元対戦相手、トレーナー、そして専門家が『モンスター』井上尚弥の勝利を予想!|4団体統一王座戦

2022-12-11
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Getty Images

間もなく井上尚弥とポール・バトラーの4団体統一戦が行われる。その勝敗の行方は、複数のブックメーカーのオッズを見るに圧倒的に井上有利の数字が並ぶ。では、実際のボクシング関係者はどう見るのか?

元対戦相手、現役ボクサー、トレーナー、そして専門家の井上評を本誌ボクシング部門副編集長トム・グレイ(Tom Gray)が伝える。

 

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WBO世界バンタム級王者ポール・バトラーは、WBAスーパー・WBC・IBF、そして『The Ring』誌の同級世界王者である井上尚弥と拳を交えるところまで這い上がってきた。両者の対戦は12月13日(火)に東京の有明アリーナで行われる。大方の直前予想は過去とあまり変わらない。

この4団体統一王座戦において、バトラー(34勝2敗、15KO)は圧倒的な『負け犬=アンダードッグ』である。オッズメーカー、ファン、専門家と呼ばれる人々、ファイター、トレーナーらのほとんどが、この礼儀正しい英国人テクニシャンには望みは少ないと見ている。チェシャー州エルズミア・ポート出身のバトラーは、もちろん自分を信じている。このキャリア最大のチャレンジに向けて、完璧なコンディションを作り上げてきた。世界戦に挑むファイターがするべきことはやってきている。

だが、井上有利の評判は揺るがない。日本が生んだこの29歳の強打者は、3階級制覇世界王者であり、23勝0敗(20KO)の戦績を誇る。『The Ring』誌は現在この井上をパウンド・フォー・パウンド2位にランク付けている(6月には1位をとっていた)。そして井上はさらに成長を続けている。

いまやボクシング界のなかで井上に否定的な言動をする人物を探すことは非常に困難だ。『モンスター』と呼ばれる井上について、スポーティングニュースはありとあらゆるボクシング関係者に話を聞いてみた。

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ダレン・バーカー氏

元IBFミドル級世界王者

バーカー氏は井上対ノニト・ドネアの1戦目についてコメントした。

(ドネアとの第1戦)は井上にとって初めての接戦と呼べる試合だった。そして井上は実に素晴らしいファイターだった。井上の冷静な態度と正確なパンチにはとても感心したよ。パンチが的を外すことがまったくなかった。井上はほかのことに気をとられるということがない。私は子どもの頃に父親から「心配し過ぎる」と言われたよ。すぐに対戦相手のこととか、自分と比べてどちらが強いかみたいなこと考えてしまう。だからこそ井上は称賛するしかないよ。

ドネアとの第1戦は大事な試合だった。私たちはそれまでに井上がジェイミー・マクドネルやエマヌエル・ロドリゲスといった強敵を1ラウンドか2ラウンドでノックアウトするところを見ていたけど、ドネアはそう簡単にはいかない相手だった。ほかの対戦者とは格が違ったね。15試合とか20試合に勝ったファイターでも、強敵と対戦するとたちまち足踏みしてしまうファイターは多い。井上はそうではなかった。何よりも精神的に優れていた。勇気、そして勝利への意志、これらは教えられるものではないよ。

世界中のボクシング界を見渡してみても、ポール・バトラーにとって、これ以上厳しい対戦相手はいないだろうね。

ノニト・ドネア

元4階級制覇世界王者

ドネアは井上と2度対戦している。2019年に12回判定負け、そして2022年6月は2回TKO負け

井上はポジショニングに秀でている。常に有利なポジションを取る。それに気がつかないでいると、井上がパワーを最大に高めたパンチを食らうことになる。私が再戦で負けたのもそのせいだよ。井上のポジションに注意すれば、あるいは次の動きを読めるかもしれない。だが再戦のときの私はあまりにも注意力が足りないファイターだった。ただ自分のパンチを当てることだけに気をとられていたから、井上にはそれを見逃してはくれなかった。

