ジャーメルとジャーモール、双子の世界王者チャーロ兄弟はどちらが優れたボクサーか識者が解説

2023-09-29
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Sean Michael Ham/TGB Promotions

日本時間10月1日にスーパーウェルター級4団体統一王者ジャーメル・チャーロは、スーパーミドル級4団体統一王者カネロ・アルバレスに挑む。ジャーメルにはジャーモールという双子の兄がおり、その兄もプロボクサーであり、現ミドル級世界王者でもある。

双子の世界王者チャーロ兄弟のどちらが優れているのか、『The Ring』や『Boxing Scene』などでの執筆経験や識者として業界への造詣が深いアンドレアス・ヘイルが分析する。

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カネロ・アルバレスが、9月30日(日本時間10月1日)にラスベガスでスーパーウェルター級4団体統一王者ジャーメル・チャーロと対戦すると発表したとき、多くの人々が驚いた。カネロの相手には階級が近い、WBC世界ミドル級王者のジャーモール・チャーロの方が可能性が高いと思われていたからだ。

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スーパーウェルター級のジャーメルは、カネロが持つスーパーミドル級4団体統一王座に挑戦するために2階級を上げることなる。そして、世界主要4団体時代になってからは(男子初の)テレンス・クロフォードと(男女通して初の)クラレッサ・シールズに続く3人目となる、2階級での4団体統一王者を目指す。

元々は兄のWBC世界ミドル級王者のジャーモール・チャーロがカネロと対戦することになると報道されていた。しかし、ジャーモールの私生活上の問題から、双子の弟であるジャーメルの名前が代わりに浮上した。ジャーメルの実力を疑問視し、カネロの対戦相手にはジャーモールの方が相応しいとする意見もある。

その見方は正しいだろうか。以下に検証していこう。

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チャーロ兄弟はどちらが優れている? 戦績・対戦相手・試合間隔・KO率・階級から分析

ジャーモール・チャーロの戦績は32勝0敗、22KOと完璧である。一方のジャーメルは35勝1敗1分け、19KOである。

数字を見る限りは、兄のジャーモールの方が優れているように思えるかもしれない。ジャーモールは無敗であるし、弟より体格も大きく、KO率(68.8%)も高い。しかし、この双子を子細に比較していくと、現在ではジャーメルの方が業績に優れ、カネロと対戦するチャンスにより相応しいことが分かってくる。

ジャーモールは無敗ではあるが、ジャーメルの方が強敵との対戦に勝利してきている。その名を挙げると、トニー・ハリソン、ブライアン・カスターニョ、ジェイソン・ロサリオ、エリクソン・ルービン、バネス・マーティロスヤン、そしてオースティン・トラウトらである。その過程で、ジャーメルはスーパーウェルター級4団体統一王者になった。

一方のジャーモールは、目立った対戦相手と言えば、セルゲイ・デレフヤンチェンコとそれまで無敗だったジュリアン・ウィリアムズくらいのものだ。ジャーモールはたしかに弟より前にオースティン・トラウトにも勝利している。しかし、全体的にミドル級における対戦相手はあまりぱっとせず、最近はとくにその色合いが強い。

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ジャーモールがしばらくリングから遠ざかっていることが、2人に差をつける最大の要因である。ジャーメルも2022年5月以来のブランクがあるが、兄の方はさらに長く、2021年6月にファン・マシアス・モンティエルからやや疑問が残る3-0判定勝ちを収めて以来、試合をしていないのだ。直近6年の試合数はわずかに7試合であり、一方のジャーメルは2017年以来9試合を戦っている。

ジャーメルの直近4試合の対戦相手(WBO王者カスターニョとの2連戦、WBA&IBF王者ロサリオ、WBC王者ハリソン)は、ジャーモールの対戦相手(モンティエル、デレフヤンチェンコ、デニス・ホーガン、ブランドン・アダムス、いずれも4団体の世界王者歴なし)より格上である。この世界では過去より最近の業績が重視される。ジャーメルが兄より高い評価を受けるのはそのためだ。

ジャーモールの方が高いKO率を持つことについても留意するべき点がある。ジャーメルはここ8年ほどでこの分野でも急成長していることだ。2015年以来、ジャーメルが挙げた9勝のうち8つはKOによるものである。ジャーメルのキャリアで2つの汚点は、2018年のハリソンに喫した判定負けと2021年にカスターニョと引き分けた試合だけだが、ジャーメルはそのどちらにも再戦でKO勝ちを収めている。一方のジャーモールは直近9勝のうち、KO勝ちはわずかに4つだ。

要するに、ジャーメルは今まさに年齢に相応しい全盛期を迎えているのだ。

ジャーモールはこれまでに32試合、合計171ラウンドを戦った。ジャーメルは37試合で合計256ラウンドだ。つまり経験ではジャーメルが優り、加えて4団体統一王者のステータスからしても、双子の兄にはっきりとした差をつけている。

最大の懸念は体重だ。ジャーモールは2017年からずっとミドル級(160ポンド=約72.6kg)で戦ってきた。ジャーメルはデビュー以来ずっとスーパーウェルター級(154ポンド=約69.9kg)で戦ってきた。1階級上げることはさほどの難事ではないが、14ポンド(訳者注:カネロ戦のスーパーミドル級は168ポンド=76.2kg)となると話は違う。

しかし、身長180cmのジャーメルはスーパーウェルター級としては大き過ぎる体格なのだ。これまでにも過酷な減量を行ってきたことが伝えられている。もし兄がミドル級にいなければ、ジャーメルはとっくに階級を上げていただろう。

カネロの身長は173cmしかなく、チャーロ兄弟のどちらと比べてもかなり低い。この試合に関しては、ジャーメルがスーパーミドル級に上げることは、減量の負担がないことから、あながち不利であるとも言えないのだ。

何よりも、ここ数年に限れば、ジャーメルの方がジャーモールよりはるかに技術を向上させるための経験を数多く積んできた。残念ながら、ジャーモールは私生活上の問題(強盗容疑、甥への暴行容疑や自身のメンタルヘルス問題)によってファイターとして成長する機会を失っている。それらの問題が解決し、ジャーモールがキャリアを続けられることを願うばかりだ。

以上のことを踏まえ、現時点においては、ジャーメルの方が優れたボクサーであると結論づける。

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原文:Who is the better boxer between twin brothers Jermall and Jermell Charlo?
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本語版編集部 神宮泰暁


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