2023年のボクシング界で実現が期待される試合30選:フューリーvsウシク、井上尚弥vsフルトン、井岡vs中谷など

2023-01-04
読了時間 約13分
(Ed Mulholland/Matchroom Boxing)

2023年に実現が望まれているボクシングの試合はどんなカードなのか? 井上尚弥のスーパーバンタム級初戦は? タイソン・フューリーとオレクサンドル・ウシクのヘビー級4団体統一戦は?

今後12か月間にブッキングされる可能性のあるカードを、本誌格闘技部門副編集長のトム・グレイ(Tom Gray)と格闘技エキスパートのダニエル・ヤノフスキー(Daniel Yanofsky)が紹介する。

2022年、ボクシングファンは素晴らしい試合をいくつも見ることができた。ケイティー・テイラー vs. アマンダ・セラーノ、リー・ウッド vs. マイケル・コンラン、そしてジャーメル・チャーロ vs. ブライアン・カスターニョ第2戦などがそうである。

言うなれば、2022年はボクシングの歴史を振り返ってみても稀有な年であったのかもしれない。そうすると、私たちには(またしても)ある疑問が頭に浮かんでくる──ボクシング界は新たな黄金時代に入っているのだろうか。

2023年の幕開けを前にして、すでにいくつかの試合が予定されている。正式決定を待つだけの試合もあれば、ファンが実現を待ち望んでいる試合もある。ファンひとりひとりに、最も見たい試合があるだろう。

そこでスポーティングニュース(The Sporting News)では、2023年に実現する可能性がある試合を選んでみた。ヘビー級から最軽量クラスまで、言わばボクシング界における仮想ドラフトのようなものだと考えてみてほしい。

それぞれの試合は2023年内実現の可能性が高いか低いか、および期待値によってランク付けしてある。日程は過去あるいは予定された試合のタイミングと現実的な交渉状況を鑑みて設定した。会場は出場するボクサーの経歴と最も望ましいと思われる場所から選んだ。

どの試合がより現実的であるかは読者の判断にお任せする。

1. タイソン・フューリー vs. オレクサンドル・ウシク

  • ヘビー級世界4団体統一王座戦
  • 日程 | 会場:2023年3月5日 | ウェンブリー・スタジアム(ロンドン)

サウジアラビア政府が、ニューヨークから海王星までのあらゆる会場候補地を買い取ろうとしていることは承知している。しかし、フューリー vs. ウシクだけはイギリス国内でこそ最大のイベントになり得るだろう。各団体それぞれの思惑や事情を越えることができれば、23年振りにヘビー級世界王座4団体統一戦が実現する(WBOではなく、IBO王座を含めた、1999年11月のレノックス・ルイス vs. イベンダー・ホリフィールド第2戦以来)。

TSNが予想するフューリー vs. ウシクの年内実現可能性:7/10

2. デオンテイ・ワイルダー vs. アンソニー・ジョシュア

  • ヘビー級ノンタイトル戦
  • 日程 | 会場:2023年3月25日 | T-モバイル・アリーナ(ラスベガス)

この試合は2018年から話題をさらってきた。多くの人がワイルダー vs. ジョシュアの勝者こそがヘビー級4団体統一王者になると考えてもいた。現在では両者ともに異なる立場にある。それでもこのふたりのヘビー級トップファイターの対戦を待ち望むファンは今でも多い。

ワイルダーは、ジョシュアに勝ったこともあるアンディ・ルイス・ジュニアと2023年3月あたりに対戦するかもしれない。プロモーターのエディー・ハーン氏は、それと同じ時期にジョシュアの試合を組みたいはずだ。それはディリアン・ホワイトとの再戦になるかもしれない。その代わりにワイルダー vs. ジョシュアが実現する可能性はある。しかし、残った時間を考えると、ファンはこの試合を最低でも9月まで待つことになるかもしれない。私たちがマッチメーカーになれるのであれば、3月がこの試合に最も望ましい時期である。

TSNが予想するワイルダー vs. ジョシュアの年内実現可能性:6/10

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3. ローレンス・オコリー vs. ジェイ・オペタイア

  • WBO・IBF世界およびThe Ring誌 クルーザー級統一王座戦
  • 日程 | 会場:2023年12月9日 | O2アリーナ(ロンドン)

