スポーティングニュース選出ライト級ボクシング2023年ランキング:キングはヘイニーかデイビスか

2023-05-20
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4団体統一王者デビン・ヘイニーを筆頭に、2023年現在のライト級は間違いなく世界のボクシングで最も多士済々の階級である。

スポーティングニュース独自のライト級ボクサー最強トップ12のリストを作成した。名門誌『The Ring』(リングマガジン)出身で本誌格闘技部門副編集長のトム・グレイが伝える。


今、ライト級(135パウンド=61.235kg以下)は、ボクシング界切っての戦国時代であると同時に、まさにルネッサンスの時期を迎えている。前月、136パウンドのキャッチウェイトで行われたWBA世界ライト級正規王者ジャーボンテイ(ガーボンタ)・デイビス vs. ライアン・ガルシアの一戦は、大方の予想を上回る120万件のペイ・パー・ビュー売上件数を記録した。

ファンが望む試合を提供すれば、ファンは熱狂的に反応する。そんなフォーミュラが今週末にまた繰り返される。

5月20日(日本時間21日)、ライト級の4団体統一王者であるデビン・ヘイニーが元3階級王者のワシル・ロマチェンコをラスベガスのMGMグランドで迎え撃つのだ。

このスーパーファイトの勝者がライト級の絶対王者になることは間違いないが、すぐにでもその座を脅かす挑戦者たちが現れるだろう。この階級の将来を予測することは非常に困難だ。

スポーティングニュースでは、世界中に散らばるボクシング担当ライターと編集者の意見をまとめ、独自のライト級ボクサー最強トップ12のリストを作成してみた。

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12. デニス・ベリンチク(ウクライナ)

  • 戦績:17勝0敗 (13 KO勝ち)
  • 次戦の予定:なし

ベリンチクはワシル・ロマチェンコとオレクサンドル・ウシクと同じく、ウクライナ出身のボクサーだ。2012年のロンドン五輪で銀メダルを獲得した。

プロに転向してからここまで「東洋」や「国際」が付いたタイトルを手にしてきた。これまでに勝利したボクサーたちの名を挙げると、ヴィオレル・シミオン(7回TKO)、ホセ・サンチェス(3回TKO)、イサ・チャニエフ(12回3-0判定)、イヴァン・メンディ(12回3-0判定)がいる。

ウクライナのスターも35歳になった。ビッグネームとの対戦を急がねばならないだろう。

11. キーショーン・デイビス(米国)

  • 戦績:8勝0敗 (6 KO勝ち)
  • 次戦の予定:なし

「タンク」の方ではないこのデイビスもまたオリンピック・メダリストだ。2020年東京オリンピックで銀メダルを獲得した。まだ24歳と若く、世界タイトルを虎視眈々と狙っている。

バージニア州ノーフォークの出身(あの偉大なパーネル・ウィテカーの出身地でもある)で、素早いフットワークと多彩なパンチ、そして類まれな闘志を兼ね備えている。デイビスはつい最近キャリア最高の勝利を収めた。元世界タイトル挑戦者のアンソニー・イジットをくだした試合だ。

10. フランク・マーティン(米国)

  • 戦績:17勝0敗 (12 KO勝ち)
  • 次戦の予定:なし

もしフランク・マーティンの試合を見たことがなければ、すぐに動画を探してみるべきだ。サウスポースタイルから繰り出す素早く強力なパンチと、運動能力に長けた防御力によって対戦相手を翻弄し、そして打ち倒していく様を見ることができるはずだ。

直近の試合ではそれまで無敗だったミシェル・リベラを相手にポイントで大差をつけ、文句なしの判定勝ちを収めた。その前の2試合ではロメロ・ドゥノ(4回TKO)、ジャクソン・マリネス(10回TKO)に対して強打ぶりを披露した。

9. マキシ・ヒューズ(英国)

  • 戦績:26勝5敗2分け (5 KO勝ち)
  • 次戦の予定:ジョージ・カンボソス・ジュニア(7月)

