3月22日、井上尚弥(大橋ジム)が練習中に負傷し、5月7日に予定されていた横浜アリーナでのWBC・WBO世界スーパーバンタム級王者スティーブン・フルトン(米国)との統一戦が延期になったと、米スポーツ専門メディア『ESPN』が報じ、所属ジムの大橋秀行会長が会見を行った。
3月29日には延期後の日程と会場が正式に発表された。井上のケガの状況、延期された試合がいつになるのかを本誌格闘技エキスパートのダニエル・ヤノフスキーが伝える。
5月6日のシンコ・デ・マヨ・ウィーク(メキシコの祝日)にカネロ・アルバレスが復帰し、日本では5月7日にWBC・WBO世界スーパーバンタム級王者スティーブン・フルトン vs. 井上尚弥が行われるなど、5月初旬はボクシングファンにとって忙しい週になるはずだった。
だが、フルトン vs. 井上戦は、残念なことにボクシングカレンダーから一旦外されることになった。
3月22日、米スポーツ専門メディア『ESPN』は、井上がフルトン戦に向けた練習中に負傷したことを最初に報じた。
井上は、12月に英国のポール・バトラーを下し、バンタム級の世界主要4団体のすべてのベルトを手にし、アジア人初のアンディスピューテッド王者になった。新たな4団体統一を目指す『ザ・モンスター』は階級を上げ、スーパーバンタム級2団体王者フルトンに挑むはずだった。
今回の井上の負傷について、フルトンは日本での対戦を含め、延期にかかわるすべての条件を受け入れたという。
井上vs.フルトンの試合がいつになるのかも含め、最新情報は以下となる。
井上尚弥のケガの状況は?
ESPNによると、ケガの状況は深刻なものではないと報道されていたが、大橋秀行会長は22日の会見で、ここまでの経緯を説明した。
3月9日のスパーリング中に痛めた可能性が高く、精密検査の結果、骨には異常はないものの、腱に炎症がみられた。同16日のスパーリングでも痛みが引かないため、井上本人、父・真吾トレーナー、大橋会長で話し合いを行った。強行出場を希望する井上本人だが、5月7日までに回復する見込みが低いため、万全の状態で挑戦させたいとする大橋会長が延期を決断。
16日中にフルトン側に延期を打診、21日にフルトン側から受諾の返事、今回の報道や発表に至った。
どちらの拳を負傷したのかについては明かしていないが、過去に試合や練習中に右拳を痛めることが多く、2階級目制覇となった2014年のオマール・ナルバエス戦で右の手の甲と手首をつなぐ関節を脱臼し、2015年に手術を行っている。準備段階での怪我による試合延期は初めてとなった。
29日の報道によれば、すでに拳の負傷箇所を使わない練習を一部再開しており、コンディション維持に努めているという。
スポーティングニュースでは、新たな情報が発表され次第お伝えする予定だ。
フルトンと井上尚弥戦はいつ?→7月25日・有明アリーナに決定
3月29日の大橋ジムの発表により、フルトン vs. 井上の新たな日程は7月25日(火)、会場は有明アリーナに変更となった。22日の会見で、延期となった試合の7月首都圏開催を目指し、改めて日程・会場の交渉を行うとも明かしていたが、会場は横浜アリーナから有明アリーナに変わった。
有明アリーナは、井上にとって2022年12月13日にWBO王者ポール・バトラーを下してアジア人初のバンタム級4団体王座統一をはたした縁起の良い会場だ。
フルトンが最後に戦ったのは昨年6月、井上が直近で夏場に戦ったのは2022年6月のノニト・ドネア戦があがる。今年のファイトカレンダー(ボクシング業界の放映配信スケジュール)的にも7月には余裕があった。
フルトンは、井上尚弥でなければ、誰と戦う?
3月22日の時点でフルトンは井上との対戦に集中することを示唆していた。自身のTwitterに「日程はわかった。落ち着け、まだ続くから」と投稿した。
前述通り、29日の発表によって7月25日への延期が正式に決定。長い準備期間を取って決戦に向かうことになった。
もし井上を待たないと決めたなら、フルトンはブランドン・フィゲロア(米国)との再戦に進む可能性があった。
フルトンは2021年にフィゲロアを下してWBC・WBO世界スーパーバンタム級王座を獲得している。フィゲロアはその後フェザー級に転向し、3月上旬にマーク・マグサヨ(フィリピン)を倒してWBC世界フェザー級暫定王者になった。この試合は一時はフルトンとの再戦になる想定で交渉が進んでいた。
また、WBA・IBF世界スーパーバンタム級王者のムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)も当然標的圏内だ。アフマダリエフは、4月8日にIBF指名挑戦者マーロン・タパレス(フィリピン)と対戦する。この試合と井上の状況次第では、フルトン vs. アフマダリエフ(あるいはタパレス)で秋以降に4団体統一戦という可能性も残る。
※本記事は英語記事を翻訳し、日本向けの情報を追加した編集記事となる。