スポーティングニュース選出フェザー級ボクシング2023年ランキング:日本からは阿部麗也もランクイン

2023-06-09
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Vargas/ PBC, Lopez and Wood/ Matchroom Boxing

ボクシング・フェザー級はここ2年の間で世界王者の入れ替わりが頻繁に起こっている。同階級の日本人といえば元WBC王者の長谷川穂積がとくに有名だが、2023年現在、阿部麗也(KG大和)、清水聡(大橋)がタイトル戦線に食い込むなど、改めて注目すべきタイミングに来ている。

スポーティングニュース独自のフェザー級ボクサー最強トップ12のリスト(2023年5月付)を作成した。名門誌『The Ring』(リングマガジン)出身で本誌格闘技部門副編集長のトム・グレイがまとめ役として伝える。


去る5月27日、フェザー級(126ポンド=57.153kg)ボクシングで格闘技ファンを熱狂させる大きな動きが起きた。

リー・ウッドが2月に地元ノッティンガムでTKO負けを喫した相手である、メキシコのノックアウト・アーチスト、マウリシオ・ララと英国マンチェスターにおいて再戦し、見事なアウトボクシングで12回3-0判定勝利のリベンジに成功したのだ。ウッドは失っていたWBA正規王座を奪還した。そして、さらに大きな試合が待ち構えている。

同じ日、北アイルランドのベルファストでは、マイケル・コンランが別のメキシコ人チャンピオンと拳を交えた。試合が始まるとそのルイス・アルベルト・ロペスはコンランのディフェンスを早々に破壊し、5回TKO勝ちでIBF王座防衛をはたした。ロペス陣営もウッドとの統一戦を画策している。

ほかにもこの階級には、WBC王者レイ・バルガス、WBO王者ロベイシ・ラミレスだけでなく、多くの強豪がひしめいている。2023年の残りで何が起きるだろうか。

スポーティングニュースでは、世界中に散らばる格闘技ライター(Dom Farrell, Tom Gray, Andreas Hale, Dan Yanofsky)の意見をまとめ、独自のフェザー級ボクサー最強トップ12のリストを作成してみた。

12. オタベク・ホルマトフ(ウズベキスタン)

  • 戦績:11勝0敗 (10 KO勝ち)
  • 次戦の予定:なし

ホルマトフはプロでは僅かに11戦しかしていない。しかし、このウズベキスタン出身の24歳は恐るべき実力を秘めている。

ホルマトフはフロリダ州ハリウッドに拠点を置いている。自在な動きを得意とする左利きで、素早いパンチと強烈なパワーを兼ね備えている。2月にはそれまで無敗だったトーマス・パトリック・ウォードを倒し、英国のボクシングファンを失意に陥れた。

そして、英国ファンにとっての悪夢のアンコールの準備もできている。WBAは王者に返り咲いたばかりのリー・ウッドにホルマトフとの対戦交渉を開始することを命じたのだ。今年の後半にもホルマトフはノッティンガム出身の英国人ボクサーと対戦することになるかもしれない。

11. レイ・フォード(米国)

  • 戦績:14勝0敗1分け(7 KO勝ち)
  • 次戦の予定:なし

「Savage」(残忍)の異名で知られるフォードは、米国ニュージャージー州カムデン出身の24歳だ。このサウスポーは世界へ飛び出すチャンスを待ち焦がれている。

2019年3月にプロボクサーとなって以来、フォードはほぼ完ぺきなキャリアを築いてきた。唯一の例外は2021年にアーロン・ペレスと引き分けた試合だ。そのあとで5連勝し、元チャンピオンのヘスス・マグダレノと対戦するチャンスを引き寄せた。

フォードは経験で勝るマグダレノから2度のダウンを奪い、12回3-0判定で大きな勝利を挙げた。アマチュア・ボクシングの米国大会であるゴールデン・グローブで優勝経験もあり、フェザー級トップ戦線において目を離せない存在だ。