ふたりのクルーザー級チャンピオンが、雌雄を決する戦いを望んでいる。課題はタイミングと健康状態だ。オペタイアが戦った直近の試合は2022年7月22日で、マイリス・ブリエディスに勝利してIBFとThe Ring誌のタイトルを獲得した。その試合でオペタイアは顎を骨折してしまった。手術と感染症から回復し、トレーニングに戻ったばかりだ。3月にはリングに復帰し、マテウシュ・マスターナクかクリス・ビラム=スミスと対戦するかもしれない。

一方のオコリーはデビッド・ライトを相手にWBOタイトル防衛戦を行う予定だ。ヘビー級への転向を望む可能性もあり、そうなるとこの統一王座戦は実現しなくなる。

TSNが予想するオコリー vs. オペタイアの年内実現可能性:2/10

4. ディミトリー・ビボル vs. アルツール・ベテルビエフ

  • ライトヘビー級世界4団体統一王座戦
  • 日程 | 会場:2023年10月7日 | マディソン・スクウェア・ガーデン(ニューヨーク)

ライトヘビー級の真の王者を決める戦いとなる。この階級でトップに君臨するふたりのファイター、ビボルとベテルビエフが激突する方向へと向かっている。Top Rank社と契約しているベテルビエフは1月にアンソニー・ヤードと対戦しなくてはならない。

2022年5月に『カネロ』ことサウル・アルバレスを3-0判定で下し、スポーティングニュース選出の年間最高ボクサーに輝いたビボルには、大きな再戦が控えているかもしれない。ビボルとカネロはスーパーミドル級で戦うという噂もあるからだ。もしそうなるか、あるいはビボルが3月に別の相手と試合をすることになれば、ビボル vs. ベテルビエフは夏以降の話になる。10月7日のマディソン・スクウェア・ガーデンは空いている。

TSNが予想するビボル vs. ベテルビエフの年内実現可能性:8/10

5. サウル・アルバレス vs. ディミトリー・ビボル

  • スーパーミドル級世界4団体統一王座戦
  • 日程 | 会場:2023年5月6日 | T-モバイル・アリーナ(ラスベガス)

5月にビボルに敗れて以来、カネロは雪辱戦のことしか考えてこなかった。これはライトヘビー級のビボルが、今度はアルバレスの主戦場であるスーパーミドル級に足を踏み入れることになるプランである。カネロにとっては手術明けの復帰戦だ。階級を上げることは、下げることと同じではない。

ただビボル側は、アルツール・ベテルビエフとのライトヘビー級世界4団体統一王座戦が実現するとすれば、それより前にカネロとの試合を行わなくてはならない。ベテルビエフとの大一番と近い日程でこの試合をするだけの価値をビボルが認めるだろうか。再戦は魅力的ではあるが、ライトヘビー級の新たな歴史が開かれようとしているボクシング界にとっては、カネロ・アルバレスはいささか邪魔な存在のようにも思えてくる。

TSNが予想するアルバレス vs. ビボルの年内実現可能性:5/10

6. サウル・アルバレス vs. ジョン・ライダー

  • スーパーミドル級世界4団体統一王座戦
  • 日程 | 会場:2023年5月6日 | ミレーツ・スタジアム(ロンドン)

前述のボクシング界における悩ましい立場を考えると、カネロの復帰戦の相手は、ジョン・ライダーがむしろ相応しいのではないか。ライダーは元スーパーミドル級のタイトル挑戦者であり、11月にはザック・パーカーに勝利してWBO同級暫定王者の座を獲得した。積極的なファイターとして知られるライダーは現在4連勝中である。Matchroom社のエディー・ハーン氏は、カネロをイギリスで有力な挑戦者と対戦させたいと願うはずである。

どの階級での戦いになるにせよ、カネロはビボルとの対戦がすぐに実現しないのであれば、ライダーを対戦相手に選ぶことが最も理にかなっている。その方が本来のパワーを発揮しやすいはずでもある。はたしてエディー・ハーン氏にそれが実現できるだろうか。

