【ボクシング】判定の採点方法を徹底解説:ルール、ポイントシステム、ジャッジを理解するためのガイド…悪名高い不可解判定も紹介

2022-12-08
読了時間 約3分

ボクシングの試合を観るなかで、KO勝負であれば疑問を挟む余地はないが、いざ判定となると、納得のスコアもあれば、どうしてそんなスコアになったのかと疑念が過ることもあるだろう。果たしてジャッジ(副審)たちは、何を基準に評価し、どうスコアをつけているのか。

物議を醸した悪名高い不可解判定も含め、決着ルールや採点方法など、本誌格闘技エキスパートのダニエル・ヤノフスキー(Daniel Yanofsky)記者が徹底解説する。

どのように採点するのか? ポイントシステムは?

ボクシングの試合ほど多くのアクションが伴うものはそう多くはない。ボクサーたちが激しくパンチを交換し、観客は熱狂する。ノックアウトで試合が決まると会場は大騒ぎになる。

しかし、試合が規定ラウンドを終えたときは少し様子が異なる。とくに接戦だったとき、ジャッジはどのように勝者を決めるのだろうか。あるいは引き分けを宣するのだろうか。判定はときには称賛され、ときにはファンに多くの疑惑を抱かせる。

ボクシングの長い歴史では数多くの名試合が行われてきたが、なかには首を傾げざるを得なかった判定結果も含まれる。

スポーティングニュースでは、ジャッジたちがどのように採点するのか、そしてポイントシステムがどのようなものであるかをまとめてみた。

ボクシングのルールとは

つい最近になって北米ボクシング・コミッション協会がボクシングのガイドラインを改訂したが、1800年代後半に成立した「クインズベリー・ルール」が、現在でもボクシングのルールの基礎となっている。

ボクシングの試合は1ラウンド3分間で行われる(女性部門は2分間)。ラウンド数はファイターの競技レベルによって定められる。以前は最大15ラウンドであったが、現在では最大12ラウンドとなっている(女性は10ラウンド)。

各ラウンドは以下に基づいて採点される:

  • 有効な攻撃:対戦相手にパンチをヒットさせ、かつ対戦相手からの強いパンチを避けること。
    • パンチを避けるうえで、防御も重要な要素となる。
    • 有効なクリーンヒットの数が主な要素である。いくらファイターがコンビネーションを用いた猛攻撃をかけても、対戦相手の防御が巧みのときは不発に終わることもある。
       
  • 試合態度:試合を通して強い意志とスタイルを保つこと。

ボクシングの試合勝敗はどのように決定されるか

いくつかの異なる試合の終わり方がある。最も明白な結論の種類には以下が含まれる。判定裁決以外の判断は、主審が担う。

  • 判定:規定ラウンドが終了したとき、ジャッジたちが勝者を決めることを求められる。
  • ノックアウト(KO)/ テクニカル・ノックアウト(TKO):ファイターがノックアウトあるいはノックダウンによって試合続行不可能となったとき。TKOとは、ファイターが防御できないか、あるいはダメージが大きすぎるとレフリーが判断したときに試合を止めることである。
  • 棄権:ファイターもしくはセコンド陣が試合続行を放棄すること。
  • ドクターストップ:医療専門家がファイターの試合続行を不可とすること。深刻な出血や怪我、それ以外の緊急事態のときに下される。

試合がノックアウトで終わらなかったときは、ジャッジ(副審)たちの採点が集計され、いわゆる判定裁決になる。採点方式に基づき、いくつかの異なる結果が生まれる。

  • 全ジャッジ一致(ユナニマス)判定勝利:3人のジャッジ全員があるファイターの勝利を支持すること(例:10-9, 10-9, 10-9)。
  • 優勢(マジョリティ)判定勝利:2人のジャッジがあるファイターの勝利を支持し、もうひとりのジャッジが引き分けを宣したとき。
  • スプリット判定勝利:2人のジャッジがあるファイターの勝利を支持し、もうひとりのジャッジが別のファイターを支持したとき。
  • 優勢(マジョリティ)判定引き分け:2人のジャッジが引き分けを宣し、もうひとりのジャッジがあるファイターの勝利を支持したとき。
  • スプリット判定引き分け:ひとりのジャッジがあるファイターの勝利を支持し、ひとりのジャッジが別のファイターの勝利を支持し、3人目のジャッジが引き分けを宣したとき。

ボクシングの試合における採点方式

10点満点によって採点される。重大な反則が無い限り、ジャッジは各ラウンドごとの勝者を決めなくてはならない。ラウンドの勝者には10点が与えられる。そのラウンドで形勢不利だったファイターには9点が与えられ、スコアは10-9となる。

