9.3 井上尚弥vsドヘニーはなぜ決まった?|計量はともに一発パス|対戦実現の経緯・決戦までのタイムライン

2024-09-02
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PHILIP FONG/AFP via Getty Images

9月3日(火)、東京・有明アリーナにて、井上尚弥がTJ・ドヘニーを相手にスーパーバンタム級4団体統一王座の2度目の防衛戦を行う。当初、5月のルイス・ネリ戦を終えた時点では、サム・グッドマンと対戦予定だったが、その計画は頓挫し、伏兵のドヘニーが内定。それにWBA指名挑戦者ムロジョン・アフマダリエフ陣営が難癖をつける事態に発展した。

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ひとつ試合を終える度に話題を呼ぶ『モンスター』の次戦問題だが、今回の井上vsドヘニーが決まるまでの経緯、決戦までの両者の動向をタイムラインで振り返る。

井上尚弥vsTJ・ドヘニー戦決定と決戦までの経緯

  • 2024年5月6日:井上尚弥が東京ドームで行われたルイス・ネリとのスーパーバンタム級4団体統一王座戦に勝ち初防衛に成功。試合直後、IBF指名挑戦者サム・グッドマンがリングにあがり、井上自身が「9月頃対戦できるように交渉している」と報告。当のグッドマンも「絶対やりましょう」と返し、対戦を約束するように握手を交わした。
  • 2024年5月8日:大橋秀行会長が国内メディアの取材に答え、9月は関東圏の開催でグッドマンとの試合を交渉中、12月についてはサウジアラビア(リヤドシーズン)からのオファーもあり、年末の試合は海外でのビッグマッチとなる可能性があることを示唆。
     
  • 2024年5月23日:大橋会長が次戦に向けた交渉について、サム・グッドマン側は7月ではなく12月に試合を行いたい意向であることを明かす。交渉が不調となった場合の代役として、5月の東京ドームにネリの代役候補として来日・出場したTJ(テレンス・ジョン)・ドヘニーの可能性にも触れ、「これだけやってくれた分(リザーブに応じてくれた義理を返したい)という気持ちはある」と心情を語った。
     
  • 2024年5月29日:井上が次戦に向けて本格的に練習を再開。大橋会長が取材に応じ、対戦が確実視されていたグッドマン戦について「誤解があった」と苦笑しながらも「交渉の余地は残している」とコメント。井上は「相手が誰でも強さを見せるのは変わりない」と語った。
     
  • 2024年5月30日:グッドマンが『The Ring』(リング誌)の取材に答え、7月10日に母国オーストラリアで、WBC世界スーパーバンタム級8位チャノイ・ウォラワットとの試合を行うことを公表。井上戦ではなくノンタイトル戦を行うことについて、(井上戦で得られるであろう)報酬も大事だが、井上を倒すのに最高の状態にするため(の調整試合)だと語った。
  • 2024年6月14日:WBA(世界ボクシング協会)が井上尚弥に対し、WBAスーパーバンタム級1位ムロジョン・アフマダリエフとの指名試合を9月25日までに行うように指示。通常90日以内とする指名王座戦期限だが、スーパー王者は指名試合は原則生じず、あっても18か月に延長されるため、不可解な指令だった。大橋会長は「次の試合はほぼ内定しているので、ここで言われても困る」とコメント。
     
  • 2024年6月15日:井上の海外プロモートを担う米興行大手トップランク社のボブ・アラム会長は、英専門メディア『Boxing Scene』の取材にドヘニー戦内定を認める一方、「アフマダリエフ? 誰だそいつは。無名の男と井上がやることはない」と断言。井上が4本のベルト維持にこだわる必然性もないとし、英国ウェンブリー・スタジアムでの4団体統一戦プランにノーを突き付けた。
     
  • 2024年6月21日:アフマダリエフのプロモーターである英興行大手マッチルーム社CEOエディ・ハーン氏が、ドヘニーの地元アイルランドの専門誌『Irish Boxing』の取材に「井上vsドヘニーはおぞましいまでのミスマッチ。井上と釣り合う相手はアフマダリエフだけなのに、ひどいインチキだ」と激昂。ライバルであるトップランク社や井上陣営への「嫌がらせ」ともとれる、WBAへの圧力を思わせる口ぶりだった。
     
  • 2024年6月28日:井上が取材に応じ、WBAからアフマダリエフとの指名試合の期限を通達されていることについて、「ベルトにこだわりはない。剥奪されるならそれでいい」とコメント。この2日前にIBF世界ヘビー級王座を返上したオレクサンドル・ウシク同様、4団体統一王座の維持よりも自身の試合スケジュールを優先する意向を示した。
  • 2024年7月10日:グッドマンがウォラワットと対戦し、判定勝ち。試合前にはプロモーターが「9月の試合にも間に合う」とコメントし、試合後にも引き続き井上を追いかけると語るなど、井上戦実現へむけて再三のアピールを続けていたが、この試合中に左拳を負傷。低調な試合内容も含めて12月対決プランに暗雲か。
     
