現在のボクシング界のスーパースターのひとり、ジャーボンテイ『タンク』デービスにとって、今回のWBA世界ライト級タイトル防衛戦はひとつの大きなテストとなりそうだ。
日本時間の6月16日(日)米ネバダ州ラスベガスのMGMグランドガーデンアリーナで行われるこの一戦、デービスに対するのはサウスポーのフランク『ザ・ゴースト』マーティン。この試合と、デビッド・ベナビデス vs オレクサンダー・グボジークのWBC世界ライトヘビー級暫定王座決定戦の模様は、衛星放送『WOWOW』で生中継、および『WOWOWオンデマンド』で生配信される(厳密には4大世界戦が組まれているが、デービスvsマーティン、ベナビデスvsグボジーク以外は後日録画放送・配信になる可能性がある)。
ここでは、このデービスvsマーティン戦ならびにベナビデスvsグボジーク戦のみどころ、勝敗予想、参考オッズを紹介する。
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🥊デービスvsマーティン:見どころ
デービス(29勝0敗、29KO)は、パウンド・フォー・パウンドでも高い評価を受ける、現在のボクシング界で屈指のスター性を持つ選手だ。昨年4月にライアン・ガルシア(アメリカ)を相手に7回ノックアウト劇を披露し、ボルティモア出身の29歳の評価は高まるばかりだ。
対するマーティンは、18勝0敗、12KOの戦績を築いたが、これがトップクラスでの最初のファイトと言っていいだろう。ただ、デトロイト出身の優れたスキルを持つ冷静な29歳のファイターはこの試合に向けて自信たっぷりだ。全盛期を迎えているマーティンは昨年7月、ドイツ人ファイターのアルテム・ハルチュニャン戦で12ラウンドをフルに戦い切った末、ユナニマス・デシジョンで勝利を収め、そのハートの強さを証明した。
「今回の試合に勝つことは自分にとって全てを意味する」と、マーティンは『スポーティングニュース』の取材で語っている。
「自分にとっても、家族にとっても、人生が変わる瞬間だ。『チャンスが回ってきた』だなんて思ってない。すべての物事には意味があるんだ。その瞬間を楽しむつもりはない。自分はそんなボクサーではない。このチャンスをモノにする。やり遂げる用意はできている。この機会を得られてもちろん嬉しいが、勝つ準備はしっかりできているよ」
戦前の予想ではデービスの圧倒的な有利を伝えられていても、マーティンの自信が揺るぐ気配はない。
🥊デービスvsマーティン:勝敗予想
マーティンは、『タンク』デービスが戦ってきた挑戦者の中でも屈指の実力者と言える。マーティンにはクイックネス、スキルがあり、ディフェンスにも優れている。非常にタフな試合となることは間違いない。
もしマーティンがデービスを倒したとしても、私(トム・グレイ)は騙されたとは思わないだろう。デービスは強力なパンチャーで、そのスキルは過小評価されていると思うが、それでもこの挑戦者はデービスにとって真のチャレンジをもたらすだけの実力の持ち主だ。
ひとつ気にかかるのは、ラスベガスのビジネスモデルだ。この試合、デービスが負けることは想定されておらず、その事実がすべてのポイントに影響してくるはずだ。そう言うと皮肉に聞こえるかもしれない。だが、こうしたシチュエーションにおいて、挑戦者がフェアなスコアを手に入れるためにはそれ相応の試合を見せることが必要になってくる。
その上で予想するなら、『タンク』がスプリットデジションで判定勝ちを収めるだろう。調子が良ければもちろんそのまま勝利するだろうが、仮に劣勢に追いやられ、決定打に欠くようなことがあれば、ジャッジに助けてもらう必要もあるかもしれない。
スポーティングニュース(トム・グレイ)の予想:スプリットデシジョンでデービスの判定勝利
💰デービスvsマーティン戦の参考オッズ
米大手ブックメーカー「BetMGM」によれば、デービスが「-700」、マーティンは「+450」となっており、デービスの圧倒的有利とみられている。
このオッズはアメリカンオッズ式となり、「-700」は100ドルの配当を手にするのに700ドルをかける必要があり、当たった場合は700+100=800ドルの払い戻し。「+450」は100ドルを賭けて当たれば450ドルの配当となり、100+450=550ドルの払い戻しとなる。
また、米大手ブックメーカー「FanDuel」によるこの試合のプロップベット(成績・試合内容等に基づく賭け)は以下の通りとなっている。
- デービスのKO/TKO、テクニカルデシジョンまたは失格による勝利: -175
- デービスの判定勝利:+300
- マーティンのKO/TKO、テクニカルデシジョンまたは失格による勝利:+1400
- マーティンの判定勝利:+750
- ドロー:+2400
🥊ベナビデスvsグボジーク:見どころ
すでにスーパーミドル級でWBCの2本のベルト(正規と暫定)を巻いた実績を持つベナビデス(28勝0敗、24KO)は、長い間、同クラスのアンディスピューテッド・チャンピオン、カネロ・アルバレス(メキシコ)への挑戦の機会を狙ってきたが、これまで実現には至らなかった。