ヨークシャーに拠点を置くこのサウスポーは、2021年9月にジョバンニ・ストラフォンから大差の判定勝ちを収めるまで、むしろ英国外でよく知られていた。それ以来の戦績も順調で、ライアン・ウォルシュ(12回3-0判定)、キッド・ガラハッド(12回2-0判定)を相手にIBOライト級タイトルを防衛した。

次戦のカンボソス(オーストラリア)戦ではヒューズは圧倒的に不利と見なされるだろう。しかし、この英国人は自分のスタイルと高いボクシングIQを持っている。あるいはカンボソスを慌てさせるかもしれない。
 

Golden Boy / Cris Esquesda

8. ウィリアム・ゼペダ(メキシコ)

  • 戦績:28勝0敗 (24 KO勝ち)
  • 次戦の予定:なし

ゼペダはメキシコ出身のサウスポーだ。2015年11月にプロデビューして以来、ゆっくりと慎重にランクを上げてきた。26歳になった今では世界タイトル挑戦者のレベルにまで成長し、そのパンチ力で王者の座を狙うには十分な資格を持っている。

レネ・アルバラドとジョセフ・ディアス・ジュニアには判定にまで粘られたが、「Camaron」(エビ)の異名を持つゼペダは、常にKO勝ちを狙うファイターだ。現在WBAのNo.1コンテンダーである。

7. ライアン・ガルシア(米国)

  • 戦績:23勝1敗 (19 KO勝ち)
  • 次戦の予定:なし

この若者はある時点までは、すべてを持っていた。大型契約、ルックス、才能、スピード、パワー、そしてソーシャルメディアでの巨大な影響力…。

2023年4月まで、ガルシアは無敗だった。しかし、ジャーボンテイ・デイビスに7回ノックアウトでキャリア初の敗北を喫してしまった。

ガルシアがライト級に戻ってくることは多分ないだろう。それまでにも階級を上げることを何回か口にしていた。どの階級になるにせよ、ガルシアの転向は波乱を巻き起こすに違いない。

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6. ジョージ・カンボソス・ジュニア(オーストラリア)

  • 戦績:20勝2敗 (10 KO勝ち)
  • 次戦の予定:マキシ・ヒューズ(7月)

カンボソスは、2020年10月に元チャンピオンのリー・セルビーに僅差の判定勝ちを収めたことで名を上げた。それでも、翌年にマディソン・スクエア・ガーデンで元統一王者のテオフィモ・ロペスに挑戦したときは圧倒的不利を伝えられた。

カンボソスは予想を覆した。1ラウンド目にロペスからダウンを奪い、その後も有利に試合を進めた。試合後半にダウンを奪い返されたが、スプリット判定で歴史的な大番狂わせ勝利を収めた。

ヘイニーに2連敗を喫し、すべてのタイトルを奪われてしまったが、カンボソスがまだトップ戦線にいることには疑いの余地はない。

5. イサック・クルス(メキシコ)

  • 戦績:24勝2敗1分け (17 KO勝ち)
  • 次戦の予定:なし

「ピットブル」の異名を持つクルスは、勝利よりむしろ敗北した試合で鮮烈な印象を残している。

2021年12月、ロサンゼルスでジャーボンテイ・デイビスと対戦し、12回判定まで持ち込んだのだ。「タンク」(戦車)の異名を持つデイビスが3-0判定勝利をもぎ取ったが、最後まで緊迫した試合だった。

クルスのハイライトとなる勝利は、ディエゴ・マグダレノ(1回KO)、フランシスコ・バルガス(10回3-0判定)、ユリオルキス・ガンボア(5回TKO)などがある。
 

(Mikey Williams/Top Rank via Getty Images)

4. シャクール・スティーブンソン(米国)

