツ専門チャンネル『Sky Sports』の取材に対して、今までのキャリアを見つめ直し、「独善的に」なってでも本来の自分自身を取り戻すという決意を明かした。
「自分はこれまでずっと無私無欲な人生を送ってきた。周りの人々をサポートし、素晴らしい生活を送ることができるよう、文字通り自分の血と汗と涙で多くの人たちを支え、助けてきた」
「ただ、ファイターとして自分の血と汗と涙でこれまで金を稼ぎ出してきたし、今この地位にいるのも、成し遂げてきた素晴らしい結果もすべて自分の力だと思っている。そう言うのは自己中心的だと自分でも思うが、時にはそう考えるのも間違ってないと思う」
「この時点で、自分が昔のハングリーさや情熱を取り戻し、人々が思い描く『ザ・ブロンズボンバー』の姿を見せるためには自己中心的にならなくてはならないんだ」
当初、チャンvsワイルダーは、クイーンズベリーvsマッチルーム(5vs5対抗戦)の大将戦としてマッチアップされ、メインイベントはディミトリー・ビボルvsアルトゥール・ベテルビエフのライトヘビー級4団体統一戦が務めるはずだった。しかし、ベテルビエフの負傷欠場により、チャンとワイルダーの試合がメインイベントに昇格した。
プレミア・ボクシング・チャンピオンズ(PBC)の顔役でもあったワイルダーは、英国2大プロモーションによるお祭り企画のためにマッチルームと一度限りの契約を結んだが、予期せずメインイベントに立つことになった。チャンにしても、前戦のジョセフ・パーカー戦での敗戦からの再起を賭け、それぞれの思いを胸に戦う一戦となりそうだ。
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🥊チャンvsワイルダー:試合予想
デオンテイ・ワイルダーが不利なオッズをつけられたのはタイソン・フューリー(アメリカ)戦くらいであり、今回のオッズは珍しい事態と言える。しかしながら、この4年半で1勝しか挙げていないという事実を考えると、あながち間違っているとも言えないだろう。
タイソン・フューリーに対する2度のKO負け、そしてパーカーに対しての大差での判定負けの間には、1ラウンドに一発のパンチで仕留めたロバート・ヘレニウス(フィンランド)戦の勝利があった。だがそれも、さほど重要視する試合でもない。2019年11月、リマッチでルイス・オルティス(キューバ)にKO勝利して以来、ワイルダーはこれといった相手から勝利を挙げていないのだ。
そう考えると、今の『ザ・ブロンズボンバー』にとってチャンはこれ以上ない対戦相手と言える。中国出身の巨漢ファイターは現在41歳、試合のペースも遅ければ、フットワークも軽くない。チャンは距離を取ることこそうまいが、相手に対するポジション取りという点では、ワイルダーの方が大きく上回っている。
もちろん、ジョー・ジョイスを2度ノックアウトしたチャンの破壊力抜群のパンチには警戒が必要だ。それでも、ワイルダーがオッズを覆して、スピードのあるパンチであっという間にこの試合を片付けてしまうのではと思われる。
スポーティングニュース(トム・グレイ)の予想:ワイルダーの4回KO勝利
💰チャンvsワイルダーの参考オッズ
米大手ブックメーカー各社によるチャンvsワイルダーのオッズは以下の通り。いずれもチャン優勢のオッズとなっている。
- BetMGM
- ワイルダーの勝利:+125
- チャンの勝利:-150
- FanDuel
- ワイルダーの勝利:+136
- チャンの勝利:-166
- DraftKings
- ワイルダーの勝利:+120
- チャンの勝利:-150
なお、米大手ブックメーカー『FanDuel』による、この試合のプロップベット(成績・試合内容等に基づく賭け)は以下の通りとなっている。
- ワイルダーのKO/TKOまたは失格による勝利:+185
- ワイルダーの判定勝利:+1200
- チャンのKO/TKOまたは失格による勝利:+100
- チャンの判定勝利:+600
このオッズはアメリカンオッズ式となり、「-150」は100ドルの配当を手にするのに150ドルをかける必要があり、当たった場合は150+100=250ドルの払い戻し。「+125」は100ドルを賭けて当たれば125ドルの配当となり、100+125=225ドルの払い戻しとなる。
※5/29時点。
🏟クイーンズベリーvsマッチルーム 5vs5対抗戦の参考オッズ
『Bet MGM』によると、クイーンズベリーvsマッチルームの対抗戦の各オッズは以下となっている。
WBA世界ライトヘビー級王者ビボルは4団体統一戦が延期となり、急遽IBF世界2位のジナードを迎えての防衛戦になったが、ロシアの魔術師相手に、無名挑戦者は足元にも及ばないとばかりのオッズ差を計上している。
先日、井上尚弥に階級をあげての対戦を要求したWBA世界フェザー級王者のフォードは、WBC王者レイ・バルガスから2度ダウンを奪いながらも惜敗したボールを迎え撃つとあって、オッズでは僅差。王者交代の可能性はゼロではない。
フルゴビッチvsデュボアは、ヘビー級次世代スター対決だが、デュボアはオレクサンドル・ウシク戦のKO負けイメージもあるのか、不利のオッズがついた。リオ五輪銅メダルのフルゴビッチはIBF指名挑戦者である以上負けられないが、17勝無敗14KOの戦績もあり、優位と見るオッズ。耐久力に不安のあるデュボアはさらに失速か。
- WBA世界ライトヘビー級タイトルマッチ
- ディミトリー・ビボル(王者、-2500)vs マリク・ジナード(+1000)
- WBA世界フェザー級タイトルマッチ
- レイモンド・フォード(王者、-150)vs ニック・ボール(+125)
- ヘビー級マッチ:
- フィリップ・フルゴビッチ(-225)vs ダニエル・デュボア(+175)
- ミドル級マッチ:
- ハムザ・シーラーズ(-200)vs オースティン・ウィリアムズ(+160)
- ライトヘビー級マッチ:
- クレイグ・リチャーズ(-150)vs ウィリー・ハッチンソン(+125)
※5/29時点。
📺📱💻放送・配信先(テレビ中継・インターネット配信)
この試合は、スポーツ専門の動画配信サービス『DAZN(ダゾーン)』の各種有料プラン加入者向けPPV(アドオンコンテンツ)としてライブ配信される。
地上波・BS/CS(スカパー!)でのテレビ放送および、スポーツ中継実績のあるインターネット配信サービスのAmazonプライムビデオ(アマゾンプライムビデオ)、ABEMA(アベマ)、U-NEXT(ユーネクスト)、SPOTV NOW(スポティービーナウ)、lemino(レミノ)等でのライブ配信予定はない。
放送・配信チャンネル
- テレビ地上波:なし
- テレビBS/CS:なし
- ネット:DAZN PPV
配信日時
- 2024年6月2日(日)3:00~
※中継は英語実況・解説のみ(日本語なし)。
※試合開催・放送予定は主催者・放送局の都合により変更になる場合があります。最新情報は各公式サイト等をご確認ください。
※この記事はスポーティングニュース国際版の記事を翻訳し、日本向けに一部編集を加えたものとなります。翻訳・編集: 石山修二(スポーティングニュース日本版)