井岡一翔はフランコ戦後、中谷潤人との対戦を選ぶべきか元リング誌記者が考察

2023-06-23
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Ioka - The Asahi Shimbun via Getty Images/ Nakatani - Mikey WIlliams/ Top Rank

【ライブ速報】6.24 井岡一翔vsフランコ:難題噴出も試合は決行|試合経過・結果・ハイライト|ボクシング2023

6月24日に進退をかけた再戦に挑む井岡一翔は、大晦日の試合後の尿検査で違反にはあたらない微量の大麻成分が発見されたというJBCの不可解な発表により、決戦目前に意図しない注目を浴びることになってしまったが、土曜日のWBA世界スーパーフライ級王者ジョシュア・フランコとの試合は問題なく実施される。

もし、この試合に勝った場合はまた別の注目を浴びることになるだろう。現WBO同級王者の中谷潤人との日本人対決だ。幻となったこのカードを今度こそ実現させるべきか、名門誌『The Ring』出身で本誌格闘技部門副編集長のトム・グレイが現在の両者の状況をもとに考察する。

※編集部注(6/23 15:00):前日計量で王者ジョシュア・フランコが3.1kg超過し、再計量も2.9kg超過で終えた。井岡は計量を-160gでパスしていた。このため、試合は行われるが、フランコは王座剥奪で勝っても空位、井岡が勝てば新王者になるという結論になった。


「年老いたライオンと若きライオンの戦い」

「年老いたライオンと若きライオンの戦い」。ボクシングそのものと同じくらいに言い古された言葉ではあるが、もし日本のベテラン・井岡一翔と若き同国人ボクサー・中谷潤人の対戦が実現すれば、それ以上に的確な表現はほかにないだろう。この両者はともにスーパーフライ級を主戦場にしている。同じ階級である限り、タイミング次第で激突することは「まだ」あり得る。

6月24日、井岡はWBA王者のジョシュア・フランコに挑戦する。物議を醸した昨年大晦日のドロー判定からの再戦である。一方の中谷は、5月20日にアンドリュー・モロニーを鮮烈なパンチで完全に沈め、その衝撃的なノックアウト勝利によって空位となっていたWBO王座を獲得した。

もし井岡がフランコに勝てば、日本人同士の対決となる中谷との王座統一戦が、「再び」大きな期待を呼ぶことになるだろう。

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井岡と中谷の対戦は「本来」なら今年すでに実現していなくてはならなかった。中谷は、井岡が保持していたWBOベルトの挑戦者に指名されていたからだ。しかし、井岡は指名試合を行うよりフランコと再戦することを選び、王座を返上した。そのため、中谷とモロニーが前述の5月20日、空位となった王座をかけて戦ったのだ。その結果、中谷は自身2階級目となるベルトを手に入れた。

井岡一翔とは何者か

現在34歳の井岡は、日本人として初の男子世界4階級制覇王者(ミニマム級、ライトフライ級、フライ級、そしてスーパーフライ級)である。

今は東京に拠点を置きながらも、試合の際には名伯楽イスマエル・サラス氏の指導を受けるベテランは、『The Ring』誌(リングマガジン)が選出するパウンド・フォー・パウンドのトップ10に入ったこともあり、そのテクニックと業績は世界的に認められている。井岡のキャリアは終盤にさしかかったと思われるが、現在もフランコだけではなくスーパーフライ級の全ボクサーにとって強敵であることに変わりはない。

現時点のプロ戦績は29勝2敗1分け(15KO勝ち)である。

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中谷潤人とは何者か

25歳の中谷はいまだ成長の途上にあるが、すでにこの世界のトップファイターのひとりとして認められている。

プロデビュー後21戦目にジーメル・マグラモを8回ノックアウトでくだし、空位だったWBO世界フライ級王座を獲得した。同タイトルを2度防衛したあと、ベルトを返上してスーパーフライ級に階級を上げた。

かつて井岡と対戦したこともあるフランシスコ・ロドリゲス・ジュニアとの試合は判定にまでもつれたが、次戦のモロニ―には破壊的なパワーを見せつけた。

現在のプロ戦績は25勝0敗(19KO勝ち)である。

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現実的な判断は?:井岡 vs. 中谷の実現性

一般的には、若いライオンは活力に溢れ、機敏であり、そしてパワーに満ちている。老いたライオンに勝てる見込みはないというのがよく知られる比喩の結末だ。そして、残念ながらこの戦いについても同じことが言えるだろう。もし井岡が6月24日、フランコとの再戦に勝てたとしても、である。

中谷のパンチは強力無比である。すでに2階級制覇を成し遂げたが、身長(172cm)とリーチ(170cm)からすると、さらに階級を上げることも十分に考えられる。井岡は経験では大いに優るが、それはいわば諸刃の剣である。プロデビュー後32戦のうち、4階級にまたがる世界タイトル戦が23試合である。その業績は驚異的であるが、14年間のプロボクサー生活でダメージが蓄積しているであろうことを見逃しようがない。

最近のいくつかの試合で、井岡は衰えを見せている。2020年12月に同国人ボクサーの田中恒成から8回TKO勝利を収めて以来、続く4試合はすべて判定決着だった。フランシスコ・ロドリゲス・ジュニアには苦戦し、経験の浅い福永亮次とも僅差だった。因縁の相手であったドニー・ニエテスとの再戦では辛うじて勝利した。この3戦はすべて3−0のスコアだったが、陰りを払拭できなかった。そしてフランコとの試合は幸運なドロー判定を拾った。

一方、中谷はまさに上り調子であり、その天井は未だに見えない。何しろ、それまで28戦無敗だったマロニーを完全にノックアウトしたのだ。3度のダウンを耐え抜いたマロニーだったが、最終ラウンドで力尽きた。

ボクシングでは「タイミング」が大きな意味を持つ。そのことはリングの中でも外でも変わらない。井岡 vs. 中谷はもし実現すればメガファイトになるだろう。しかし、偉大なボクサーのキャリアが「残酷な終焉」を迎えることになりかねない。

井岡の身を案ずるならば、中谷潤人との対戦は避けるべきだ。

原文: Will Kazuto Ioka face Junto Nakatani following Joshua Franco boxing fight?
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本版編集部 神宮