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あるファイターが圧倒的に優勢だったときにジャッジは10-8のスコアをつける。ノックダウンがあったときも10-8になることがある。

ボクシングの試合におけるジャッジの人数

通常3人のジャッジによって試合が採点される。アスレチック・コミッション(ネバダ州アスレチック・コミッション、ニューヨーク州アスレチック・コミッション、など)がジャッジを任命する。

ジャッジとファイターと同じ出身地である場合もある。しかし、タイトルマッチの場合は中立地からジャッジが選ばれることが多い。あるファイターがアメリカ出身で、その対戦相手がイギリス出身だとしたら、ジャッジの多くはカナダ、メキシコ、そしてフランスの出身者になる。もちろん、贔屓判定を避けるためだ。

ジャッジになるには選手同様にライセンスが必要である。ジャッジ希望者は各地域の競技統括団体に登録することになる。ボクシングに関する豊富な知識が求められることは言うまでもない。

アメリカの場合、ジャッジ希望者は北米ボクシング・コミッション協会の採点方式に精通し、そして米国ボクシング連盟あるいは州レベルのボクシング・コミッションに登録しなくてはならない。

米国ボクシング連盟ではジャッジをいくつかのレベルに分けている。希望者は毎年の登録と資格テスト受験が義務付けられる。テストに合格すると、米国ボクシング連盟の一員となることができる。

ボクシング史において物議を醸した判定の例

ボクシングの人気を高めた名試合がある一方、ボクシングの名誉を失墜させたケースもある。物議を醸した試合結果がしばしば不可解な判定によって生まれてきた。

サウル・アルバレスがゲンナジー・ゴロフキンと対戦した2017年9月の最初の試合がその最たる例だ。この試合ではゴロフキンが優勢だったように思われたが、判定は引き分けだった。コンピューター採点システム『CompuBox』によると、ゴロフキンの有効打は703発中218発(ヒット率31%)であり、アルバレスのそれは505発中169発(ヒット率33%)だった。ジャッジのひとりだったイブ・モレッティ氏は115-113でゴロフキンを支持し、ドン・トレラ氏は114-114の引き分けだとした。

かねてから問題のあるジャッジとして知られていたアデレード・バード氏は118-110でアルバレスを支持した。この判定はボクシング界を揺るがせた。だが、ネバダ州アスレチック・コミッションの事務局長であるボブ・ベネット氏はバード氏の判定を擁護した。

「アデレード(バード)は優れたジャッジです。彼女はこれまでに115ものタイトルマッチを判定した経験があります。私たちのトレーニングにも熱心に参加しています。若いジャッジたちからの人望も厚く、彼らに多くの良き影響を与えています。私自身もジャッジだった2年半の間、そうした若いジャッジのひとりでした。残念なことに、今夜のアデレードは少しおかしかったようです。それは明らかです。言い訳をしようとは思いません。彼女が優れたジャッジであるという私の考えに変わりはありませんが、しかし、誰にでも調子が悪い日というものはあります」とベネット氏は米スポーツ専門局『ESPN』に語った。

1993年にはパーネル・ウィテカーがフリオ・セサール・チャベスとWBC世界ウェルター級タイトルマッチを戦った。ウィテカーの有効打数は311でチャベスの220を大きく引き離し、ジャブのヒット数は130発だったと専門誌『The Ring』は伝えている。しかし、判定の結果がアナウンスされると、ひとりのジャッジがウィテカーを支持し、残りの2人が下した採点は115-115の引き分けだった。優勢判定引き分けとなった結果には多くの反発が巻き起こり、2人のジャッジに関して様々な憶測がなされた。

最も物議を醸した判定のひとつは、1998年のソウル・オリンピックで起きた。ロイ・ジョーンズ・ジュニアが韓国の朴時憲(パク・シホン)に決勝戦で敗れた試合だ。ジョーンズは86発の有効打をヒットし、朴のそれは32発でしかなかった。それにもかかわらず、判定は2-3で朴の勝利となった。

その後の調査でジャッジたちが試合前に韓国の関係者たちからワインと食事の接待を受けていたことが判明したが、そのことが判定の主要因となったかどうかは不明とされた。2人のジャッジが資格停止処分を受けたが、判定が覆ることはなかった。後年の五輪でも不可解判定が度々報じられ、リオ五輪後、アマチュア統括団体のAIBA(国際ボクシング協会、2021年にIBAに改名)はIOCから除名され、現在も排除されている。

原文:Boxing scoring, explained: A guide to understanding the rules, points system and judges
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本版編集部


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