ウシクはフューリーに対して小さすぎるのか?リング誌元編集人がモハメド・アリを例に徹底分析

2024-05-18
読了時間 約4分
Foto Olimpik/NurPhoto via Getty Images & Ring Magazine via Getty Images

日本時間5月19日朝のタイソン・フューリーオレクサンドル・ウシクのヘビー級4団体統一戦を占うキーワードのひとつが、「サイズ」だ。前者はスーパーヘビー級の巨漢、対するウシクはクルーザー級からの転向組。

はたしてリヤドでは「体格」が決め手になるのだろうか? 名門誌『The Ring』(リングマガジン)元編集人で本誌格闘技部門副編集長のトム・グレイがその疑問を解析する。


⬛大きすぎるフューリー、ウシクに立ちはだかるサイズ問題

35歳のフューリーは、205.7cm(6 ft 9 in)、リーチは215.9cm。『ジプシー・キング』はキャリア初期に250ポンド(113.4kg)の大台をうろつき、2015年にウラジミール・クリチコを退けたときは247ポンド(112kg)だった。しかし、最近のフューリーは270ポンド(122.5kg)前後で試合を行っており、10月にフランシス・ガヌーに接戦の末に勝利したときは、キャリア最多の277.7ポンド(125.96kg)だった。

37歳のウシクは、190.5cm(6 ft 3 in)、リーチは198.1cm。全21戦のうち16戦は200ポンド(90.7kg)のクルーザー級で行われ、同階級でアンディスピューテッド王者となった。2019年後半にヘビー級に転向して以来、ウシクの体重は215〜221ポンド(97.5〜100.2kg)を推移してきた。2021年9月にアンソニー・ジョシュアを退けたとき、彼はジョシュアに対して19ポンド(8.6kg)軽かった。

フューリーがシェイプアップしたとしても、10kg以上の差が横たわるこのマッチアップ。ウシクには不可能なミッションに聞こえるだろうか?

関連記事:フューリーvsウシクはいつどこで見れる?|日程・放送・視聴方法・オッズ・予想|5.19 史上初のヘビー級4団体統一戦

だが、歴史が示す例がある。ウシクの体格、そしてスタイルさえも、『ザ・グレイテスト』(史上最高)と呼ばれた「あの男」と不気味なほど似ているのだ。


⬛ウシクと似ている? 全盛期のモハメド・アリの体格は?

モハメド・アリは190.5cm(6 ft 3 in)で、リーチは198cmだった。

1964年に初めて世界タイトルを獲得したとき、アリはソニー・リストンを相手に210ポンド半(95.5kg)の体格だった。その10年後、アリはジョージ・フォアマンから王座を奪回し、その時の体重は216ポンド(97.97kg)だった。そして1978年9月、アリはレオン・スピンクスを破り、史上初となる通算3度の世界王座獲得者となった。この試合の体重は221ポンド(100.2kg)だった。

関連記事:フューリーvsウシクはヘビー級史上最高の一戦となるか? リング誌元編集人が選ぶヘビー級ベストバウト4選

ただ、注釈として「しかし」をつける必要はある。

アリの体格はウシクとほぼ同じだったが、その対戦相手の体格は現代の巨人フューリーには遠く及ばなかった。当時としては「怪物」クラスだったリストンとフォアマンの体重は、それぞれ218ポンド(98.9kg)と220ポンド(99.8kg)、スピンクスは201ポンド(91.2kg)だったからだ。


⬛もしアリがフューリーと戦ったら勝てるのか?

モハメド・アリを懐かしむ多くの人々にとって、この疑問は侮辱のようなものかもしれないが、探求する価値はある。

アリが挑んだ世界レベルの対戦相手で最も長身だったのは、身長198cm(6 ft 6 in)、体重212ポンド(96.2kg)のアーニー・テレルだった。

アリがこれまで対戦した中で最も体重の重い相手は、256ポンド(116.1kg)のバスター・マシスだったが、『ザ・グレイテスト』は、その丸々と太った敵に価値ある一発を放つのに苦労した。

Scroll to Continue with Content

結論:アリはスーパーヘビー級の時代が始まる前に登場した選手であるため、フューリーやクリチコのような巨躯と対戦するとなると、非常に難しいと言わざるを得ない。


⬛アリとウシクのファイターとしての共通点は?