10. ニック・ボール(英国)

  • 戦績:18勝0敗 (11 KO勝ち)
  • 次戦の予定:なし

26歳のボールがプロボクサーになったのは2017年のことだ。その後、2022年前半まで順調に実力を伸ばしてきた。

その年の4月にタイソン・フューリー vs. ディリアン・ホワイトの前座試合で同じ英国人ボクサーであるアイザック・ロウと対戦したとき、ボールは不利だと思われていた。しかし、ボールはウェンブリー・スタジアムを埋め尽くした大観衆の前で圧倒的な試合を展開し、6回TKOの大勝利を挙げた。

その後もボールはナサナエル・カコロロ、ヘスス・ラミレス・ルビオ、そしてルドゥモ・ラマティから印象的な勝利上げてきた。大きなチャンスが巡ってくることも遠くはないだろう。

9. 阿部麗也(日本)

  • 戦績:25勝3敗1分け (10 KO勝ち)
  • 次戦の予定:なし(IBF指名挑戦者)

阿部は知性的な左利きの日本人ボクサーだ。日本格闘界の聖地のひとつである後楽園ホールで多くの大試合を行い、その名を上げてきた。

阿部は連勝街道を走ってきたわけではなく、その歩みは必ずしも順調ではなかった。昨年5月に丸田陽七太を12回3-0判定で下したことで、ようやく集団から抜け出した感がある。

次戦で前田稔輝から僅差の判定勝ちを収めた阿部は、2023年4月には世界2階級チャンピオンのキコ・マルチネスを相手にキャリア最高のパフォーマンスを発揮し、大差の判定勝ちをもぎとった。

この勝利でIBF世界タイトルへの指名挑戦権を獲得した阿部は、マイケル・コンランを倒した正規王者ルイス・アルベルト・ロペスの対抗馬となった。

8. ジョシュ・ワーリントン(英国)

  • 戦績:31勝2敗1分け (8 KO勝ち)
  • 次戦の予定:なし

ワーリントンは英国、英国連邦、ヨーロッパの王座を獲得し、世界レベルまでの階段を着実に登ってきた。

出身地にちなんだ「The Leeds Warrior」(リーズの戦士)の異名で呼ばれるワーリントンは、初の世界タイトル挑戦となったリー・セルビー(ウェールズ)戦で判定勝ちを収め、IBFフェザー級王座を獲得した。

その後、元チャンピオンのカール・フランプトンとキッド・ガラハドに勝利し、この階級のNo.1であると評価されるようになった。しかし、故障と新型コロナウイルスのパンデミックが重なったことでブランクが生じたあと、マウリシオ・ララから衝撃的な9回TKO負けを喫してしまった。

ララとダイレクトリマッチで再戦するも、負傷引き分けの結果に終わった。しかし、キコ・マルチネスとの久しぶりの再戦では7回TKO勝ちを収め、IBF王座への返り咲きを果たした。

その初防衛戦でルイス・アルベルト・ロペスに敗れたワーリントンは現在無冠だが、リー・ウッドとの英国人対決を熱望している。

7. マウリシオ・ララ(メキシコ)

  • 戦績:26勝3敗1分け(19 KO勝ち)
  • 次戦の予定:なし

2021年2月、ララは当時無敗だったジョシュ・ワーリントンの安全な対戦相手としてメキシコから選ばれた。当時のワーリントンはステップアップするための準備をするつもりだったに過ぎない。

だがそれは間違っていた。

それまで22戦して18KO勝ちしていたララのパンチ力は本物だった。ワーリントンはダウンを重ね、ついに無惨な9回TKO負けを喫してしまったのだ。

関連記事:タイソン・フューリーvsアンソニー・ジョシュア:噂の英国人ヘビー級対決は本当に2023年に実現するのか

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ワーリントンとの再戦は不本意な負傷引き分けという結果になったが、ララの軽快な動きは対戦相手を翻弄していた。エミリオ・サンチェスとホセ・サンマルティンを続けて3回KOで下したあと、ララはリー・ウッドからも7回TKOで勝利した。