  • 2024年7月13日:アフマダリエフはリング誌の取材に「井上陣営は私との戦いから逃げている」と再度クレーム。マネージャーのワディム・コルニーロフ氏も「12月には彼らは別の方法を取るか、その時点で階級を変えてMJとの試合を避けようとするでしょうね」と挑発するような皮肉を並べたが、裏腹にサウジマネーによるメガマッチ実現が遠のく焦りを露わにした。
     
  • 2024年7月16日:大橋ジムが記者会見を行い、井上vsTJ・ドヘニー戦を正式発表。アフマダリエフとのWBA指名試合の期限はクリアできなくなったものの、タイトルは保持できることとなり、4団体統一王座の2度目の防衛戦として開催する。

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  • 2024年7月17日:井上vsドヘニー戦の発表を受け、アフマダリエフ陣営から「失望した」「ひどいミスマッチだ」と不満のコメント。
     
  • 2024年7月29日:7月20日に3日間の集中トレーニングキャンプ完了を報告していた井上は、ドヘニー戦に向け、メキシコから招聘した2選手とスパーリングを開始。仮想ドヘニーというよりは自身のボクシングを確認するような相手選びで、ネリ戦から4か月の試合間隔にも「高いモチベーションのまま継続できている」とした。
  • 2024年8月11日:大橋会長の公式ブログに、井上と武居由樹の対面シャドーボクシングなど集中トレーニングの様子が公開される。
     
  • 2024年8月14日:ドヘニー戦まで3週間を前に、井上は自身の身体の仕上がり具合をXに報告。対戦相手問題を吹き飛ばすような勝利への意気込みを示した。
  • 2024年8月21日:井上は決戦まで2週間を切った中で練習を公開し、「判定は許されない」と、これまでの試合以上にKO勝利を強く意識したコメント。メディアに披露した練習メニューも普段より多く、その入れ込み具合を印象付けた。
     
  • 2024年8月24日:ドヘニーが来日後初の公開練習で会見を開き、井上対策について「対策を崩されて何もできなくなったらどうしようもない」として練習してきたことを信じて戦うとコメント。視察した井上の父・真吾トレーナーは、「フィジカルは強い。くっついたときは気をつけないといけない」と評した。
     
  • 2024年8月26日:ドヘニーのプロモーター、ショーン・ギボンズ氏が『Boxing Scene』の取材に、井上の強さを認めつつも、「彼(ドヘニー)には失うものは何もない。彼はリラックスして試合に臨むはずだ」とその心情を代弁。「TJはフィジカルが非常に強い男。勢いが衰えることはないと思う」と語り、肉弾戦で勝負に出ることを示唆した。
     
  • 2024年8月26日:井上がドヘニー戦に向けたスパーリングを打ち上げ。所属日本人選手とメキシコから招聘した4選手を相手に計101ラウンド消化したと明かした。大橋会長も「最高の調子に仕上がりました」と太鼓判を押した。
     
  • 2024年8月31日:試合前の最終会見が横浜市内で行われ、井上はドヘニーのファイトスタイルが今も変化し続けていることに怖さはあるとコメント。ネリ戦で喫した初ダウンについて触れ、「あの1ラウンドがあったからこそ自分はまた強くなれた。ボクシングに対する意識も変わった」と話し、意識改革があったことを明かした。前日計量後のリカバリー(体重の戻し)については「僕以上にリカバリーをしてくる。そんな相手だからこそKOしたい」と話した。
    対するドヘニーは世紀のアップセットを期して「歴史を作るために来た」と語った。
     
  • 2024年9月1日:国内メディアの報道により、当日計量を行わない統一戦では通例を採用。当日の体重制限はないため、ドヘニーの過去の12kgオーバー=6階級越えリカバリーも今回有効となる。井上は5〜6kg戻す見込みだが、それでも実質3〜4階級上の相手と戦うことになる可能性がでてきた。
     
  • 2024年9月2日:横浜市内のホテルで前日公開計量が行われ、スーパーバンタム級リミット(55.34kg)に対し、井上が55.3kg、ドヘニーが55.1kgでそれぞれ一発パス。井上はドヘニーの絞りきった身体を見て「だいぶ水を抜いたなと。10kgも戻るのかな」と話しつつ、体重があれば勝てる競技ではないとの認識を示し、階級制の中で計算された適正範囲で勝つことを証明すると暗に示唆した。

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