去る6月6日、WBA(世界ボクシング協会)は、4月にWBA・IBF世界スーパーバンタム級王者となったマーロン・タパレスと、7月25日のWBC・WBO同級王者スティーブン・フルトン vs. 井上尚弥の勝者との4団体統一王座戦を承認した。タパレス自身もこの試合に合わせて来日し、生で視察する予定だ。
2023年内にも同級史上初のアンディスピューテッド王者が誕生する可能性が高まった背景について、名門誌『The Ring』(リングマガジン)出身で本誌格闘技部門副編集長のトム・グレイが解説する。
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伏兵タパレスがフルトン vs. 井上戦勝者にも「悪夢」見せるか
新たにWBAとIBFのスーパーバンタム級世界王座に就いたフィリピン人ファイター、マーロン・タパレスは、キャリア最大の好機を迎えている。
『ナイトメア』(悪夢)ことタパレスは、2023年4月8日にそれまで無敵だったムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)を判定でくだして世界2階級制覇王者(バンタム級・スーパーバンタム級)になったことに加え、まもなく行われるWBC&WBO同級王者スティーブン・フルトン vs. 井上尚弥の勝者と戦うことで歴史を作るチャンスを得ることになる。
この試合で、ボクシング史上、現行のWBA・WBC・IBF・WBOの世界主要4団体時代において、初のスーパーバンタム級アンディスピューテッド王者が誕生することになる。
28歳のフルトンは21戦無敗、8KOで、最高のテクニシャンである。『クール・ボーイ・ステフ』(フルトンの異名)はパワーに欠けるが、スピード、スキル、リングワークでそれを補って余りある。米国フィラデルフィアを拠点とするこのスターは、2021年からWBCとWBO王座に君臨している。
一方、井上(24勝無敗21KO)は、30歳の現在、世界で最も優れたパウンド・フォー・パウンド・ファイターのひとりだ。すでに3階級制覇の世界チャンピオンである『モンスター』は、2022年12月、ポール・バトラー(英国)を11ラウンドでKOし、バンタム級史上初、アジア人初の4団体統一王者となった。この試合後、井上はすぐにフルトンらスーパーバンタム級王者たちへの挑戦を示唆した。
両者の試合は7月25日に東京・有明アリーナで行われるが、そこからさらに4団体統一戦への道筋がスムーズに整ったことは、格闘技ファンにとっては喜ばしいニュースだろう。
WBA承認背景にSバンタム級4団体統一戦実現への強い意欲
WBAのカルロス・チャベス会長は、6月6日に発出したプレスリリースのなかで、「タパレスがアフマダリエフを破った試合は、物議をかもす接戦だった(2−1)」と触れ、フルトン vs. 井上戦勝者とタパレスの4団体統一戦承認について起こるであろうアフマダリエフ陣営からの疑義に対して認識しつつも、この試合を優先する決定は動かないことを明言している。
「(アフマダリエフのプロモーターである)『Matchroom Boxing』は、WBAにダイレクト・リマッチ要請を行い、WBAもそれをサポートできる要素もあるが、現時点では実現不可能である」
2団体王者になった直後のタパレスは、挑戦者決定戦や格下との対戦に時間をかけるのではなく、次戦のタイミングで、フルトン vs. 井上の勝者との対戦をWBAにリクエストしていた。結果として、そのフィリピン人レフティの願いは正式に叶えられた。
「この(タパレスと井上 vs. フルトン戦勝者の)試合はWBA、IBF、WBC、WBOタイトルの統一戦となり、ボクシング界のためにも認めざるを得ない、強力な理由となる」とチャベス会長はコメントし、史上初となるスーパーバンタム級4団体統一戦の早期実現に大きな意義があることを力説している。
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タパレスは、7月25日の井上 vs. フルトンをその目で見届けるために訪日予定だ。訪日前のタパレスを取材した専門メディア『Boxing Scene』は、「どちらが勝っても次は俺を通り過ぎることはできない」とメッセージを送った。タパレスは勝敗について五分五分としつつも、最終的には井上が勝つと予想している。いずれにせよこの試合の勝者に対し、4団体統一戦を掛け合うことになるだろう。
WBAは同リリースのなかで、同級ランキング2位のアフマダリエフと、同1位で元2階級制覇王者の亀田和毅に対し、指名挑戦者決定戦を命じ、この試合の勝者が4団体統一王者と対戦するとした。亀田は2021年12月時点でヨンフレス・パレホをくだして、当時王者のアフマダリエフへの指名挑戦権を得ていたはずだが、一連の流れの煽りを食う形で前王者相手に再度挑戦権を争うことになった。
※当記事はスポーティングニュース国際版の記事を翻訳し、日本向けに一部編集を加えたものとなります。翻訳・編集:スポーティングニュース日本語版編集部
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