「村上二世を探せ」-プロ野球にこんな声が渦巻いている。いた! 夏の甲子園で3本塁打を放った高松商の外野手・浅野翔吾である。ドラフト会議で10球団の指名も、と。
海の向こうが大谷翔平なら、日本球界はヤクルトの村上宗隆の豪打、猛打で持ち切りである。真夏の8月に5打席連続本塁打(20日)、最年少150号達成(26日)と外野席へ遠慮容赦なく放り込んだ。
間もなくドラフト会議を迎える各球団は、この村上に刺激されて「将来の村上」獲得を目指している。そこで注目されているのが“四国の怪物”こと浅野。佐久長聖高戦での2打席連続アーチを見てスタンドのスカウトは「プロOK」と五重丸を付けた。10打数7安打を残すと、早々と「プロ志望届は提出します」と言い切った。プロ野球にとってはありがたい宣言である。
浅野は香川県予選の5試合で1番打者として出場し、14打数8安打(二塁打2、本塁打3)7打点、打率5割7分1厘と打ちまくった。決勝でも高校通算64本目のホームランを左中間に放った。本番の甲子園ではそれ以上の成績を残したのだから、プロ野球がラブコールを送るのは当然だろう。
清宮の7球団指名を更新間違いなし
浅野はU-18日本代表チームに選ばれ、米国遠征前の立大戦(30日)でもトップバッターとしていきなり2塁打を放ち、大量5点の足掛かりを作った。試合を見た10球団近いスカウトたちは「獲得しない理由はどこにもない」と改めて素質を評価していた。
ドラフト会議での注目は何球団が指名するか、である。5年前、早実の清宮幸太郎が7球団から指名され、抽選で日本ハム入りしている。現在の見立てでは「清宮の7球団を抜くのは確実」、「10球団もありうる」とも。村上は清宮の“外れ1位”だった。
指名殺到が予測されるのはスイッチヒッターでもあることで、左右どちらからでもホームランを放っている。高校生がプロ入りして壁にぶつかるのは金属バットが木製バットに変わることだが、浅野については「打ち方がいいのでその心配はないだろう。PL学園から西武に入団したときの清原のようにね」と太鼓判を押している。加えて50mを5秒4で走る俊足の持ち主でもある。使いやすい条件を備えているわけで、現在多くの球団が主軸打者に困っているだけに、その有力候補と期待する声は多い。タイプとしてはDeNAの4番を打つ牧秀悟に近い。
身長170cmと小柄な体格を不安視する専門家がいないわけではない。まだ育ち盛りだからプロ入りして伸びる可能性は十分ある。プロで通算567本塁打を記録している門田博光は168cmだったが、それを練習の量と工夫でホームランバッターになった。打撃センスがあれば身長は克服できる。
捕手にも人材揃う
2022年のプロ野球で、4月10日にロッテの佐々木朗希がオリックス戦で完全試合を達成したとき、同時に注目されたのが捕手の松川虎生だった。市和歌山高からドラフト1位指名で入団した高卒ルーキーとあって関係者は一様に驚いた。捕手はもっとも難しいポジションといわれており、経験が必要というのが常識だった。
この松川がレギュラーになったことで、甲子園大会でもスカウトが密かに狙っていたのは捕手である。福島・聖光学園の山浅龍之介は「ピカイチ」との評判を得た。「キャッチングとスローイングがしっかりしている」と、捕手の絶対条件を持っている。打撃もいい大阪桐蔭の松尾汐恩、福岡・九州国際大付の野田海人、長崎・海星の西村陽斗も評価が高い。
毎年多くの補強となるのが投手である。滋賀・近江高の山田陽翔、新潟・日本文理高の田中晴也、沖縄・興南高の生盛亜勇太、京都国際高の森下瑠大、愛知・愛工大名電高の有馬伽久、茨城・明秀日立高の猪俣駿太、宮崎・富島高の日高暖己、大阪桐蔭高の川原嗣貴、らの名前が挙がった。
内野手では県岐阜商高の河合福治(二塁手)、山口・下関国際の仲井慎(遊撃手)、奈良・天理高の戸井零士(遊撃手)、福島・聖光学院高の赤堀颯(遊撃手)ら。他にも大阪桐蔭の海老根優大(外野手)、徳島・鳴門の前田一輝(外野手)、ヤクルト村上を兄に持つ熊本・九州学院高の村上慶太(一塁手)らに高い点が付いた。