TSNが予想するアルバレス vs. ライダーの年内実現可能性:9/10

7. ゲンナジー・ゴロフキン vs. クリス・ユーバンク・ジュニア

  • WBAスーパー・IBF・IBO世界ミドル級統一王座戦
  • 日程 | 会場:2023年6月10日 | O2アリーナ(ロンドン)

ゴロフキンとユーバンクの対戦は、2016年からずっと取り沙汰されている。それから幾年も過ぎてしまったが、それでもこの両者の対戦には大きな意味がある。現在ゴロフキンが持つWBAスーパー・IBF・IBO世界ミドル級王座にユーバンクが挑戦する構図だ。2022年9月にカネロから敗北を喫して以来、ゴロフキンの将来は不明のままだ。マイケル・ゼラファまたはエリスランディ・ララとの対戦も考えられる。

一方のユーバンクはコナー・ベンと対戦しようとしたが実現せず、1月にリアム・スミスと対戦することが決まっている。ゴロフキンに挑むためには、その試合に勝利しなくてはならない。「GGG」ことゴロフキンは40歳、ベンは26歳だ。ボクシング界はゴロフキンを優先するべきではないだろうか。

TSNが予想するゴロフキン vs. ユーバンクの年内実現可能性:6/10

8. ジャーモール・チャーロ vs. ジャニベク・アリムハヌリ

  • WBC・WBO世界ミドル級統一王座戦
  • 日程 | 会場:2023年5月13日 | バークレイズ・センター(ニューヨーク)

強打者同士のマッチアップへの期待の声は高いが、この対戦の実現はそもそも難しいかもしれない。私生活でトラブル続きのジャーモール・チャーロ(チャーロ兄弟の兄)は、2020年からわずか2戦しかしていない。直近の試合は2021年7月だ。その間にアリムハヌリは、デメトリアス・アンドラーデが階級を上げて王座を返上したため、空位となったWBOミドル級王者の座についた。

統一王座戦は行われるべきだが、ジャーモール自身はゲンナジー・ゴロフキン、カレブ・プラント、あるいはハイメ・ムンギアといった相手との対戦を望んでいる。ジャーモールの状況が不透明なうえ、アリムハヌリがWBO指名挑戦者との対戦義務があることから、この両者の対戦が実現する可能性は低い。

TSNが予想するジャーモール・チャーロ vs. アリムハヌリの年内実現可能性:2/10

9. クラレッサ・シールズ vs. ナターシャ・ジョナス

  • 女子ミドル級世界4団体統一王座戦
  • 日程 | 会場:2023年4月15日 | AOアリーナ(マンチェスター)

女子ミドル級4団体統一王者を2度戴冠したクラレッサ・シールズは、それでもまだボクシングで最強の相手とは対戦していないのかもしれない。シールズとの対戦が噂されるナターシャ・ジョナスは、WBC、IBF、そしてWBOのスーパーウェルター級王者だ。ジョナスはウェルター級王者のジェシカ・マッキャスキルと対戦するかもしれない。

しかし、シールズのプロモーターであるドミトリー・サリータ氏は、シールズ vs. ジョナスの可能性があると述べたことがある。サバンナ・マーシャルとの再戦もあり得る。2022年は女性ボクシングにとって大きな年だった。もしシールズ vs. ジョナスが実現すれば、2023年はその流れがさらに続くだろう。すべてはミドル級とスーパーウェルター級の動向にかかっている。

TSNが予想するシールズ vs. ジョナスの年内実現可能性:7/10

10. ジャーメル・チャーロ vs. セバスチャン・フンドラ

  • スーパーウェルター級世界4団体統一王座戦
  • 日程 | 会場:2023年12月20日 | トヨタ・アリーナ(カリフォルニア)

フンドラは、2022年4月にエリクソン・ルービンとダウンを奪い合う激しい戦いの末にTKO勝利を収めて実力を証明した。続くカルロス・オカンポ戦では3-0判定で勝利した。スーパーウェルター級世界4団体統一王者のジャーメル・チャーロ(チャーロ兄弟の弟)に挑戦する自信を深めている。一方、王者ジャーメルは、1月にティム・チューと対戦する予定だったが、12月下旬、左手を骨折する故障を負い、4団体統一王座戦の延期が決定。スーパーウェルター級の行方が不透明になっている。