本格的な分析に入る前に、アリとウシクは、誕生日が1月17日(アリは1942年生、ウシクは1987年生)で、ともにオリンピック王者であるという奇跡的な共通点を挙げよう。

スタイル的にも多くの共通点がある。ウシクはここ数十年のヘビー級で最高のボクサー・ムーバーのひとりだ。(ヘビー級の中では)小柄なため足が速く、反射神経も抜群だ。言うまでもなくアリの所作を思い出すだろう。

関連記事:5.19 オレクサンドル・ウシク対タイソン・フューリー|オッズ・見どころ(外部配信)

アリと同様、ウシクもフェイントの達人であり、フェイントでリードを奪ってからカウンターで仕留める。先代のもうひとつの得意技であるジャブは、非常に鋭く正確なパンチで、試合の流れを決定づけることができる。ウシクもジャブで相手を封じることが得意で、直近のダニエル・デュボア戦では、このジャブで試合を決めている。

ディフェンス面では、ウシクは60年代のアリほど巧みではないかもしれないが、打たれやすい選手でもない。常に頭を動かし、高さを変えるため、クリーンヒットを狙うのは難しい。実際、アリのように、リング上では驚くほど多才で知的だ。

アリが持っていたもうひとつの無形要素は闘志だったが、ウシクはキャリアの中でそれを余すところなく見せている。3団体統一王座を巡る戦いを例に出せば、ジョシュアがウシクに大きなポイントを奪っても、ウシクはすぐにそれ以上の得点を取り返す。このことが、対ジョシュアとの24ラウンドを戦い抜いたウシクに大きな心理的優位をもたらした。

アリとウシクの大きな違いは、アリがオーソドックスのファイターだったのに対し、ウシクはサウスポーだということだ。ほとんどの場合、これはアドバンテージだ。

しかし、優れたスイッチヒッターであるフューリーに対してはそうではないかもしれない。


⬛ウシクは大柄なファイターに勝ったことがあるのか?

ウシクはこれまで対戦したすべてのヘビー級選手に対して小さく軽かった。そして、彼はそのすべてに勝っている。

  • チャズ・ウィザースプーン「242ポンド」(109.8kg) vs ウシク「215ポンド」(97.5kg)
  • デレック・チゾラ「255.5ポンド」(115.9kg) vs ウシク「217.4ポンド」(98.6kg)
  • アンソニー・ジョシュア(第1戦)「240ポンド」(108.9kg) vs ウシク「221¼ポンド」(100.251kg)
  • アンソニー・ジョシュア(第2戦)「244½ポンド」(110.691kg) vs ウシク「221½ポンド」(100.258kg)
  • ダニエル・デュボア「233½ポンド」(105.701kg) vs ウシク「221¼ポンド」(100.251kg)

⬛フューリーは小柄な選手が苦手?

以前、フューリーが元クルーザー級世界王者と対戦した時は仰向けにされた事実がある。

元IBF世界クルーザー王者のスティーブ・カニンガムが、2013年にニューヨークで対戦した際、2ラウンドに右の強打でフューリーを打ちのめしたのだ。

しかし、これまでのキャリアでフューリーがそうしてきたように、あっさりと立ち上がり、試合を制している。

関連記事:【独自取材】フューリーvsウシク勝敗予想:関係者、専門家、元・現役ボクサーの見解は?


※この記事はスポーティングニュース国際版の記事を翻訳し、日本向けに一部編集を加えたものとなります。翻訳・編集: 神宮泰暁(スポーティングニュース日本版)