TSNボクシング年間賞2022:最高ボクサー、最高ノックアウト、最大番狂わせ、最高試合、その他

2022-12-30
読了時間 約2分
(SN/GETTY)

様々な注目すべきマッチアップが実現した2022年のボクシングシーン。日本では井上尚弥がアジア人初の4団体統一に成功したが、世界ではカネロを撃破したドミトリー・ビボルのブレイクから、オレクサンドル・ウシクやワシル・ロマチェンコのリング内外での感動的なパフォーマンスなどが話題をさらった。

スポーティングニュース(The Sporting News)では、初の試みとして、各部門にわけてボクシング年間賞を贈る。

皮肉な話であるが、2022年のボクシング界は実現しなかった試合のことで記憶に残るだろう。たとえばタイソン・フューリー vs. アンソニージョシュア、エロール・スペンス・ジュニア vs. テレンス・クロフォード、そしてクリス・ユーバンク・ジュニア vs. コナー・ベンのように。

しかしながら、この年を締めくくるにあたって、少し前向きな態度でボクシングが与えてくれた感動に感謝しよう。忘れがたい試合、劇的なノックアウト、大番狂わせ、スター誕生物語、そして感動的なストーリーがそこにはある。

ボクシングはほかに類を見ないドラマを生み出すスポーツだ。どの1年間においても、見逃すことのできない特別な瞬間が数多くある。今年もその例外ではない。年末の今こそ、その記憶を呼び戻すには最適の時間だ。

初めてスポーティングニュースが送るボクシング界の年間賞は以下の通りだ。

年間最高男性ボクサー:ディミトリー・ビボル

ロシア出身のテクニシャン、ディミトリー・ビボルは2022年元旦の時点ではどのような1年を送ろうと考えていただろうか。それが何であったにせよ、現実に起きたことには及ばなかったに違いない。WBA世界ライトヘビー級王者のビボルは、当時パウンド・フォー・パウンド1位と見られていた『カネロ』ことサウル・アルバレスを3-0判定で下した。さらに次の試合では、それまで44戦無敗だったヒルベルト・ラミレスにもフルマークで完勝したのだ。

Scroll to Continue with Content

年間最高女性ボクサー:クラレッサ・シールズ

GWOAT(Greatest Woman Of All Time、史上最高女性ボクサー)を自称するクラレッサ・シールズは、2022年も輝かしい実績を残した。ミシガン州フリント出身のシールズはまずエマ・コズィンから10ラウンドで完勝を収めると、サバンナ・マーシャルとの4団体統一戦に目標を定めた。マーシャルはそれまで無敗を誇ったKOアーチストとして知られていた。ロンドンで行われたマーシャルとの1戦でシールドは優れたボクシングIQ、多彩な技術、そして類まれな運動能力を存分に発揮し、10ラウンドを戦い抜いた。判定は3-0でシールドに軍配が上がった。

年間最高試合:ケイティー・テイラー vs. アマンダ・セラノ

アイルランド出身のケイティー・テイラーと、プエルトリコ出身のアマンダ・セラノがリング上で拳を交えるまでには長い年月がかかった。4月30日にようやく実現したこの試合は見た者すべてを魅了した。テイラーはスピードあるパンチとフットワークを駆使するテクニシャンであり、一方のセラノは左利きの強打者である。

両者の戦いはまるでニトロとグリセリンのようだった。テイラーは試合中盤には追い込まれたが、徐々にスピードでセラノを上回り始めた。10ラウンドの攻防が終わると、テイラーにスプリット判定での勝利が告げられ、ライト級4団体統一王者が誕生した。この試合は女性ボクシングにおける史上最高の試合であったと称えられたが、あるいは男女を越えて史上最高だったかもしれない。

年間最高ノックアウト:リー・ウッド

イギリス出身のリー・ウッドと、アイルランド出身のマイケル・コンランが激突したこのフェザー級の1戦は、年間最高試合の有力候補でもあった。この試合の結末を見届けたファンは、けっしてその瞬間を忘れることはないだろう。左利きのコンランが初回にダウンを奪い、そのまま試合前半を有利に進めた。しかし、徐々に試合の流れは変わっていった。コンランのスタミナが失われ始め、ウッドが試合の主導権を握った。ウッドは11ラウンド目には最初のダウンを奪い、最終12ラウンド目にコンランを頭からリング外に転落させる強烈なノックアウトで試合を決めた。

年間最大の番狂わせ:ディミトリー・ビボル vs. サウル・アルバレス

ディミトリー・ビボルは無敗のチャンピオンであるが、メキシコの生きる伝説サウル・アルバレスを相手にWBAライトヘビー級タイトル防衛戦を行うことが決まると、下馬評ではアルバレスが圧倒的に有利だと見られていた。しかし、このロシア人スターはラスベガスのT-モバイル・アリーナでの1戦に向けて静かに自信を高めていった。ビボルは鮮やかなボクシング技術を見せつけ、アルバレスをその鉄壁な防御力で翻弄した。問題は試合後の判定に起きた。3人のジャッジ全員が115-113の僅差でビボルを優勢としたが、誰が見てもそれ以上の大差がついていたはずだったからだ。

年間最大ストーリー:母国ウクライナのために戦ったウシクとロマチェンコ

2022年が始まったとき、ワシル・ロマチェンコは、テオフィモ・ロペスに奪われたライト級王座の奪回を目指していた。そしてヘビー級4団体王者のオレクサンドル・ウシクは、アンソニー・ジョシュアとの再戦に向けて準備していた。2月後半、ロマチェンコとウシクはロシアの侵攻にさらされている母国ウクライナへ帰国することになった。しかし、その後は2人とも自軍に説得されてボクシングのリングへと戻ってきた。ウシクは8月にジョシュアを判定で下し、その2か月後にはロマチェンコがジャメイン・オルティスから判定勝ちを飾った。このストーリーを敗戦の言い訳に終始するボクサーに聞かせてやりたいものだ。

原文:Boxing Awards 2022: Boxer of the Year, Best Knockout, Biggest Upset, Fight of the Year & more
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本版編集部