バトラーに対しても井上は同じスタイルを貫くだろうね。それにバトラーの顎はけっして打たれ強くないことも分かっている。井上のパンチは本当に強力だよ。さっき言ったように、バトラーが井上のポジションに注意すれば、その威力を半減させることも可能だ。そうすればバトラーにも勝機があるだろう。

デイブ・コールドウェル氏

トレーナー

コールドウェル氏は2018年5月に井上から1回TKO負けを喫したジェイミー・マクドネルのチーフ・セコンドを務めた。

ジェイミーが井上に勝てたとは言うわけではないが、ジェイミーは戦う前から減量苦で自分に負けていた。勝つためにリングに向かうべきだが、ときには自分の選手を危険から守るしかないと思い知ることもある。あのときの私たちがそうだった。ひたすらジェイミーが生き延びることだけを願うしかなかった。それほど減量がきつかったのだ。

バトラーはその心配はないだろう。経験のあるチャンピオンだしね。だけど、残念ながら、バトラーに勝ち目があるとは思わない。バトラーは井上がこれまでに対戦してきた相手以上のボクサーではないよ。井上が油断しない限り、バトラーが勝つことはないだろう。バトラーはジョー・ギャラガーという素晴らしいコーチに師事している。ギャラガーはとても几帳面で、緻密な作戦を立てる。ファイターに信頼されて、その作戦を守らせることにも秀でている。

しかし、ボクシングにはどうしても敵わない強敵というものが存在する。バトラーのパンチには井上を止めるほどの威力はないし、そもそも井上は弱点がない万能なボクサーだ。ボディ攻撃は素晴らしいし、非常に多彩なパンチを持っている。フットワークも抜群だから、距離をとって戦うこともできる。

ポール・バトラーにとって井上はあまりにも高い壁だよ。

マイケル・ローゼンタール氏

元『The Ring』誌編集長

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井上尚弥は、すでに日本ボクシング史上最高のボクサーになっているかもしれない。3階級で主要な世界タイトルを制しているし、いくつかのパウンド・フォー・パウンド格付けで1位になっている。日本で井上に比肩する存在と言えば、ファイティング原田しか思いつかないな。あの偉大なエデル・ジョフレを2度破ったこともある、殿堂入りボクサーだ。

原田を井上より上に置くとすれば、その理由はただひとつ、1960年代(WBA・WBCの主要2団体時代)に初めてバンタム級の世界統一王者になったことだ。だが、それも今回の試合で変わるかもしれない。井上はすでに5つあるバンタム級のメジャータイトルのうち4つを保持している(『The Ring』誌制定タイトルを含む)。そして残るひとつのタイトルホルダーと対戦するわけだからね。井上が勝てば、(現代の)バンタム級の統一世界王者として原田と並ぶことになる。そうなると井上が日本ボクシング史上最高選手であることに異議を唱えるのは難しくなるね。

それに井上にはさらに先がある。まだ29歳だから、あと何年かは全盛期でいられるはずだ。日本だけではなく、世界でも史上最高ボクサーのひとりに数えられることになるかもしれない。

カール・フランプトン氏

元2階級制覇世界王者

フランプトン氏は井上対エマヌエル・ロドリゲス戦についてコメントした。

井上は信じがたいファイターだ。ハンサムな男で、子どもっぽくさえ見える。だけど最初の印象の見た目に騙されてはいけない。1ラウンドの半分も戦えば、すぐにそのことは分かるだろうけどね。

井上は万能だ。ドネアとの第1戦で、強敵にも対応できることも分かった。顎は打たれ強いし、パンチのパワー、タイミング、スピード、爆発力、どれをとってもずば抜けている。それに賢い。井上が本気を出せば、誰にも止められないよ。本当に特別な、何十年にひとりという逸材だ。