もっとも、ララの栄光は長く続かなかった。前述通り、ウッドは再戦でララから判定勝ちを収め、タイトルを奪い返したのだ。

6. マーク・マグサヨ(フィリピン)

  • 戦績:24勝2敗 (16 KO勝ち)
  • 次戦の予定:なし

マグサヨは、2021年8月にフリオ・セハを10回KOで下してWBC指名挑戦者になったが、当時のチャンピオンだったゲーリー・ラッセル・ジュニアに勝てるとは誰も予想しなかった。

ところが、その奇跡が起きてしまった。そこには幸運もあった。

4ラウンド目でラッセルは右肩を痛め、試合の残りを左手だけで戦ったのだ。12ラウンド目が終了すると、新チャンピオンが誕生した。しかし、マグサヨが王座にいた期間は短かった。

初防衛戦でレイ・バルガスに1-2判定負けを喫し、ベルトを失ってしまったのだ。その次の試合でもブランドン・フィゲロアに0-3の判定で負けた。同朋の英雄マニー・パッキャオの弟子であったマグサヨは優れたファイターだが、フェザー級トップ戦線に留まるには、意味のある勝利が必要である。

5. ロベイシ・ラミレス(キューバ)

  • 戦績:12-1 (7 KO勝ち)
  • 次戦の予定:清水聡、7月25日、東京・有明アリーナ

ラミレスはフェザー級で天性の才能に最も恵まれたボクサーだ。オリンピックで2度(2012年と2016年)金メダルを獲得している。しかし、プロデビュー戦ではアダン・ゴンサレスに1-2の判定負けを喫した。それからの戦績は完璧だ。

サウスポーのラミレスは12連勝中である。そのなかにはゴンサレスに雪辱をはたした試合も含まれる。そしてアイザック・ドグボエに勝ち、WBOタイトルを獲得した。

ラミレスはパウンド・フォー・パウンドにランク入りしてもおかしくない選手だ。プロモーターのTop Rank社がブランクを空けさせないことも好材料のひとつだ。初防衛戦は井上尚弥 vs. スティーブン・フルトンの前座カードに決定している。相手になるのは、ロンドン五輪銅メダリストのベテランファイター、清水聡だ。

4. ブランドン・フィゲロア(米国)

  • 戦績:24勝1敗1分け(18 KO勝ち)
  • 次戦の予定:なし

ボクシング界切ってのベイビーフェイスで知られるフィゲロアは、2019年11月にフリオ・セハと引き分け、WBA世界スーバーバンタム級「正規」王者昇格後初の防衛戦に相応しい栄誉を得ることができなかった。しかし、その翌年9月にはダミアン・バスケスを10回TKOに沈め、王者の称号を確かなものにした。

7か月後、フィゲロアはキャリア最大の勝利を挙げた。WBC世界スーパーバンタム級王者ルイス・ネリと王座統一戦を行い、7回2分18秒KO勝ちで2団体王座統一に成功するとともに、スターダムの扉をこじ開けた。しかし、その次の試合でスティーブン・フルトンに判定負けを喫し、タイトルを奪われてしまった。

「ハートブレーカー」の異名で呼ばれるフィゲロアは、スーパーバンタム級を離れ、2022年7月からデビュー当初のフェザー級へ階級を上げた。まずカルロス・カストロをTKOで下したあと、WBC世界フェザー級暫定王者決定戦として、フルトンとの再戦プランが浮上したが、フルトンは井上尚弥戦を選択した。

結局、フィゲロアは元王者のマーク・マグサヨに判定勝ちを収め、WBC正規王者レイ・バルガスとの団体内統一戦を待つ身となった。

3. リー・ウッド(英国)

