TSNボクシング年間アワード・年間最高男性ボクサー:テレンス・クロフォードが井上尚弥らをおさえて受賞した理由

2024-01-18
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The Sporting News

テレンス・クロフォードはスポーティングニュース(TSN)の2023年度・年間最高男性ファイターに選出されるために1試合しか必要としなかった。

PFPキングの座を争う井上尚弥や多くのライバルたちを押しのけて受賞した理由について、名門『The Ring』誌や『Boxing Scene』などで執筆経験を持ち、格闘技業界で長年活躍する本誌シニア記者のアンドレアス・ヘイルがその理由を解説する。

並み居る強豪を押しのけてMVPとなったクロフォード

2023年、デビッド・ベナビデス、デビン・ヘイニー、そして井上尚弥は複数の試合をこなし、なおかつ素晴らしいパフォーマンスを見せた。それでも、クロフォードがエロール・スペンス・ジュニアを下した一戦は、彼こそがパウンド・フォー・パウンド世界最強であることを証明するには十分だった。

それに到るまでには5年の歳月がかかった。

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2018年以来、テレンス・クロフォードはなぜ自分がウェルター級最強のボクサーと認められないかについて、多くの人からレッテルを貼られてきた。

いわく、4団体統一をはたしたとはいえスーパーライト級から上がってきたクロフォードは、小さすぎる、大した相手と戦っていない、それほど強くない、エトセトラ、エトセトラだ。

ウェルター級の世界戦線はアル・ヘイモンが率いるプレミア・ボクシング・チャンピオンズ(Premier Boxing Champions)社所属のボクサーたちを中心に回っていて、トップ・ランク(Top Rank)社と契約するクロフォードは蚊帳の外に置かれていたという事情もあった。

キース・サーマン、マニー・パッキャオ、ショーン・ポーター、ヨルデニス・ウガス、そしてエロール・スペンス・ジュニアらがウェルター級の各タイトルを争うなか、クロフォードはWBOタイトルを防衛しながら、統一戦の実現を待ち続けるしかなかった。

スペンスがベルトの数を増やしている間、クロフォードは連勝記録を伸ばし続けた。2017年から2023年にかけて、スペンスはIBF、WBC、 そしてWBAのタイトルを獲得した。その間、クロフォードはウェルター級でのデビュー戦でジェフ・ホーンからWBOタイトルを奪取し、その後も6試合連続でノックアウトによる防衛に成功。いよいよ機は熟した。

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当然のごとく、世界中がスペンス vs. クロフォード戦を熱望した。しかし、両者が異なるプロモーターと契約していたため、実現は困難であると見られていた。ところがクロフォードが2021年のショーン・ポーター戦後にフリーエージェントとなることを宣言したことで、道が開かれることになった。

この無敗王者同士のメガファイトは2022年に実現するかと思われたが、対戦交渉は最終段階で決裂した。ファンの失望は大きかった。
 

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しかし、昨年5月に入ると、両者の話し合いは再開した。スペンスの方からクロフォードに対して働きかけがあったとされている。そして5月25日、スペンス vs. クロフォード戦が7月29日に行われることが正式発表され、ボクシング界は熱狂した。

その決戦がいよいよ始まった途端、クロフォードは自身が世界最高のボクサーであることを証明した。

このネブラスカ州オマハが生んだボクシング界の最高傑作は、パウンド・フォー・パウンドTop5同士の対戦としては他に類を見ないほどの一方的な展開でスペンスを圧倒した。試合は9回TKOでクロフォードが勝利し、ウェルター級4団体統一王者が誕生した。

ともに圧倒的な戦績を残してきた無敗王者同士が互角の戦いをするはずであったが、ふたを開けるとクロフォードの強さだけが目立つ結果となった(スペンスは1月になって、当時は白内障の影響からほとんど片目で戦っていたことを告白。手術の成功を明かしている)。クロフォードはこの勝利によって、メジャー4団体時代になってから史上初の2階級4団体統一王座を獲得した男性ボクサーになった。

「このベルトを誰から奪ったかが重要だ。彼ら(ボクシング関係者や批判的ファン)は私を除外してきた。私を酷評してきた。私にはあのウェルター級ボクサーたちに勝てないと言い続けてきた。私は自分がいかに偉大なボクサーであるかを証明したと信じている」とクロフォードは試合後に語った。

クロフォードは自身を証明するたった一度のチャンスをものにし、スーパースターに相応しいパフォーマンスを見せつけた。スポーティングニュース選出の年間最高男性ボクサーの称号は彼にこそ相応しい。

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※本記事は国際版記事を翻訳、日本向け情報を加えた編集記事となる。翻訳:角谷剛、編集:スポーティングニュース日本語版編集部 神宮泰暁