再び交渉決裂…フューリーvsウシクが実現しない理由と次戦の選択肢

2023-03-23
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Top Rank

3月中旬に実現に向けて進展が報じられた、タイソン・フューリーとオレクサンドル・ウシクのヘビー級世界主要4団体統一王座戦がまたしても暗礁に乗り上げたようだ。

ファンが待ち望むヘビー級の統一戦が実現しない理由と、フューリーの次戦の選択肢について、ボクシング名門誌『The Ring』出身の本誌格闘技部門副編集長トム・グレイが解答する。

タイソン・フューリーとオレクサンドル・ウシクのヘビー級4団体統一戦が実現するには、まるで「ひとつの棺桶にいくつの釘が必要なのか」と言い換えても良いくらいの数々の疑問が積み上げられてきた。

2022年12月、フューリーがデレック・チゾラ(英国)を一方的に倒したあと、この試合(フューリー vs. ウシク)は準備万端と思われた。

しかし、2月になると、サウジアラビアの出資元がフューリーの過剰な金銭的要求のために試合開催から手を引いたと報じられた。それから一転して今月、フューリーはウェンブリー・スタジアムでの試合について、非現実的とも思える70対30の分配を要求し、ウシク陣営はそれを意外にも受け入れた。殿堂入りプロモーターのフランク・ウォーレン氏は、英ボクシングウェブメディア『iFL TV』に「たまげたことになったぞ野郎ども!」と話し、上機嫌だった。

ところが3月22日、またしても試合中止の報道がなされ、ボクシングファンは痛烈なボディブローを食らうことになった。『BoxingScene』によると、ウォーレン氏は再戦条項の交渉で決裂したことを示唆した。

ヘビー級のアンディスピューテッド王座戦(この文脈では、各時代における世界主要団体王座の最大本数での実施を指す)とは、どれほど珍しいものだろうか。

4本の世界王座となると1999年11月、レノックス・ルイス(英国)がイベンダー・ホリフィールドを3-0の判定で下し、8か月前に奪われたWBA・WBC・IBF王座と空位のIBO王座を手にしたのが最後だ(WBOが第4の世界主要団体としての権威を得たのは2004年以降。IBOは欧州では権威が認められている)。その前は、3団体時代の1987年5月にWBA・WBC王者マイク・タイソン(米国)がそれまで無敵だったIBF王者トニー・タッカー(米国)に判定勝ちし、すべてのベルトを獲得している。さらにその前の2団体時代では、1978年2月にレオン・スピンクスがモハメド・アリ(いずれも米国)を退け、WBA・WBC王座を奪取した試合だ。

たった3戦で、約半世紀も前にさかのぼったことになる。それだけ滅多に実現していないのだ。

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フューリー vs. ウシクが実現しない理由

グレイの解答:ウシクのプロモーターであるアレックス・クラシューク氏は、英国のラジオ局『talkSPORT』に、契約上合意していた再戦のためのファイトマネー分配をめぐる意見の相違により、交渉が決裂したことを明らかにした。

ウシクは第1戦でフューリー有利の70対30の割合を受け入れたが、ウクライナ人王者は自分が勝利した場合、第2戦で同じ割合(ウシク70対フューリー30)を要求したという。

交換条件としてはシンプルで簡単に見えるが、そうではなかったようだ。

フューリー陣営は、もし初戦に負けた場合、再戦を50対50で行うことを要求したという。第1戦で不利な条件を受け入れたウシク陣営にとって、これは「ラクダの背中を折る藁」(英ことわざ=この文脈では「我慢の限界を超えるトドメの要求」)のようなものであったようだ。

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また、フューリーが最近Instagramで、当初チームが要求したかどうかが議論された再戦条項そのものの完全撤回を提案したことも指摘されている。

フューリー vs. ウシクの4団体王座統一戦は実現するのか?

グレイの解答:これは厳しい状況だ。両陣営の退屈で答えが見いだせない不毛な攻防戦に加え、両選手の前には多数の挑戦者たちが立ちはだかるからだ。

フューリーとウシクは、ヘビー級の4つの正規タイトルをすべて保持している。トップクラスのコンテンダーはタイトル挑戦のために懸命に努力し、(王者たちに待たされ続け)その我慢も限界に達している。

フューリー vs. ウシクが無期限で決裂した場合、ウシクの持つWBA(スーパー)王座に挑戦するのは、イギリスのダニエル・デュボアとなる。また、IBF1位のフィリップ・フルゴビッチ(クロアチア)やWBO1位のジョー・ジョイス(英国)もウシクを意識しているはずだ。

フューリーは、2022年4月にディリアン・ホワイト(英国)と対戦し、WBCからの指名王座戦の義務付けを果たした。今のところ、フューリーがすでに2度破っているでデオンテイ・ワイルダー(米国)が同団体ヘビー級第1位の挑戦者である。なお、WBCは公式には12か月間以内の防衛戦を王者に義務付けている。計算してみれば残り時間についてはお察しのとおりだ。

タイソン・フューリーが次に戦うのは誰?

グレイの解答:なるほど、これは、あなたがきちんとした答えを持っていることを前提とした素晴らしい質問だ。

ワイルダーとの4度目の対戦は、フューリーの義務的な責任を果たし、イギリス国内での大きなビジネスとなる可能性が高い。確かにファンが熱望するような対戦ではないものの、このライバル関係は決して飽きることはない。フューリー vs. ワイルダー第4戦の可能性を否定するのは賢明ではない。

もっとも、『BoxingScene』はワイルダー陣営がウシクとの対戦に興味を示しているとも報じており、舞台裏の情勢は目まぐるしく変化している。

フューリー陣営は、もうひとりの元チャンピオン、アンディ・ルイスJr.(米国)を対戦候補として挙げている。しかし、世界レベルの選手であるとはいえ、フューリーに対して身長で7インチ(約18cm)、リーチで11インチ(約28cm)劣るルイスにとっては、ファイトスタイル的にも地獄を見る可能性がある。ルイスはワイルダーとの対戦交渉を行っていたが、決裂したことがわかっている。

フューリーが昨年クリスマス前にチゾラを撃破したことを受けて、前述のジョー・ジョイスが名乗りをあげたことも忘れてはいけない。しかし、この『ジャガーノート』は、4月15日にチャン・ジーレイとのWBO世界ヘビー級暫定王座戦を控えており、フューリーとの英国人対決があるとしても年明けになる可能性が高い。

また、元UFCヘビー級王者のフランシス・ガヌー(カメルーン)は、フューリーの対戦相手候補として何度も名前が挙がっている。ただし、36歳のMMAスターはプロとしてボクシングをしたことがなく、その試合に勝つチャンスはほぼないだろう。

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