ジャーメルはファンに向けて「(2023年は)2試合を行う」と約束していたため、回復状況によるがフンドラ戦は年末までに実現するかもしれない。ボクシング界にとっては、それが最も望ましい方向だ。

TSNが予想するジャーメル・チャーロ vs. フンドラの年内実現可能性:5/10

11.テレンス・クロフォード vs. エロール・スペンス・ジュニア

  • ウェルター級世界4団体統一王座戦
  • 日程 | 会場:2023年11月18日 | AT&T スタジアム(テキサス)

エロール・スペンス・ジュニアとテレンス・クロフォードを巡っては、醜い状況が依然として続いている。本来ならこのふたりのチャンピオンは2022年の11月か12月に対戦するはずだったが、交渉は暗礁に乗り上げられたままだ。 2023年こそウェルター級の4団体統一王座戦の実現を望むファンのフラストレーションは溜まっている。スペンスは2022年4月から戦っていないが、クロフォードは2022年最初の試合を12月になってから戦った。2022年は不発に終わった。

スペンスは2023年4月にはリングに戻ってくるかもしれない。その対戦相手はキース・サーマンが予想されている。それがスペンスの戦略なのかもしれない。ボクシングファンは(またしても)交渉の行方を待たされるかもしれないが、クロフォード vs. スペンスの可能性については良い兆候もある。ただ、あまりあせってはいけないようだ。

TSNが予想するクロフォード vs. スペンスの年内実現可能性:7/10

関連記事:井上尚弥は新たなマニー・パッキャオとなるのか? 両者29歳時点のキャリアを比較!

12. エロール・スペンス・ジュニア vs. ジャロン・エニス

  • WBAスーパー・WBC・IBF世界ウェルター級統一王座戦
  • 日程 | 会場:2023年11月18日 | AT&T スタジアム(テキサス)

ジャロン・エニスは、世界タイトル戦を熱望してきた。今年1月7日にカレン・チュハジアンとIBFウェルター級暫定王座をかけて対戦することが決まり、その目標に一歩近づいている。この試合に勝利すれば、エニスはさらに大きなチャンスを手にすることができる。前述通りスペンスは、2023年前半にキース・サーマンと対戦するかもしれない。スペンスとテレンス・クロフォードの対戦交渉がまたしても不調になれば、エニスが次の対戦相手に選ばれる可能性が出てくる。それは2023年には実現しないかもしれないが、ファンはこのふたりの対戦でも構わないはずである。

TSNが予想するスペンス vs. エニスの年内実現可能性:4/10

13. ジャロン・エニス vs. バージル・オルティス・ジュニア

  • ウェルター級ノンタイトル戦
  • 日程 | 会場:2023年6月24日 | ディグニティ・ヘルス・スポーツ・パーク(カリフォルニア)

ボクシング界きっての若手スターふたりが対戦するとどうなるか。ボクシングファンは見たがるだろう。エニスは、カレン・チュハジアンとのIBFウェルター級暫定王座決定戦に向けて準備万端だ。オルティスは、まもなくエイマンタス・スタニオニスとWBA(レギュラー)ウェルター級タイトルをかけて戦う。もっともオルティスは、条件次第ではこの試合を拒否することもできる。

もしスペンス・ジュニアとテレンス・クロフォードの試合に気をとらわれているなら、このふたりの対戦は最上の選択肢である。ボクシング界の通例通り、最大の問題は交渉の行方だろう。

TSNが予想するエニス vs. オルティスの年内実現可能性:7/10

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14. ジョシュ・テイラー vs. テオフィモ・ロペス

  • WBO世界スーパーライト級王座戦
  • 日程 | 会場:2023年10月15日 | O2アリーナ(ロンドン)

ロペスは、ライト級王者としてのキャリアを積んだあとでスーパーライト級に転向してからも2勝0敗である。サンドル・マルティンに勝利したロペスは、テイラーとの対戦を望んでいる。対するテイラーは、まず2022年2月に物議を醸したスプリット判定でジャック・カテラルを下したが、状況としてはダイレクトリマッチに勝ち、スーパーライト級のベルトを防衛しなくてはいけない。この試合は2月後半か3月前半になるだろう。