  • 戦績:27勝3敗 (16 KO勝ち)
  • 次戦の予定:WBAから指名挑戦者オタベク・ホルマトフとの対戦が命じられた

ウッドはこれまで過小評価されてきた。この英国人ボクサーは優れたリングIQを秘め、抜群のスタミナとパワーを兼ね備え、大きなファイティング・スピリットを持っている。

徐燦(シュ・ツァン)、マイケル・コンラン、そしてマウリシオ・ララに勝ってきたことでも分かるだろう。

徐燦にもコンランにもウッドは戦前に不利を伝えられていた。その両者から12回KO勝ちを収め、世界レベルの実力があることを証明した。マウリシオ・ララには7回TKOで敗れたが、先週末の再戦ではこのメキシコ人ノックアウト・アーチストを翻弄し、判定勝利でWBAタイトルを取り戻した。

34歳になったウッドには長い時間は残されていない。しかし、まだ引退するつもりはないようだ。

2. ルイス・アルベルト・ロペス(メキシコ)

  • 戦績:28勝2敗 (16 KO勝ち)
  • 次戦の予定:なし

ほんの6か月前まで、ロペスはIBF指名挑戦者でありながらも無名の存在だった。現在ではフェザー級で世界最高のボクサーのひとりであると認められている。

ロペスは英国人ボクサーに強い。このメキシコ人ハードパンチャーは、まず2021年12月にそれまで無敗だったアイザック・ロウを倒した。そしてジョシュ・ワーリントンとも敵地リーズで対戦し、戦前の予想を覆して健闘し、2-1の僅差ながら判定で勝利した。

初防衛戦も敵地だった。挑戦者のマイケル・コンランは2017年にプロデビューして以来、世界タイトル挑戦を待ち焦がれてきた。5月27日、ロペスはコンランの野望を打ち砕き、5回TKOで勝利した。

IBF王者として、指名挑戦者の阿部麗也に狙われる立場だが、ロペス陣営は英国で絶大な人気を得ているWBA王者リー・ウッドとの統一戦を望んでいる。
 

1. レイ・バルガス(メキシコ)

  • 戦績:36勝1敗 (22 KO勝ち)
  • 次戦の予定:なし

バルガスは2階級で世界チャンピオンになりながら、その知名度と評価はあまり高くない。

このメキシコ人テクニシャンはまずスーパーバンタム級で名を上げた。WBCタイトルを5度防衛したのだ。勝利した相手には(若き日のリー・ウッドに黒星をつけた)ギャビン・マクドネル、(WBA、WBC、IBF世界タイトル挑戦歴のある)ロニー・リオス、そして(井岡一翔を封じたジョシュア・フランコと接戦のトリロジー勝負を演じた)オスカー・ネグレテがいる。2019年7月には、当時WBC暫定王者だった亀田和毅との団体内統一戦で大差をつけての判定勝利を飾った。

敵なしの状態ではあったものの足の故障の影響でタイトルを剥奪されている。さらに新型コロナウイルスのパンデミックにより約20か月のブランクを余儀なくされたあと、バルガスはフェザー級に階級を上げて、リングに戻ってきた。そのテクニックは新階級でも有効で、僅か2戦目でマーク・マグサヨの強打を封じ、判定勝ちでWBCタイトルを獲得した。

バルガスはまだフェザー級でタイトル防衛戦を行っていない。2月にオシャキー・フォスターとWBC世界スーパーフェザー級王座をかけて戦ったが、その試合では判定負けを喫している。

次戦の相手は、WBC暫定王者ブランドン・フィゲロアか、それともWBA王者リー・ウッド、IBF王者ルイス・アルベルト・ロペスとの統一戦となるのか、

原文:The Sporting News' featherweight boxing rankings: Who’s the best at 126?
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本語版編集部

*本記事は英語記事を翻訳し、日本向けの情報を加えた編集記事となる。