【独占取材】井上尚弥の宿敵ドネアが4団体統一戦を予想 バトラーに勝機はあるのか?

2022-12-12
読了時間 約3分
Naoki Fukuda

12月13日、WBO世界バンタム級王者ポール・バトラーは、世界から『モンスター』として恐れられるWBAスーパー・WBC・IBF同級王者の井上尚弥に立ち向かう。多くのファンや専門家は、バトラーの勝利のチャンスは、ヘビに対するハムスターと同じくらいの確率だと辛辣な意見を交わしている。そうした声があるなか、井上のかつてのライバル、ノニト・ドネアはどう予想するのか。

ドネアを独占取材した本誌ボクシング部門副編集長のトム・グレイ(Tom Gray)が、ドネアの意外な予想を伝える。

 

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井上尚弥を追い詰めた『フィリピンの閃光』が語るカギは「ポジショニング」

現在29歳の井上は、3階級制覇の世界王者であり、今日の世界で最も優れたファイターのひとりだスピード、パワー、テクニックを兼ね備えたこの日本のスターは、23連勝、20ノックアウトという快挙を成し遂げている。井上には特徴的な動きはないため、対戦相手は恐れる理由がないように見える。だが、井上は、どんなパンチでも相手を打ちのめすことができる。つまり基本的な挙動が破壊的なのだ。それが『モンスター』と呼ばれる所以でもある。

そんな『モンスター』に試練があったとすれば過去に一度だけだろう。2019年11月7日、『ワールドボクシングスーパーシリーズ』バンタム級トーナメント決勝で、井上は4階級制覇の世界チャンピオンであり、将来の殿堂入りを約束されたフィリピンの英雄、ノニト・ドネアと初めて対戦した。当時から両者は友好的なライバル関係にあった。井上は12ラウンドのユナニマスディシジョン(全会一致)で勝利したが、第2ラウンドのドネアの左フックの衝撃により動揺し、長期戦を強いられた。額をカットし、眼窩骨を骨折するほどの痛手を負った。

井上は2022年6月の再戦において、ドネアを2回TKOで破ったが、この『フィリピンの閃光』ほど、井上を追い込んだファイターはいない。フライ級からスーパーバンタム(ジュニア・フェザー)級まで世界タイトルを獲得してきたドネアは、12月上旬の『スポーティングニュース』の取材に、「井上のポジションに注意する必要がある」と語った。

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「彼(井上)は、自分自身をうまくポジショニングする傾向があり、すべてのパワーを最大限に発揮する機会を試みてくる。そして、そうなってしまえば、私が(再戦で)餌食になったように、対戦者が破壊される状況と言えます。だから、彼のポジショニングに警戒している際、彼が何をしようとしているのかを理解することが重要です」

「(2019年の)最初の戦いで、私は彼のパンチのペースに飲まれないように、自分自身を慎重にポジショニングするよう心がけました。それが私のパンチがより多くヒットした理由です。あの試合で私は彼よりも自分のポジション取りが上手くいったので、あらゆるアドバンテージを得ることができました。ゲームプラン(再戦でインファイトを挑んでしまったように)に固執していたら、戦いの結末に大きな違いがあったと思います(判定負けではなく、KO負けを喫していた?)」

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もしバトラーがジャブに徹し、横方向の動きを徹底して守れば…

現役を続行するドネアはボクシングシーンをつぶさにチェックしており、バトラーの資質をよく知っている。バトラーは今年の4月、ジョナス・スルタンに全会一致の判定で勝利し、WBO世界バンタム級暫定タイトルを獲得した(のちに、ジョン・リール・カシメロのタイトル剥奪により、正規王者に昇格した)。

「もしポールがジャブに徹し、横方向の動きを徹底して守れば、(井上が)彼を捕まえるのは難しいかもしれない」とドネアは予想した。

「(バトラー)彼はスルタンと戦った際、常に動き続け、素晴らしい仕事をしていたと思いました。彼はジャブと(横の)動きを忠実に守っていたので、(スタイル的にも)おそらく(井上戦でも)より良いチャンスを作れるはずです。ただ、それがすべてです。あとは彼がどれほどプランを維持できるかでしょうね」

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「井上が(バトラーの射程より)後ろに引いて、無理矢理(懐に)突っ込んできたら? 私とは違い、井上はバトラーの戦法を警戒するとは思えない。井上が無理矢理突っ込めば(強打スポットに)当然リーチするが、相手(バトラー)にとってもカウンターしやすい。井上はスピードファイターであるにもかかわらず、足を踏み入れて、コンビネーションが終わるまでそのポジションに固執し、それから前進または後退する傾向がある。結果的に、彼のパンチとパンチの間にはラグがあり、バトラーが自由に動けるようなチャンスが生まれます。もし彼(バトラー)がそれを巧みに突けば、ジャッジを驚かせ、好意的に受け取らせる可能性が十分にあります」

しかし、こうしたチャンスを予想した上でも、ドネアは井上のKOの勝利を選ぶことを避けられないと感じていた。「バトラーは、このような力(井上の破壊的パンチに)に耐えることができるアゴを持っている男ではないことを私たちは知っています」とドネアは不吉に述べている。残る可能性は井上との間合いの維持だと示唆した。

「もし彼が井上のパンチを浴びたとしたら、それは非常に強力なパンチだ。井上の動きを読むポジショニングができれば威力は半減し、生き残る可能性は高まるかもしれない」

『アンダードッグ』バトラーは、ドネアが指摘したように、徹底したアウトボクシングを守ることで奇跡の勝利をつかめるのか。一方、日本が誇る『モンスター』が勝てば、1965年5月から1968年2月までWBA・WBC王者に君臨した伝説のファイティング原田以来の『比類なき』バンタム級チャンピオンとなる。

この決戦は、東京の有明アリーナで行われ、日本では『dTV』と『ひかりTV』で独占配信される。


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