テイラーがカテラルとの再戦にハッキリとした形で勝利すれば、かつて保持していた3つのベルトを取り戻し、「The Takeover」の異名をもつロペスと、イギリス国内で対戦する筋道が見えてくる。ロペスはそれに興味を持つはずだ。

TSNが予想するテイラー vs. ロペスの年内実現可能性:8/10

15. レジス・プログレイスvs. ホセ・ラミレス

  • WBC世界スーパーライト級王座戦
  • 日程 | 会場:2023年11月18日 | ディグニティ・ヘルス・スポーツ・パーク(カリフォルニア)

プログレイス vs. ラミレスは最も組むのが容易な試合とされ、2019年から取り沙汰されてきた。しかし、現在それを実現させることは非常に困難である。元WBC・WBO世界スーパーライト級王者のラミレスは、最近になってWBC同級王者プログレイスとのタイトル戦を行う権利を放棄した。興行権利を落札した新興プロモーター、Marvnaiton(マーブネイション・プロモーション)社による報酬分配率にラミレス側が不満を示したからとされ、代わりに、2022年11月26日のプログレイス vs. ホセ・セペダ戦が組まれた経緯がある。

スポーツ専門局『ESPN』によると、プログレイス vs. ラミレス戦自体の交渉は2023年3月までが有効期限である。もしこの両者が条件に合意し、そしてテオフィモ・ロペスが絡んでこない限りは、この対戦は年末までに実現するだろう。Top Rank社とProbellum社が共同でイベントを仕切ることが問題の種になりそうだ。

TSNが予想するプログレイス vs. ラミレスの年内実現可能性:7/10

16. デヴィン・ヘイニー vs. ワシル・ロマチェンコ

  • ライト級世界4団体統一王座戦
  • 日程 | 会場:2023年5月13日 | マディソン・スクウェア・ガーデン(ニューヨーク)

この両者は互いを必要としている。24歳のヘイニーはここまで無敗であり、ライト級の4団体統一王者である。しかし、そのキャリアを印象付けるような対戦相手にはまだ恵まれていない。34歳のロマチェンコは、引退の日が近づいているが、このウクライナ出身のスターは依然として高いレベルの技術をもったボクサーであり、ボクシングの伝説とも呼べる存在だ。幸いにしてふたりともTop Rank社と契約している。政治的事由がこの見逃せない対戦を妨害することはない。

TSNが予想するヘイニー vs. ロマチェンコの年内実現可能性:9/10

17. ガーボンタ・デービス vs. ライアン・ガルシア

  • ライト級ノンタイトル戦
  • 日程 | 会場:2023年5月6日 | MGM グランド(ラスベガス)

このマッチアップは世界タイトルがかからない試合としては、ボクシング界で最も魅力的なものになる(デービスはWBA世界ライト級レギュラー王者であるが)。ふたりとも若く、スピードとパワーに恵まれ、無敗の戦績を誇り、多くのファンを持ち、そしてダンスで有名だ。もしカネロが5月5日(メキシコの祝日)に試合をすることを諦めるようなら、代わりになり得るのはこの対戦以外にはない。

実現に向けての交渉は進んでいるが、その前にデービスは1月7日にやはり無敗のエクトール・ルイス・ガルシア戦に勝たなくてはならない。この試合は、デービスが家庭内暴力など14の罪で逮捕されたことで中止になるかと思われたが、すでに保釈され予定通り行われる見込みだ。

TSNが予想するデービス vs. ガルシアの年内実現可能性:7/10

18. ケイティー・テイラー vs. アマンダ・セラーノ 第2戦

  • 女子ライト級世界4団体統一王座戦
  • 日程 | 会場:2023年5月20日 | クローク・パーク(アイルランド)

この両者の第1戦を目撃した人なら誰でも、なぜ第2戦が見逃せないものかが分かるはずだ。2022年4月にテイラーがセラーノをスピリット判定で下した試合は、間違いなく女性ボクシング史上最高のものだった。第2戦には8万人の大観衆をクローク・パークに集めようと、両陣営は懸命だ。この有名な会場がボクシングでそれだけの観客を集めたのは50年も前のことになる。モハメド・「The Greatest」・アリが、アルビン・「ブルー」・ルイスを11ラウンドTKOで下したノンタイトル戦のことである。

