現地時間6月24日、プロボクシング主要4団体統一世界スーパーミドル級王者の『カネロ』ことサウル・アルバレス(メキシコ)と、WBAスーパー・IBF世界ミドル級王者の『GGG』ことゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)が、米ロサンゼルスで記者会見で久々に対峙し、9月に予定される第3戦(ラスベガス、T-モバイルアリーナ)を前に火花を散らした。
激突まですでに3か月を切ったカネロとGGGの3度目の対決は、リスペクト皆無の様相となりそうだ。会見前のフェイスオフでは、カネロから距離を詰める形で約20cmの至近距離の視殺戦が展開された。両者のメガファイトをプロモートするマッチルーム社のエディー・ハーン氏の制止がなければまだまだ睨み合いを続けそうなほどだった。
フェイスオフの余韻を引きずるカネロは、ゴロフキンについて、「彼はいつも公衆の面前ではいい人間のふりをしているが」と話し、わざわざ「彼はゲス野郎だ」と3度も繰り返して罵倒した。「オレはイイヤツのふりなんてしないが、彼は『そう、私はいい人間なのだよ』って装っていやがるんだ」と罵った。
カネロにとっては、2017年9月の引き分け後、2018年9月の2度目の戦いで2-0(115-113、115-113、114-114)の判定勝ちを収めており、すでに終わったライバル関係という思いもあるのだろう。ゴロフキン陣営が望む第3戦に対して消極的なカネロ陣営という構図は4年間続いた。その過程で、ゴロフキンは「カネロは第3戦を逃げている」とメディアに話してきたいたことに対して怒りが隠せないようだと米『ESPN』は指摘する。
カネロ陣営は2018年に、ゴロフキン陣営は2019年に、第3戦を念頭においたDAZNとの大型契約を結んでいた。しかし、カネロ側が翻意して第3戦を頑なに拒否したことで事態はこじれにこじれていく。IBF世界ミドル級王座を獲得して再起に成功したゴロフキン陣営も、カネロ戦を一旦諦めて防衛ロードに専念。カネロはスーパーミドル級、ライトヘビー級と階級を広げていたが、ゴロフキン戦拒否に不満なDAZNと、契約金減額に不満なカネロとの間で関係が悪化。カネロはさらに当時のプロモーターであるオスカー・デラホーヤ率いるゴールデンボーイ社とも決裂。カネロが両社を相手に法的に訴える裁判沙汰となり、第3戦どころではないゴタゴタとなっていた。
カネロは、ミドル級からスーパーミドル級に主戦場を移し、同階級でWBA・WBC・IBF・WBOの主要4団体統一を果たした。ところがその後、2022年2月末にマッチルーム社と2試合のみの契約を結び、再びDAZNの中継で戦うことになる。5月7日にWBAライトヘビー級スーパー王者ドミトリー・ビボルと対戦したが、この試合はキャリア2度目の敗北を喫した。対するゴロフキンは、4月9日に村田諒太をくだし、WBA世界ミドル級スーパー王座と、IBFの2団体統一王者になった。
ビボル戦での敗戦もイラ立ちもあるのか、とにかくピリついたカネロは、「オレが最高クラスの男たちと戦っているとき、彼はクラスCやDのファイターと戦っていた」とこき下ろし、ゴロフキンに引導を渡すことになるかという質問に対して「(そうなれば)めちゃくちゃいいねぇ(Sweet)」としたり顔をみせた。
終始挑発的なカネロの言葉に対して、ゴロフキンは「答えなくない」としたものの、「彼は一度、何か間違ったことをした。それを完全に忘れることはできないし、何か間違ったことをしたあとは、クリーンにみられることはない。それは彼にいつまでもついてまわることになるよ」と皮肉った。
2018年の第2戦前、カネロは禁止薬物クレンブテロールで陽性となり、停職処分で試合が延期になった経緯がある。カネロは陽性になった理由を、赤身を増やすクレンブテロールが投与されていた牛肉を食べさせられたという理由で『故意ではない』として、それ以上の処分を回避していた。当時も村田諒太がカネロの対応を批判するなど、業界内でひんしゅくを買っていた。
第2戦まではミドル級として実施された両者の戦いだが、第3戦はスーパーミドル級4団体統一王座の防衛戦として行なわれる。会見の最後にカネロは4本のベルトを手に、再びゴロフキンとフェイスオフを展開した。最初のフェイスオフと合わせれば約2分近い視殺戦を演じた両者だが、今後は9月の決戦までSNS上での前哨戦が続きそうだ。