シーズンオフも主役だった巨人はどこへ行ったのか。2022年は「喝」の連続だった。日本一から遠ざかって10年、球団史上最大のピンチである。
静かなるチーム再建
秋季キャンプを終えたとき、原辰徳監督は「キャンプのMVPは川相(昌弘)コーチ」と総括した。現在のチーム状況を物語るコメントに思えた。ベストナインに一人も選出されなかったことも現状を示したといえた。
球界を見ると、FA宣言して西武からオリックスに移籍した森友哉が大きな話題になり、MVPとなったヤクルトの村上宗隆、オリックスの山本由伸などがメディアで突出した。巨人の選手では新人王に選ばれた大勢が顔を出したぐらいだった。
巨人がニュースになったのは本当に少なかった。
- 長野久義(広島)松田宣浩(ソフトバンク)のベテランの獲得
- 主将を坂本勇人から岡本和真に変えた
- 背中のネームを外した新しいユニフォームの採用
とにかく地味である。
ライバル阪神の賑やかさ
対照的に岡田彰布が監督にカムバックした阪神は話題満載だった。優勝を表現した「アレ」が注目され、ことあるごとに登場している。
ドラフト会議で人気ナンバーワンだった高松商の浅野翔吾を、巨人と阪神が競り合ったことはちょっとした話題になった。くじ引きで原が岡田に勝って獲得を決めたものの、その後はしぼんだ。
巨人、阪神といえば、だれもが知っている“伝統の一戦”である。名勝負を数多く生んだ。ところが最近は阪神の注目度が高い。今季のキャンプで矢野耀大監督が「今季限りで辞める」発言はシーズンを通して取り上げられた。
矢野は3位で退陣。原はそれを持ち出され、4位なのになぜ辞めない、と批判された。そんな状態のときに阪神は岡田が戻って来たし、その言動がユニークでメディアを喜ばせている。
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10年もごぶさたの日本一
巨人の歴代の監督たちは「リーグ優勝しても日本シリーズで負けたら叱られる。それが巨人」と語っている。たしかに日本一を逃すと、長嶋茂雄でも王貞治でも負けた監督は元気がなかった。
V9監督の川上哲治は「リーグ戦の優勝の方がはるかに大変。日本シリーズは7試合制の超短期決戦だから比較にならない」と言ったが、球団は「日本一こそ巨人」との姿勢は崩さなかった。
巨人が日本一になったのは12年のことである。19年と20年はリーグ連覇したものの、日本シリーズでは2年ともソフトバンクに4タテを食った。8連敗というみじめな結果がチームを覆っている。それを原監督は突き付けられている。
このオフは派手な実力選手をFAで手に入れることもままならないようである。37歳の長野、39歳の松田を獲得したときは「チームに喝を入れる」との声が大きかった。常時出場は無理だし、代打としての期待だろう。
「巨人の時代」は変わったのか
プロ野球が巨人を中心に動いてきたことは事実である。巨人戦は観客が多く、ほぼ満員になった。ところが近年は違う。巨人戦の入場券が街中のチケット売り場で値引きされて売られたこともあった。
セ・パ両リーグの観客動員を見ても、各球団の努力で安定している。
22年のセは阪神が261万人を集めトップ。巨人は231万人で続いたが、首位ではなかった。広島196万人、中日180万人、DeNA177万人、優勝したヤクルトは161万人だった。
パはソフトバンクが224万人と頭抜けている。ロッテ146万人、オリックス141万人、楽天133万人、日本ハム129万人、西武121万人。いずれも100万人台をキープしており、100万人を目標にしていた以前と比べると、大きく進歩している。
かつてパの球団は観客動員がままならず、巨人とのオープン戦が貴重な収入源になっていた。「巨人サマ」だったのである。しかし、現在は一人歩きできるまでになった。新聞、ラジオ・テレビからITと時代は変わり、各球団が独自の観客動員策を練っている。
そういう意味でも巨人一辺倒の球界ではなくなった。巨人にとって現在は、球団史上最大のピンチといえる。盟主の地位を守るには勝ち、日本一になることである。23年は原監督の手腕が問われる。
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