12月26日(火)に行われるボクシング史上初のスーパーバンタム級の4団体王座統一戦。井上尚弥に対して圧倒的不利とされているオッズを覆し、フィリピン人で初となるアンディスピューテッド・チャンピオンの座を目指すのが、マーロン・タパレスだ。
実は日本ボクシング界と馴染みのあるタパレスのキャリアを、本誌格闘技部門エキスパートのダニエル・ヤノフスキーが振り返る。
敵地に乗り込み、下馬評を覆し続けるフィリピン人ファイター
今年最後のボクシング・マッチのひとつが、スーパーバンタム級のアンディスピューテッド・チャンピオン(4団体統一王者)を決める一戦だ。12月26日(火)、東京・有明アリーナで行われるWBA/IBF王者のマーロン・タパレスとWBC/WBO王者の井上尚弥の4団体統一戦ならびにアンダーカードは、日本ではNTTドコモの動画配信プラットフォーム『Lemino』(レミノ)で独占無料生配信される。
タパレスが日本で試合をするのは、今回が5試合目となる。日本での戦績に限って言えば、4勝0敗。日本での世界戦は2017年4月、WBO世界バンタム級王者として大森将平を挑戦者に迎えたが、その時は11回TKO勝利を収めている(ただし体重超過により王座剥奪)。
母国の英雄マニー・パッキャオのMPプロモーションに所属するフィリピンのサウスポーは、同国人初の4団体統一を達成できるだろうか。
タパレスがスーパーバンタム級ボクサーとしての実力を証明するためには、すでにバンタム級でアンディスピューテッド・チャンピオンに輝いている井上を倒さなくてはならない。『ザ・モンスター』は、ボクシング史上4人目、男子ボクサーとしては2人目となる2階級での4団体統一王者の座を狙っている。下馬評で格上とされていた前WBA/IBF王者ムロジョン・アフマダリエフに「悪夢」を見せた通り、『ナイトメア』の異名を取るタパレスは眼前に迫ったチャレンジに向けて準備万端だ。
「敵地に乗り込むたび、戦前の評価は自分の不利になる。だがオッズなんかまるで気にならない。自分のことも、自分がやってきたトレーニング、様々な準備も、自分が一番よく分かっているから」
タパレスはフィリピン大手紙『Inquirer』の取材でそう答えている。
「それよりも、自分を『眠らせ』に来る相手のことを(井上は)心配した方がいいよ」
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ここでは、不利なオッズを物ともせず、スーパーバンタム級のアンディスピューテッド・チャンピオンの座を虎視淡々と狙うタパレスのキャリアを振り返る。
マーロン・タパレスとは何者か?
フィリピンで生まれたタパレスは、2008年にプロデビュー。現在31歳でこれまでの戦績は37勝3敗(19KO)だ。KO率は51.35%で、キャリアを重ねてからKOが増えている。
2009年にブリックス・レイに敗れたあと、タパレスは13連勝をマークした。その後、2013年にデビッド・サンチェスに敗れたが、さらに12連勝を記録し、その間に行われた2016年のプンルアン・ソー・シンユーとのタイトルマッチでWBO世界バンタム級王座を獲得した。
2019年、IBF世界スーパーバンタム級の暫定王座を賭けた一戦で岩佐亮佑に敗れてからは現在まで4連勝中。直近の試合では、今年4月にムロジョン・アフマダリエフをスプリット・ディシジョンで下し、WBAスーパー/IBF世界スーパーバンタム級統一王者に輝いた。とはいえ、激闘の結果はタパレスに軍配が上がったものの、アフマダリエフの大差での勝利を示すスコアカードがあったのも事実だ(110-118, 115-113, 115-113)。
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アフマダリエフが、12月16日にWBA同級2位の実力者ケビン・ゴンサレス(タパレスはアフマダリエフへの挑戦権を得る時点でIBF同級9位だった)を8回TKOで撃破して井上 vs. タパレスの勝者への挑戦権を獲得したことを考えると、4月の試合ではアフマダリエフに油断があったことは否めないだろう。
しかし前述通り、タパレスはここぞの試合で下馬評を覆し続けてきた。もしタパレスが井上を倒せば、歴史に新たな1ページが加えられることになる。
「自分がボクシングを辞める時には、フィリピン人で最初のアンディスピューテッド・チャンピオンだったと言われたい」とタパレスはフィリピン最大手メディア『ABS-CBN』の取材で語っている。
マーロン・タパレスの戦績、プロフィール
- 本名:マーロン・タナン・タパレス(Marlon Tapales)
- ニックネーム:マランディングの悪夢(Maranding Nightmare)
- 生年月日:1992年3月23日(31歳)
- 出身地:フィリピン共和国・(北ミンダナオ地方)北ラナオ州トゥボッド
- 身長:163cm
- リーチ:165cm
- 主要階級:スーパーバンタム級
- スタイル:サウスポー
- プロ戦績:40戦37勝(19KO)3敗
- 主要タイトル歴:WBO世界バンタム級王座、WBAスーパー/IBF世界スーパーバンタム級王座
※本記事は国際版記事(著者: Daniel Yanofsky)を翻訳し、日本向け情報を追記・編集した記事となる。翻訳・編集:石山修二、編集:スポーティングニュース日本語版編集部 神宮泰暁