TSNが予想するテイラー vs. セラーノの年内実現可能性:9/10

19. エマヌエル・ナバレッテ vs. オスカル・バルデス

  • WBO世界スーパーフェザー級王座戦
  • 日程 | 会場:2023年7月29日 | デザート・ダイヤモンド・アリーナ(アリゾナ)

メキシコ人同士の対戦となる。ふたりとも同国で最も経験が豊富で栄光に満ちたファイターだ。当初、この対戦は2023年2月3日に予定されていたが、バルデスが故障を理由に棄権した。ナバレッテは空位になっているWBO王座をかけて無名のオーストラリア人ボクサー、リアム・ウィルソンと対戦することになった。前評判では元WBO世界スーパーバンタム級王者で、現WBO世界フェザー級王者のナバレッテが圧倒的に有利だ。ファンはナバレッテ vs. バルデスを待ち望んでいる。すべてが予定通りに進めば、ナバレッテにとって初のスーパーフェザー級防衛戦として実現する。

TSNが予想するナバレッテ vs. バルデスの年内実現可能性:8/10

20. シャフカッツ・ラヒモフ vs. ジョー・コルディナ

  • IBF世界スーパーフェザー級王座戦
  • 日程 | 会場:2023年7月15日 | モーターポイント・アリーナ(カーディフ)

2022年6月、不利を伝えられていた地元ウェールズ出身のコルディナは、尾川堅一を鮮烈な2ラウンドKOで破り、世界タイトル奪取の夢を叶えた。それから5か月もたたないうちに、ラヒモフ戦に向けてトレーニング中だったコルディナは右手を複雑骨折する不運に見舞われ、最初のタイトル防衛戦を棄権に追い込まれた。

結果として、IBFはコルディナに王座剥奪を通告し、ゼルファ・バレットに勝利したラヒモフが空位のタイトルを獲得した。故障から回復したコルディナには2度目のチャンスが与えられるべきである。

TSNが予想するラヒモフ vs. コルディナの年内実現可能性:6/10

21. アリシア・バウムガードナー vs. ミカエラ・メイヤー 第2戦

  • 女子スーパーフェザー級世界4団体統一王座戦
  • 日程 | 会場:2023年10月14日 | O2アリーナ(ロンドン)

2022年10月、バウムガードナーはメイヤーをスプリット判定で下し、女子スーパーフェザー級の3団体一王者となった。土をつけられたメイヤーは雪辱に燃えているが、バウムガードナーはまずは2月4日のエルヘム・メカレドとの4団体統一王座戦に集中している(判定勝ちで女子史上7人目のアンディスピューテッド王者に)。メイヤーとの再戦は大イベントになる。ふたりともアメリカ人だが、第1戦はイギリスで行われた。第2戦もそうなるだろう。バウムガードナーは返り討ちを期している。

TSNが予想するバウムガードナー vs. メイヤーの年内実現可能性:3/10

22. ルイス・アルベルト・ロペス vs. マウリシオ・ララ

  • IBF世界フェザー級王座戦
  • 日程 | 会場:2022年5月20日 | プラザ・デ・トロス(メキシコ)

ふたりのメキシコ人ファイターが「闘牛場(プラザ・デ・トロス)」で対決する。そんな試合が見られるかもしれない。ロペスは最近ジョシュ・ウォリントンと12ラウンドを戦い、3-0判定で勝利して世界タイトルを獲得した。ララは2021年2月にウォリントンをTKOで破ったが、ダイレクトリマッチでは不本意なドローに終わった。ロペスもララも、DAZNに登場したことがある本物のファイターだ。もしボクシングの神様がこのふたりの対戦に乗り気でないとしたら、苦しむのは間違いなくファンである。ロペス vs. ララは実現されるべきである。

TSNが予想するルイス・アルベルト・ロペス vs. ララの年内実現可能性:7/10

23. リー・ウッド vs. ジョシュ・ウォリントン

  • WBA世界フェザー級王座戦
  • 日程 | 会場: 2023年5月21日 | シティ・グラウンド(ノッティンガム)