  • 戦績:20勝0敗 (10 KO勝ち)
  • 次戦の予定:なし

スティーブンソンはライト級では新顔だが、早くもこの階級で最強ではないかと考えられている。まずフェザー級で世界タイトルを獲得し、その後スーパーフェザー級で統一王者になった。現在はライト級で栄光を掴むことに目標を定めている。

ニュージャージー州ニューアーク出身のこの25歳は、類まれなスピードとテクニックを兼ね備えている。これまでに挙げた勝利のなかでは、ジャメル・ヘリング(10回TKO)、オスカル・バルデス(12回3-0判定)、そしてロブソン・コンセイソン(12回3-0判定)が有名だ。

ヘイニーとデイビスの戦いに絡むことができれば、スティーブンソンには無差別級最強ランキングであるパウンド・フォー・パウンドでランク入りするチャンスも生まれてくるだろう。

3. ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)

  • 戦績:17勝2敗 (11 KO勝ち)
  • 次戦の予定:デビン・ヘイニー(5月20日)

ロマチェンコは元ライト級の統一王者であり、元パウンド・フォー・パウンドNo.1でもある。

このウクライナ出身の魔術師は3階級を制した。ライト級では小柄であるが、それでもこの階級で目覚ましい戦績を挙げている。有名な勝利にはホルヘ・リナレス(10回TKO)、ホセ・ペドラザ(12回3-0判定)、そしてルーク・キャンベル(12回3-0判定)が含まれる。

元チャンピオンとして臨むヘイニー戦では不利を伝えられているが、勝敗を決めつけるのは早計に過ぎるだろう。
 

Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

2. ジャーボンテイ・デービス(米国)

  • 戦績:29勝0敗 (27 KO勝ち)
  • 次戦の予定:なし

ジャーボンテイ(あるいはガーボンタ)・デイビスがライト級で所有しているタイトルは、WBA世界ライト級レギュラー王者しかないが、「タンク」(戦車)の異名を持つこのボクサーが同階級で最大のスターであることに疑いの余地はない。

デイビスはメリーランド州ボルチモア出身の28歳だ。これまでスーパーフェザー級とスーパーライト級の間でいくつもの世界タイトルを獲得してきた。天性のノックアウト・アーチストであるが、高い技術を持っていることは見逃されがちだ。世界最高ファイターのひとりであることはペイ・パー・ビューでの人気ぶりでも証明されている。

2023年4月、デイビスはライアン・ガルシアを下し、キャリア最高の勝利を収めた。今年のボクシング界でも最大の試合のひとつに数えられるに相応しい内容と結果だった。高いボクシングIQを持ち、キャリアの全盛期を迎えている。今、デイビスを破ることは極めて困難である。

1. デビン・ヘイニー(米国)

  • 戦績:29勝0敗 (15 KO勝ち)
  • 次戦の予定:ワシル・ロマチェンコ(5月20日)

豊かな才能に恵まれ、欠けたものがないデビン・ヘイニーはライト級の至宝であると同時に、多くの挑戦者から狙われる存在だ。

ラスベガスに拠点を置くヘイニーは、WBCタイトルを4度防衛したあと、3団体統一王者だったジョージ・カンボソス・ジュニアと対戦した。その試合に勝利したことで、1990年代前半のパーネル・ウィテカー(WBA・WBC・IBFおよび『The Ring』認定王者)以来となるライト級アンディスピューテッド王者となった。カンボソスには2連勝しており、ヘイニーの技術は異次元のレベルにある。

デイビスやスティーブンソンにとっても、ヘイニーはとてつもなく高い壁だ。しかし、その前にヘイニーはベテランのロマチェンコを倒させねばならない。この大試合に勝利すれば、ヘイニーの人気はさらに上のレベルに上がるだろう。パウンド・フォー・パウンドでのランクも上がるはずだ。

原文:The Sporting News' lightweight boxing rankings: Is Haney or Tank the best at 135? 
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本版編集部

※本記事は、英語記事を翻訳し、日本向けの情報を加えた編集記事となる。