投打が噛み合い日本一に輝いたヤクルト、奥川・村上ら若手も奮闘|プロ野球2021振り返り・2022展望

2022-01-18
読了時間 約4分

開幕3連敗スタートも勝負所で勝ち切りリーグ制覇

[順位]1位(日本一)
[勝敗]73勝52敗18分
[勝率].584

2021年シーズン、ヤクルトは6年振りのセ・リーグ優勝を飾った。クライマックス・シリーズも無敗で勝ち抜くと、日本シリーズではオリックスを破り20年振りとなる日本一に輝いた。2年連続の最下位で開幕前の下馬評は低かったものの、それを見事に覆した。

開幕から阪神に3連敗を喫する先行き不安な船出となったが、3月・4月を14勝10敗4分とすぐに巻き返す。5月以降も落ち込むことなく、前半戦を首位・阪神から2.5ゲーム差、42勝32敗9分の貯金10で終えた。後半戦に入ると勢いをさらに増し、9月14日の阪神戦から9月28日のDeNA戦までの13試合で、4つの引き分けを挟み9連勝。13試合負け無しは球団記録となった。

10月5日からの巨人、阪神との6連戦を5勝1敗と大きく勝ち越し。10月8日にはマジック11を点灯させた。その後、幾度か足踏みがありながらも10月26日のDeNA戦に勝利しマジック1。その直後に甲子園球場で阪神が敗れたことで歓喜の胴上げとなった。

クライマックス・シリーズでは巨人相手に2連勝。第3戦を引き分けで終え、日本シリーズ進出を勝ち取った。オリックスとの日本シリーズでは初戦でサヨナラ負けを喫するも、そこから3連勝。第5戦は敗れ3勝2敗で迎えた第6戦。敵地・神戸で延長12回の死闘を制し日本一を勝ち取った。

 

チーム防御率が1点以上も改善

[失点]531(3位)
[防御率]3.48(3位)

投手陣を振り返ってみるとチーム防御率3.48、531失点はともにリーグ3位だった。リーグトップクラスの圧倒的な数字ではないものの、120試合制だった前年の589失点から失点は大きく減り、チーム防御率も4.61から1点以上改善された。このことからも前年から投手力が大きく上がったことがよくわかる。中でも目を引くのが、1試合あたりの与四球率を表すBB/9だ。前年の3.42から2.59へと1近く改善されており与四球が大きく減った。

規定投球回に到達した投手は1人もいなかった。チーム最多投球回は小川泰弘の128.1回、2位が奥川恭伸の105回となっている。小川は新型コロナウイルスによる離脱期間が影響した。一方の奥川はチーム方針によって一般的な先発ローテーション投手のような中6日での起用は1度もなかった。中9日での登板がもっとも短い登板間隔であり、中10日以上での登板が基本線。それでもローテーションを1年間守り抜き、チーム2位の投球回数を誇っている。また、2桁勝利に到達した投手も不在だった。投球回数の上位2人である小川と奥川のふたりが9勝でチーム最多勝となった。

大エースは不在でも、先発ローテーションが崩れなかったことが大きかった。ベテランの石川雅規、新進気鋭の高橋奎二、金久保優斗、原樹理、高梨裕稔、サイスニードらが長い間隔を取りながら結果を残した。前半戦で先発を担っていた田口麗斗、スアレスの2人を後半戦に入るとブルペンに回せたほど、大きな故障もなく余裕を持って運用できた。

中継ぎ投手陣は守護神の石山泰稚が不振に陥ると、5月下旬にマクガフへとスイッチ。マクガフは日本シリーズまで抑えを守り抜いた。日本一を決めた試合では来日最長となる2.1回を投げ胴上げ投手となっている。

8回は日本記録となる50ホールドをマークした清水昇が年間を通じて投げきった。7回は新加入の近藤弘樹、今野龍太、最後はスアレスと状況に応じて起用をわけた。近藤は開幕から5月下旬までの22試合で防御率0.96と圧倒的な成績を残すも、試合中の故障で離脱。その後は1試合も投げることができなかった。その穴を今野やスアレスが埋めた。また、石山も配置転換後しばらくは結果が出ない日々が続いたものの、9月以降は21試合で失点したのはわずか2試合と蘇った。

大西広樹、星知弥、大下佑馬、坂本光士郎、梅野雄吾らも25試合以上に登板。年間を通じては一軍に帯同できなかったものの、要所で役割を果たした。

先発、中継ぎともに絶対的な存在はいなかった。それでも全員でカバーしながらシーズンを乗り越え、チームを優勝に導いた。

 

