日本時間8月21日朝、サウジアラビア・ジェッダで、WBAスーパー・IBF・WBO世界ヘビー級統一王者のオレクサンドル・ウシク(ウクライナ)が、前王者のアンソニー・ジョシュア(英国)の再戦を12ラウンド、2-1のスプリットデシジョンで判定勝ちで退けた。試合直後からボクシング界から様々なリアクションが見られたが、敗者ジョシュアの不可解言動には理解を示す声が届いている。ダニエル・ヤノフスキー(Daniel Yanofsky)が伝える。
ボクシング界から様々な反応が集まったウシクvsジョシュアの結末
ヘビー級トップ戦線へのオレクサンドル・ウシクの影響力は健在だ。
現地サウジアラビアでの土曜日の夜、ウシクはアンソニー・ジョシュアをスプリットデシジョンで破り、2021年9月にジョシュアから獲得したWBAスーパー・IBF・WBOおよびIBOのタイトルを初防衛。空位となっていた名門誌『The Ring』の同級タイトルも手に入れた。前王者ジョシュアは距離を取ってのスタンスで、序盤を優勢に進めた瞬間もあった。だが、その戦術はウクライナのチャンピオンを倒すには十分ではなかった。
試合直後、ジョシュアはマイクをつかみ、勝者スピーチを乗っ取って独演会を開始した。ジョシュアは、敗戦の怒りとないまぜの感情でウシク(とウクライナ)を称賛するという奇妙で不可解な言動におよんだ。
「ウシク、申し訳ない。私はこいつ(背中にかけたウクライナ国旗)をくすねてしまった。ただ、これが私たちが情熱を注いだ理由なんだよな」とジョシュアは冒頭で言い放ち、ロシアの軍事侵攻によって苦しむウクライナの民衆への敬意を妙な言い回しで示した。王者ウシクの実力についても、「私が苦戦を強いられたレベルだからね。我々の世界のヘビー級チャンピオンとして彼に拍手を送ってくれよ」と保身しつつ持ち上げた。
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ジョシュアの負け惜しみを滲ませた称賛はともかくとして、この夜のウシクのファイトは、とくに後半のラウンドの内容がSNS上でボクサーや業界関係者から称賛された。一方、ジョシュアのパフォーマンスについてもSNSで言及され、試合後の不可解なスピーチは驚きをもって受け止められた。
以下がボクシング界のTwitterでの反応となる。
テレンス・クロフォード(元世界スーパーライト級4団体統一王者)
「ウシクは本当にうまくボクシングをこなしたな。最後の数ラウンドはとくにね。彼は私に勝利をもたらしてくれた(※ベッティングで勝てたという意味合い?)」
デビン・ヘイニー(現世界ライト級4団体統一王者)
「AJはいつまでアウトボクシングを続けるんだ?」(体格で優るジョシュアがその優位性を使わず、ウシクに接近戦に持ち込まないことに対して)
ルー・ディベラ(プロモーター、ディベラ・エンターテイメント社代表)
「ウシクは史上最高だけど、AJは今でも世界最高の4人(ウシク、ジョシュア、タイソン・フューリー、デオンテイ・ワイルダー)のヘビー級のひとりに変わりはない。 ボクシング界はもうひとつの戦いへの道を開く必要がある。ワイルダーは(10月の再起戦でロバート)ヘレニウスを打ち負かさないといけない。ワイルダー vs AJ以上に価値と意味のある試合なんてないのだから」
ショーン・ポーター(元WBA/IBF世界ウェルター級王者)
「良いラウンドだった! フィジカルが勝利の鍵になるだろうね。ジョシュア5、ウシク4ってとこだな」(試合終盤、ジョシュアが体格で押せば勝てると予想するツイート)
スティーブン・エスピノーザ(米テレビ局Showtimeスポーツ部門代表)
「改善したからといって、勝てるわけではない」(初戦よりは善戦したジョシュアに対して?)
