海外ではスポーツベッティングが合法な国や地域があり、ボクシングは中でも人気ジャンルだ。12月26日(火)の井上尚弥 vs. マーロン・タパレスも注目のカードになっている。
本誌格闘技部門エキスパートのダニエル・ヤノフスキーが、井上勝利を推すオッズと、試合内容に関するオッズなどを分析し、井上がいかにして勝利を収めるかを予想する。
圧倒的優位の井上、試合内容別オッズから見えてくるのは?
12月26日(火)、東京・有明アリーナで行われる井上尚弥 vs. マーロン・タパレスの一戦で、史上初のスーパーバンタム級に4団体統一王者が誕生する。両者が激突する4団体統一戦ならびにアンダーカードは、日本ではNTTドコモの動画配信プラットフォーム『Lemino』(レミノ)で独占無料生配信される。
井上はすでに4つの階級でタイトルを手にしており、この試合に勝てばクラレッサ・シールズ、テレンス・クロフォード、ケイティー・テイラーに次ぐ、ボクシング史上4人目の2階級での4団体統一王座獲得となる。30歳の井上はここまで無敗を続けており、世界最大手プロモーターのトップランク社加入後も負ける気配は見られない。
一方のタパレスは、フィリピン人史上初となる4団体統一王者を狙う。元WBO世界バンタム級王者であり、現WBA/IBF世界スーパーバンタム級王者のタパレスは、井上の母国・日本のリングで大番狂わせを起こす気満々だ。
米大手『Bet MGM』によれば、この試合は井上が「-1667」で有利、タパレスは「+800」の不利となっていて、井上優勢が予想されている(このレートはアメリカンオッズと呼ばれ、井上勝利の場合「100ドル賭けた際、取り戻すのに1667ドルかかる」という意味合いになる)。
これまでの井上の対戦相手同様、タパレスはこのオッズを覆すべく戦いに挑むこととなる。タパレスにそれができるのか、それとも井上の勝利は動かないのか。
ここでは、『ザ・モンスター』優勢が伝えられる4団体統一戦のプロップベット(試合内容別)オッズを参考に、格闘技に広く精通するヤノフスキー記者がスポーティングニュースとして試合内容を予想していく。
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井上尚弥 vs. タパレスのプロップベット/井上勝利の場合のベストオッズ(試合内容別予想)
1. 試合は最終12ラウンドまで続くか?(「Bet MGM」では、Noが「-50」)
井上とタパレス、両者ともにヘビーヒッターであることを考えると、この試合は長期戦にはならないと考えるのが順当だろう。
タパレスは直近の試合でスプリットデシジョンによって勝利を収めたが、彼の試合が最終ラウンドまでもつれ込んだのは2014年以来のことだった。井上は2019年、あの印象的なノニト・ドネアとの初戦以来、12ラウンドまで戦ったことはない。ポール・バトラーは超消極的な戦術で11ラウンドまで粘ったが、そこまでだった。それがノックアウト・アーチスト同士ともなれば、一瞬でも見逃せば試合が決まる、そんなスリリングな展開となるはずだ。
井上の激しさ、攻撃量からすると、12ラウンドまでは続かないという予想が容易に立つ。早々に打ち倒すか、そうでなければ相手を引きづり回してバテさせることになるだろう。
2. 試合が決着するのは何ラウンド?(「Bet MGM」では、7~9ラウンドのグループ・ラウンド・ベットが「+280」)
アラン・ディバエン戦での井上は8ラウンドに攻勢を強め、左フックで相手をマットに沈めた。ポール・バトラー戦では、6ラウンドに16発、7ラウンドに14発、10ラウンドに19発のパンチを打ち込んだ。スティーブン・フルトン戦では、5、6ラウンドで19発のパンチを、さらに続くラウンドで13発の強烈なパンチを放った。
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井上が攻勢を強めた時、誰もその攻撃を止めることはできない。オッズから読み取ると、井上は早々にタパレスを料理することもできるだろうし、散々弄んだ挙句、終盤一気に襲いかかることもできるという予想だ。だが、もう少し踏み込めば、タパレスの不器用なスタイルを踏まえると、タパレスが井上のパンチの衝撃に気付く前に勝負は決しているはずだ。
3. 勝ち方は?(「Bet MGM」では、井上のKO/TKO勝ちが「-500」)
先の二つのプロップベットは井上のパワーが鍵だった。井上はここまで22勝のKO勝利を挙げ、直近も6戦連続でKO勝ちを収めているだけに、むしろそこに着目しない方が難しい。
このベットでは、井上が何ラウンドで勝利するかは問題ではない。パンチの的中率34.5%、ヒットしたパンチの数は平均23.1は(PFPのリスト内で)3位(放ったパンチの数は平均66.9)という数字を誇る井上が、マーベルのコミックに登場する『マッドタイタン』サノスの如く、相手をKOで葬り去るのは間違いないだろう。
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上記のように数字だけに注目すれば、タパレスがこれまで喫したKO負けは2度しかない。ただ、これまでの対戦相手に井上のようなボクサーはいなかった。井上が相手をなぎ倒すのはもはやお馴染みの光景、これからも続いていくと思われる。
※本記事は国際版記事(著者: Daniel Yanofsky)を翻訳し、日本向け情報を追記・編集した記事となる。翻訳・編集:石山修二、編集:スポーティングニュース日本語版編集部 神宮泰暁