村上がMVPを受賞、控えの層も充実

[得点]625(1位)
[打率].254(3位)
[本塁打]142(2位)
[盗塁]70(2位)

野手陣は打線の軸となる村上宗隆が全試合に4番でスタメン出場。MVPと本塁打王を獲得する活躍でチームを引っ張った。9月19日には史上最年少で100号本塁打に到達し、チームだけではなく球界を代表する選手にまで成長した。キャプテンに就任した山田哲人も34本塁打を放ち、自身5度目となる30本塁打超えを記録。打点も5年振りに100の大台に乗せた。

主軸2人の活躍はもちろん、その脇を固める選手も結果を出した。4月下旬に一軍合流したオスナ、サンタナの新外国人選手は波がありながらも、故障なくシーズンを終えた。序盤はオスナ、シーズン終盤はサンタナがそれぞれ村上の後ろである5番を任され、村上との勝負を避けさせなかったのはチームにとって大きい。とくにサンタナは満塁時に打率.438(16打数7安打)、18打点と勝負強さを見せた。

長年のウィークポイントでもあった1番を塩見泰隆が埋めた。チーム最多の98試合に1番で出場し、14本塁打、21盗塁とパワー、スピードを発揮。9月18日にはサイクル安打も達成した。日本シリーズでMVPに輝いた中村悠平は2番、6番など複数の打順で起用されながら打率.279(377打数105安打)と結果を残した。また、チームトップとなる14犠打を決めており、献身性も光った。

控えの層も厚かった。ここ数年は故障で苦しんだ川端慎吾が代打で復活。代打打率.366(82打数30安打)と圧倒的な存在感を見せ、代打安打の日本記録にあと1本に迫る30安打と勝負強さを発揮した。宮本丈も代打打率.313(32打数10安打)、代打での出塁率.452と川端に劣らぬ成績を残している。

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開幕直後に青木宣親らが新型コロナウイルスの影響で離脱した際は松本友らがその穴を埋めた。またレギュラーを固定できなかった遊撃手も西浦直亨と元山飛優の2人で1年を乗り切り、オスナ、サンタナの守備固めとしては渡邉大樹や山崎晃大朗、荒木貴裕らが起用され試合終盤を締めた。

 

先発候補となる外国人選手2人を獲得

<主な新加入選手>

【外国人選手】

A.J.コール(投手・前ブルージェイズ)

アンドリュー・スアレス(投手・前LGツインズ)

【ドラフト指名】

<支配下>

1位:山下輝(投手・法政大)

2位:丸山和郁(外野手・明治大)

3位:柴田大地(投手・日本通運)

4位:小森航大郎(内野手・宇部工高)

5位:竹山日向(投手・享栄高)

<育成>

1位:岩田幸宏(外野手・信濃グランセローズ)

来シーズンへ向けての補強も抜かりない。複数年契約を結んでいるマクガフはもちろん、オスナ、サンタナ、サイスニードもそろって残留。アルバート・スアレスが退団したものの、A.J.コールとアンドリュー・スアレスの両投手を獲得した。高津臣吾監督はコールとスアレスを先発で起用する方針を示しており、先発ローテーション、外国人枠の争いは激しくなりそうだ。

ドラフトでは即戦力の先発候補として左腕の山下輝(法政大)を1位で獲得した。ドラフト後に疲労骨折が判明したもの春季キャンプには支障がなさそう。石川、高橋らにつづく先発左腕の座を勝ち取ることが求められる。2位の丸山和郁 (明治大)も守備・走塁面で評価が高く、一軍の外野争いに割って入ってきてもおかしくはない。

チームは投手・野手ともに戦力の流出はほぼなかった。それでいて主軸には若い選手が揃っている。キャプテンの山田は30歳のシーズンを迎えるものの、村上は22歳、ブレイクした塩見も29歳でまだ若い。川端や宮本ら控えの層も充実している。

投手陣は中継ぎ投手陣の疲労が心配ではあるが、奥川、高橋と25歳以下の若手がエース候補として控えている。奥川は中6日での登板が解禁される見込み。ブルペンの負担は減るはずだ。また近藤や梅野らが年間を通じて働くことができれば、厚みがぐっと増す。

戦力が整ってきたヤクルトは、大きな怪我さえなければ来シーズンも上位争い、優勝争いを繰り広げることができそうだ。

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