この対戦はイギリス人ファンの多くが望む王座統一戦ではない。しかし、それは問題ではない。ウォリントンはルイス・アルベルト・ロペスに僅差で敗れたが、依然として世界のフェザー級戦線で屈指のボクサーだ。一方、ウッドは類まれなチャンピオンであり、フェザー級では無敵を誇る。両者のスタイルは噛み合い、エキサイティングな試合になるだろう。

チケット入手は困難になるに違いない。3万人もの観客が地元ノッティンガム出身のリードをサッカーのように応援し、長く記憶に留まるような雰囲気を生み出すはずだ。ウォリントンが敗れる前のことになるが、シティ・グラウンド(ノッティンガムの38000人収容可能なサッカー場)が5月21日に予約されていたと報じられている。とりあえずはその日を忘れないようにしよう。

TSNが予想するウッド vs. ウォリントンの年内実現可能性:7/10

24. スティーブン・フルトン vs. 井上尚弥

  • WBC・WBO世界スーパーバンタム級統一王座戦
  • 日程 | 会場:2023年6月19日 | さいたまスーパーアリーナ(日本)

「ザ・モンスター」の異名で知られる井上は、2022年12月にポール・バトラーを下し、バンタム級の4団体統一に成功。アジア人初の偉業を達成したことで、この階級でやり残したことはない。4団体統一戦後の宣言通り、2023年はスーパーバンタム級に転向するが、本人の遠回りする気はないという旨の発言もあり、陣営は王座獲得の最短ルートを採る計画を進めている。なかでも筆頭の標的とするWBC・WBO王者のフルトンは、同級のトップファイターであり、その技術は侮れない。

しかし、フルトンがフェザー級に階級を上げ、ブランドン・フィゲロアとの対戦を目指しているとの根強い噂もある。「クール・ボーイ」の異名を持つフルトンが、しばらくはスーパーバンタム級に留まることをファンは願っている。フルトン vs. 井上は、求め得る最高の戦いのひとつになるはずだ。

TSNが予想するフルトン vs. 井上の年内実現可能性:5/10

25. ファン・フランシスコ・エストラーダ vs. ノニト・ドネア

  • WBC世界およびThe Ring誌 スーパーフライ級統一王座戦
  • 日程 | 会場: 2023年6月24日 | ディグニティ・ヘルス・スポーツ・パーク(カリフォルニア)

エストラーダは2022年末、伝説となったローマン・「チョコラティート」・ゴンサレスとのライバル対決を判定で制したばかりだ。一方のドネアは、同年6月に井上に衝撃的な2ラウンドTKOで敗れた。しかし、ドネアはこのままでは終わらないはずだ。

40歳になったドネアは、エストラーダとの対戦にも前向きであり、そのためにはスーパーフライ級へ体重を落とすことも厭わないようだ。「フィリピンの閃光」と呼ばれ、スーパーフライ級で戦ったのは12年も前のことであるにもかかわらずだ。4階級で世界王者となっただけに、類まれな自制心を備え、また挑戦心を忘れてはいない。

TSNが予想するフルトン vs. 井上の年内実現可能性:4/10

26. 井岡一翔 vs. 中谷潤人

  • WBO世界スーパーフライ級王座戦
  • 日程 | 会場:2023年9月5日 | 大田区総合体育館(東京)

ことボクシングに限ると、日本はアメリカやイギリスとはかなり異なったアプローチをとる。同じ階級にエリートレベルのファイターがふたりいるときは、必ず両者を対戦させようとするのだ。井岡は4階級を制した世界チャンピオンであり、日本ボクシング史上でも屈指の存在だ。24歳の中谷は元フライ級の世界タイトル保持者であり、最近になって階級を上げ、WBOから王者・井岡に対する指名挑戦者認定を受けた。

ただ、2022年12月31日、井岡はWBA王者ジョシュア・フランコとの統一王座戦がドローとなり、先行きがやや不透明となった。フランコとのリマッチか、中谷との防衛戦か、それともWBC王者エストラーダか。実現可能性としては、日本国内で組める中谷との試合が現実的かもしれない。

TSNが予想する井岡 vs. 中谷の年内実現可能性:6/10

27. ローマン・ゴンサレス vs. ジェシー・ロドリゲス

  • スーパーフライ級ノンタイトル戦
  • 日程 | 会場:2023年6月30日 | アメリカン・エアラインズ・センター(ダラス)