「(カネロ戦を)あきらめてはいないよ」と、ベナビデスは『スポーティングニュース』の独占取材でそう答えている。
「心の中ではいつか実現すると思っている。このままにしてしまうにはあまりにもったいないビッグマッチだ。どちらにも、そしてボクシング界にとっても大きなメリットのある試合だからね」
そのメガマッチ実現を待つ間、ベナビデスは2階級制覇のチャレンジに乗り出した。身長188cmながら10代の頃からスーパーミドル級で戦ってきたベナビデスにとって、27歳になった今、ライトヘビー級にあげることは大きなプラスになると考えられている。
ただ、ライトヘビー級初戦の相手として、グボジーク(20勝1敗、16KO)を選んだのは思い切った決断と言わざるを得ない。グボジークは37歳のウクライナ出身、2012年のロンドン五輪で銅メダルを獲得し、2018年にはアドニス・ステベンソン(カナダ)を破り、WBC世界ライトヘビー級王座を獲得している実績の持ち主だ。ちなみに、ステベンソンはこの試合で脳にダメージを受け、引退を余儀なくされている。
2019年にそのベルトを失ったあと、グボジークには3年半近くのブランクがある。ただ、2023年に復帰後は2連勝を収めた。
「自分の階級のほかの選手たちをみても、そんなに頻繁に試合をしている選手はいない。ベテルビエフ(カナダ)だって1年半試合をしていなかった時期がある。トレーニングは続けていたからね、コンディション面でのハンディはないよ。ブランクの悪影響はない。むしろリフレッシュして、新たにハングリーな気持ちで戦えるさ」
そう語るグボジークの気持ちを焚きつけたのは、カネロ・アルバレスの存在だったと言われている。2022年5月ディミトリー・ビボル(ロシア)とのタイトルマッチを控えたカネロが、スパーリングパートナーとしてグボジークを起用したのだった。
カネロがグボジークの復活を後押しし、またベナビデスを避け続けた結果、実現したとも言えるこの王者決定戦。今後のライトヘビー級、そしてスーパーミドル級の行方を占う上でも注目の一戦となるはずだ。
🥊ベナビデスvsグボジーク:勝敗予想
ベナビデスはここ3戦で、デイビッド・レミュー、カレブ・プラント、デメトリアス・アンドラーデというスーパーミドル級屈指のスター選手をなぎ倒してきた経歴がすべてを物語っているだろう。1階級上のライトヘビー級初戦ということを差し引いても、188cmのフレームを持つだけに、ベナビデスの優位性について疑義を挟む余地は少ない。
対するグボジークは、ライトヘビーながら軽やかなフットワークと巧みに打ち分ける高精度なパンチで勝利を重ねてきた。相手の懐に入らずカウンターを取る戦術は、ステベンソン戦でも猛威をふるった。アルトゥール・ベテルビエフとのWBC/IBF世界ライトヘビー級王座統一戦を例外にすれば、その戦略に多くのファイターがストップされた。
ただ、それがベナビデスに通用するのかだ。戦車のように微動だにせずににじり寄り、ねじ伏せる超攻撃型のボクシングは、戦慄をおぼえるKO劇をいくつも生んできた。有無を言わさぬコンビネーションから、相手のテンプルあたりに叩き込むショートアングルの右フックは一撃でKOできずとも、ラッシュへの導火線となってさらなる爆発をいざなう。
階級があがることで「戦車」が「重戦車」になるとすれば、グボジークとしてはとにかく距離を作りたいが、ベナビデスは手数も多いため、中盤戦以降も捌き切るのは至難の業だろう。10RでのKOかTKO勝ちを予想する。
スポーティングニュースの予想:ベナビデスが10RでKO/TKO勝ち
💰ベナビデスvsグボジーク戦の参考オッズ
米大手ブックメーカー「BetMGM」によれば、ベナビデスが「-550」、グボジークは「+350」となっており、ベナビデス有利とみられている。
このオッズはアメリカンオッズ式となり、「-550」は100ドルの配当を手にするのに550ドルをかける必要があり、当たった場合は550+100=650ドルの払い戻し。「+350」は100ドルを賭けて当たれば350ドルの配当となり、100+350=450ドルの払い戻しとなる。
また、米大手ブックメーカー「FanDuel」によるこの試合のプロップベット(成績・試合内容等に基づく賭け)は以下の通りとなっている。
- ベナビデスのKO/TKO、テクニカルデシジョンまたは失格による勝利: -185
- ベナビデスの判定勝利:+320
- グボジークのKO/TKO、テクニカルデシジョンまたは失格による勝利:+900
- グボジークの判定勝利:+120
- ドロー:+2400
※参考オッズは6/13時点。
※この記事はスポーティングニュース国際版の記事を翻訳し、日本向けに一部編集を加えたものとなります。翻訳・編集: 石山修二(スポーティングニュース日本版)、編集:神宮泰暁(スポーティングニュース日本版)