悪童ネリが年間最高試合級の激闘制し、井上-フルトン戦勝者への挑戦者に名乗り…ホバニシャンとの再戦にも期待

2023-02-20
読了時間 約3分
Cris Esqueda/ Golden Boy Promotions

現地時間2月18日(日本時間19日)、ルイス・ネリ(メキシコ)が、アザト・ホバニシアン(アルメニア)とのWBC世界スーパーバンタム級王座挑戦者決定戦(米カリフォルニア州、フォックスシアター・ポモナ)を11回TKOで制した。5月実現が噂されるWBC・WBO王者スティーブン・フルトン vs. 井上尚弥の勝者と戦う可能性を手にしたが、ネリに対するファンや関係者の評価は賛否両論だ。

名門誌『The Ring』元編集者で、本誌スポーティングニュース格闘技部門副編集長のトム・グレイ(Tom Gray)は、井上との対戦につきまとう『障害』について懸念しつつも、その悪童ネリと、敗れたホバニシャンの試合を「世紀の一戦級」と好評価する──

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老練さみせたネリと好戦的なホバニシャンが激闘

ネリはかつてバンタム級とスーパーバンタム級で世界タイトルを保持していたことがある、左利きのハードパンチャーだ。一方のホバニシャンは、積極的に前進を続ける好戦的なファイターだ。2月18日、両者のスタイルは噛み合い、会場の観衆たちは、まるで世紀の一戦に立ち会っているような瞬間に酔いしれた。

どちらのファイターも何回か大きなダメージを受けた。『クレイジーA』の異名をもつアルメニアのホバニシャンは、ネリのパンチを被弾して顔面に2か所の裂傷を負った。ネリは試合後半に受けた強烈なボディーブローを耐えきった。

しかし、わずかながら余力で優っていたのはネリだった。第10ラウンド後半にネリが放った強烈な左がホバニシャンの顎を捉えた。クレイジーAは顔に笑みを浮かべたが、誰の目にもダメージは明らかだった。そしてネリにも分かっていた。ホバニシャンはこのラウンドを凌いだ。だが、1分間のインターバルで回復することは無理だった。

28歳のネリは老練さを見せた。第11ラウンドが始まっても、慎重にホバニシャンの出方をみた。ネリの左を2発立て続けに顎(あご)に被弾し、さしものタフなホバニシャンも棒立ちとなり、レフリーのレイ・コロナ氏は試合を止めた。

この試合はWBC世界スーパーバンタム級の王座挑戦権を争うものだった。試合前、The Ring誌の各階級挑戦者ランキングで、ネリはスーパーバンタム級の6位、ホバニシャンは4位となっていた。現在、WBO王座とともにこの階級のWB王座を保持しているのはスティーブン・『クールボーイ』・フルトン(米国)である。フルトンは5月に日本の3階級世界王者である井上尚弥(大橋ジム)との対戦が噂されている。

挑戦権を手にしたネリは、試合後のDAZNとのインタビューで、「井上とやりたい。フルトンともだ。世界チャンピオンになる準備はできている。相手が井上であろうと、フルトンであろうと、関係ない」と自信たっぷりに豪語した。

「俺たちはこの試合がノックアウトで決まることを知っていた。アザト(ホバニシャン)はタフなファイターだ。それでもノックアウトで決めることができて、ファンに喜んでもらえたと思う」とも語り、満足げだった。

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日本でこそ開催したいが…ネリ vs. 井上戦への障害

Getty Images

もし、噂される5月の対戦で井上がフルトンに勝てばの話になるが(その保証はまったくないが)、井上とネリの対戦を実現するにはある「障害物」が横たわっている。

ネリは2018年に日本ボクシング・コミッションから永久追放処分を受けているのだ。これは、山中慎介との2回に渡る世界バンタム級タイトル戦で違反行為を繰り返したことによるものだ。2017年8月の第1戦目は4回TKOで終わったが、そのあとでネリが禁止薬物であるジルパテロールを試合前に摂取していたことが明らかになった。6か月後の再戦では、ネリはバンタム級の体重リミットを3パウンド(約1.36kg)超過し、ベルトは剥奪された。それでも行われた試合で山中を2回ノックアウトで沈めた。

井上とネリの対戦が実現すれば、大きな注目を集めることは間違いない。しかし、その会場は日本でなければ、経済的には深刻なデメリットが生じる。アメリカやメキシコで開催するよりも、(山中との遺恨を残した)日本で開催する方がはるかに大きな話題(と収益)を呼ぶはずなのだ。

もちろん、この話はまだ仮説の域を出ない。フルトンは「ザ・モンスター」井上を倒すことに絶対の自信を口にしているのだ。すべては井上とフルトンの試合が決着してからだ。

敗れども評価上昇のホバニシャン。ネリとの再戦に期待

ネリに敗れたホバニシャンはどうなるか。このロサンゼルスを拠点とするアルメニア人ボクサーは、悪童相手に素晴らしいファイトを見せた。25試合目で4敗目を喫したものの、評価はかえって急上昇した。唯一の懸念は、ネリ戦でのダメージが今後この元世界タイトル挑戦者にどのように影響するかだ。ただ、『クレイジーA』は34歳になった今、世界のレベルで戦えることを大きな代償を払って証明したのは事実だ。

「もちろん、この試合結果には失望している。思った通りに戦うことはできなかったが、それがボクシングだ。ネリが良いファイターであることは知っていたが、戦ってみるともっと凄いファイターだった。彼が勝った。それだけだ」と、ホバニシャンは通訳を通して語った。

ネリとホバニシャンの次戦がどうなるにせよ、ファンはそれ(両者による第2戦)を待ち望んでいる。

原文:Luis Nery shines in Fight of the Year contender with Azat Hovhannisyan: Fulton-Inoue winner beckons for Pantera
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本版編集部

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