ローマン・「チョコラティート」・ゴンサレスは、直近3試合で2敗している。実力が衰えていないことを証明するためには勝利が必要だ。ジェシー・「バム」・ロドリゲスは、イスラエル・ゴンザレスを12ラウンド判定勝ちで下した。カルロス・クアドラス、シーサケット・ソー・ルンビサイといった強敵を倒した頃の勢いを取り戻そうとしている。

両者の対戦はノンタイトル戦になる。しかし、実現はあまり期待できないかもしれない。ロドリゲスはフライ級転向のために、それまで保持していたWBC世界スーパーフライ級王座を返上したからだ。さらにゴンザレスがエストラダとの第4戦を行うとの噂もある。

TSNが予想するゴンサレス vs. ロドリゲスの年内実現可能性:5/10

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28. サニー・エドワーズ vs. フリオ・セサール・マルティネス

  • WBC・IBF世界およびThe Ring誌 フライ級統一王座戦
  • 日程 | 会場:2023年4月15日 | ウェンブリー・アリーナ(ロンドン)

スイッチヒッターのIBF王者エドワーズは、WBC王者マルティネスとの統一王座戦を長い間追い求めきたが、そろそろ待ちくたびれたようだ。生粋のロンドンっ子でもあるエドワーズは、饒舌ですばしっこく、とらえどころがない性格だ。マルティネスは反対のタイプで、エドワーズを好んでおらず、対戦実現に結びつかない。

ちなみにエドワーズは現在The Ring誌のフライ級ランキングで第1位、マルティネスは第2位にランクされている。この両者の対戦で勝利した方が2016年のローマン・マルティネス以来のThe Ring誌フェザー級王者になるはずだ。誰かがメキシコのKOアーチスト、マルティネスを説得してくれないだろうか。

TSNが予想するエドワーズ vs. マルティネスの年内実現可能性:2/10

29. 寺地拳四朗 vs. シベナティ・ノンティンガ

  • WBA・WBC・IBF世界およびThe Ring誌 ライトフライ級統一王座戦
  • 日程 | 会場:2023年7月15日 | さいたまスーパーアリーナ(日本)

「The Amazing Boy」と呼ばれる寺地と、「Special One」と呼ばれるノンティンガの対決は、そのニックネームだけ聞くと、まるでアメコミのMarvelがプロモートするイベントのようだ。30歳の寺地は2022年11月に同じ日本人の京口紘人を衝撃的なTKO勝ちで倒して、自らの人生を一変させた。24歳のノンティンガは9月に空位となっていたIBF王座をかけて、かつて無敗だったエクトル・フローレスと戦い、僅差のスプリット判定で勝利した。

この両者の対戦は、ボクシング史上初となるライトフライ級4団体統一王者の誕生に一歩近づくことになる。しかし、寺地の実力と比べれば、ノンティンガがIBFチャンピオンの座にしがみついたとしても非難はできない。

TSNが予想する寺地 vs. ノンティンガの年内実現可能性:5/10

30. 谷口将隆 vs. 重岡銀次朗

  • IBF・WBO世界ミニマム級統一王座戦
  • 日程 | 会場:2023年6月19日 | さいたまスーパーアリーナ(日本)

軽量級のふたりのスター選手が互いに相手の出方をうかがっている。28歳の谷口は、1月6日に大阪で自身3度目となるWBO王座防衛戦を行う予定だ。対戦相手はメルビン・ジェルサエムである。同じ日、同じ場所で23歳の重岡はダニエル・バラダレスが持つIBF王座に挑戦する。重岡は軽量級の新たなジャパニーズモンスターとして売出中だ。

両者ともに勝利すれば、サウスポー同士の統一王座戦が実現し、無敗の日本人ボクサーふたりが激突するかもしれない。フルトン vs. 井上のアンダーカードにはうってつけだ。

TSNが予想する谷口 vs. 重岡の年内実現可能性:4/10

原文:Boxing’s 30 most desired fights in 2023, from Tyson Fury vs. Oleksandr Usyk to Errol Spence Jr. vs. Terence Crawford
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本版編集部