バトラーは大好きなボクサーだ。だけどもう若くはない。これは大きなチャンスだけど、バトラーが勝つ見込みはたとえ地元のエコー・アリーナ(リバープール)でやったとしても少ないだろうね。日本での試合になると、さらに厳しい状況になる。いくら日本がフェアプレイの精神をもっていてもね。バトラーが戦うのはパウンド・フォー・パウンド最強の男だ。挑戦することには勇気がいる。バトラーがたくさんお金を貰えることを願うよ。

ジェイソン・モロニー

バンタム級世界タイトル挑戦者

モロニ―は2020年10月に井上と対戦し、7回TKOで敗れた

井上は特別なファイターだ。井上戦のリングに上がる前からそれは分かっていた。ずっとファンだったからね。その井上と同じリングに立てるのはエキサイティングだったな。とても大きなチャレンジでもあった。もちろん試合結果には満足していない。それでもベストを尽くしたし、井上はパウンド・フォー・パウンド最強の男だ。すごく速く、爆発的で、そしてパワフルだ。井上に欠けているものは何もないよ。誰と対戦するにしても、井上が負けることを想像できない。

井上は足を使って距離をとるのも上手い。あの足の速さには驚いたな。間合いを詰めるのは難しかった。もっと接近して戦いたかったし、プレッシャーをかけたかった。だけど井上はすぐに離れて、そして自分の距離から強力なパンチを打ってくる。パンチのスピードは抜群に速いし、もちろんパワーもすごい。どこにも付け入る隙がないよ。

井上は来週、統一王者になるだろう。それからは階級を上げるだろうし、多分そこでも敵はいないだろう。122パウンド(スーパーバンタム級)でも統一王者になるだろうね。

トリス・ディクソン氏

ボクシング・ライター

井上はパウンド・フォー・パウンド最強だ。これまでにキャリア最高と呼べるような試合はまだしていないが、要するに1980年代後半のマイク・タイソンのようなものだ。井上が誰と戦うかは問題ではなく、どのように勝つかが問題なのだ。

ジェイミー・マクドネルのように減量苦を言い訳にするボクサーもいる。だけどそれは問題にならない。対戦相手のコンディションがどれほど良くても、井上に勝てるボクサーはどこにもいない。井上はそれほどまでに超越した存在なのだ。敗戦したボクサーの言い訳に耳を傾けるファンもいる。しかし、井上に関してはそうはならない。たとえ強力な腕が4本あっても、井上には勝てない。

シャンテル・キャメロン

女子世界スーパーライト級統一王者

井上のニックネームは『ザ・モンスター』だし、それは彼に相応しい。ポール・バトラーとは同じイギリス出身だから、バトラーに勝ってほしいけど、井上が負けることは想像できない。井上のスピード、パワー、正確さ、そして爆発力、どれも驚異的だもの。見ていて、とても楽しいしね。階級をまた上げるかもしれないけど、そこでも成功すると思う。それほどまでに素晴らしいボクサーだから。122パウンド(スーパーバンタム級)でも井上のパワーは無敵だと思う。

カッレ・ザウアーランド氏

ワールドボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)の共同創設者

ザウアーランド氏は井上が戦った3試合をプロモートした:ファン・カルロス・パヤノ、ロドリゲス、そしてドネアである。

井上はパウンド・フォー・パウンド、この地球上で最強のパンチを持ったボクサーだ。あの階級でこれまでに井上のような強力なパンチの持ち主は存在しなかった。とても冷静で、しかも外見は優しい。「表紙を見て本を判断するな」という教訓のよい見本だね。あの外見から井上のパワーを想像することは難しい。控室でウォームアップをしているところから、私が見てきたほかのボクサーとは違っていた。リングの外では紳士的で、真のプロフェッショナルだ。そしてパウンド・フォー・パウンドでも世界でトップ3、4人のなかに入るボクサーだと思う。

注釈:ここでコメントした全員がバトラー戦で井上のKO勝利を予想している。

原文:Naoya Inoue vs. Paul Butler: Former opponents, trainers, and experts believe in The Monster
著者:Tom Gray
翻訳:角谷剛


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