ロージー・ペレス(大の格闘技ファンとして知られる米国の女優・ダンサー)
「素晴らしい戦いでしたね。さて、スコアカードが気になるわね。ジャッジがどう言おうと、私はウシクよ!」(12ラウンド終了に合わせて)
キム・クラベル(現WBC女子世界ライトフライ級王者)
「なんて華麗なパフォーマンスなのウシク!!! 私は彼の足さばきや手さばき、彼の1-2-3(コンビネーション)、彼の構え方が大好き!いい試合だったわ! 」
クリスティナ・ポンチャー(ESPNボクシングコメンテーター・レポーター)
「ウシクが(後半の)決勝ラウンドを制すようになったのは、AJを圧倒した9ラウンド後からよね。 IMO(私が思うに)それが彼の勝利の決定打になったのよ」(ウシクの勝因について)
テディ・アトラス(トレーナー・ESPN解説者)
「スプリットデシジョンだと???? そのジャッジのライセンスを剥奪して、二度とスコアカードに触らせるんじゃない!!」(アトラス自身はウシク圧勝のスコアをつけていたせいか)
デオンテイ・ワイルダー(前WBC世界ヘビー級王者)
「彼ら(ジョシュアとハーン?)は、彼(ジョシュア)が勝てる見込みがないことを知っていたので、保険で私を対戦相手にしようとしていた。これは厳密にはビジネスであって、スポーツとは違うんだ」(ウシクvsジョシュアの巨額再戦が決まる前のやりとりを示唆して?)
クラリッサ・シールド(2大会連続五輪金メダル、世界3階級女子王者)
「ひえぇ、私たちはボクシングで毎日何か新しいものを目撃してるわね」(ジョシュアの謎の不可解言動について)
再びテディ・アトラス
「Fワード攻撃はおいといて、最終的にジョシュアは善意を持って自身の人間性を示した。だけど、彼がどんな古いファイターたちの名前を並べ立てたところで、負けは負けなんだよ」(ジョシュアが過去のヘビー級レジェンドたちよりも重い身体であることを敗戦の言い訳にしたことについて)
ジョー・ジョイス(リオ五輪スーパーヘビー級銀メダル、遅咲きの英国人ヘビー級ファイター)
「...」(ジョシュアの敗戦と不可解言動について。その後、「私たちのようなことができる人は、そう多くはない」とジョシュア擁護ともとれるツイートをした)
エリー・スコットニー(現WBA女子インターコンチネンタル・スーパーバンタム級王者)
「AJはここ数年、英国のボクシングを牽引し、私たちに最高の夜をいくつか提供してくれた。P4P(パウンドフォーパンド)の偉大な選手であることは明白。彼はキャリアを通して証明してきた。これからも最高の夜を届け続けてくれるに違いないわ👏🏼」(ジョシュアへの批判の声の高まりを感じて?)
再びエリー・スコットニー
「AJの(感情的な)爆発は、非常に長い間蓄積されてきたもの(プレシャーやストレスが原因)だと考えてください」(ジョシュアの不可解言動への理解を促すツイート)
またしてもテディ・アトラス
「(昨年9月の)初戦にはなかったビッグ(優勢な)ラウンドがあったことで、ジョシュアは自分が勝ったという感触を得たのだろうが、彼は(ウシクに勝てないという)真実を知っていたはずだ。そして、海の向こうの素晴らしいファンも真実を理解していることを願う」(勝てなかったことをジョシュア自身や欧州のファンが納得していることを願うツイート)
トニー・ベリュー(DAZN英国ボクシング実況、元WBC世界クルーザー級王者、2018年にウシクに敗れて引退)
「試合後のインタビューだけでボクサーを判断しないでくれ!どれだけの感情と疲労が君(ジョシュア)に作用しているのか、私には計り知れない。AJとは長い付き合いだけど、彼は礼儀正しく、正直で、誰に対しても誠実なやつなんだ。(本来の)彼はきっと戻ってきます.. 👊」(ジョシュアの不可解言動に批判的な声に対して)
フランション・クルーズ・デザーン(現WBC・WBO女子世界スーパーミドル級王者)
「ボクシングって肉体的にも精神的にもタフなスポーツなのよ😪 王冠をかぶった頭は重くなるから👑」(ジョシュアの不可解言動への理解を示したツイート)
原文:Boxing world reacts to Oleksandr Usyk's win over Anthony Joshua in rematch and Joshua's post-fight speech
翻訳・編集:スポーティングニュース日本版編集部
※当記事は、オリジナル記事を翻訳し、一部追加情報を加えた日本版記事となる。