【FIBA女子W杯】若きチームが2勝をあげるも、ベスト8決定戦で敗戦

2018-10-01
読了時間 約2分

スペインのテネリフェ島を舞台に行なわれているFIBA女子ワールドカップは3大会連続となるアメリカの優勝で幕を閉じた。2016年のリオ五輪でベスト8、アジアカップ3連覇と上り調子で強化が進んでいた日本は、今大会の目標を「メダル獲得」(トム・ホーバスHC)としていたが、ベスト8決定戦で中国に87-81で敗れ、39年ぶりとなるベスト8進出にはならなかった。

今大会は世代交代期に差し掛かったうえに、193㎝のエース、渡嘉敷来夢が足首の炎症のために離脱したなかでチーム作りが進められた。そんななかでも半年間に及ぶ強化合宿と海外遠征を経て若手が成長。初代表組4名を加えるキャリアの浅いチームながらも、グループラウンドでベルギーとプエルトリコに勝ち切って2勝をもぎ取ったことは大きな前進だった。過去を遡れば、グループラウンドで2勝をあげたのは1998年大会以来となるだけに、メンバーが変わっても2勝できたことは、確実に地力がついている証拠であった。

だがベスト8の壁は高かった。日本が上位進出できなかった理由は大きく2つある。ひとつは主力選手のコンディションをピークに持っていけなかったことだ。

コンディションが万全で計算できる選手がキャプテンの髙田真希とフォワードの宮澤夕貴しかいなかったことに、指揮官のトム・ホーバスHCは、現地に来てからも選手起用に頭を悩ませることになる。

昨年のアジアカップでベスト5を受賞した司令塔の藤岡麻菜美は負傷で1年のブランクがあり、開幕には間に合ったものの、ベストコンディションからは程遠い出来であった。同じくアジアカップベスト5のフォワード、長岡萌映子は体調を崩して直前の海外遠征でもプレータイムが少なく、ポイントガードの町田瑠唯は開幕1か月前に負った捻挫の後遺症からなかなか調子が上がらなかった。

そんな状態で浮上してきたのがスピードとドライブインが武器のポイントガード本橋菜子であり、スタートに抜擢された馬瓜エブリンや身体能力とポテンシャルの高さを持つ19歳のオコエ桃仁花らのフォワード陣。そしてリオ五輪の経験を生かして初戦のスペイン戦で結果を残したシューターの藤高三佳だ。ホーバスHCはこれらのメンバーを中心に、最後までフィットする5人を探ることに終始してしまった感がある。最終的には経験値のある選手に頼ってしまい、その選手層は世界レベルのチームと対抗するには薄すぎた。とくに唯一のインサイドプレーヤーだった髙田の控えとなる選手が不在だったことで、サイズのなさも響いた形だ。

もうひとつはグループラウンドで2勝しながらも、決勝トーナメントに向けてのシナリオが狂ったことだ。これは結果論だが、日本が属していたグループはヨーロッパ1位と3位に挟まれた『死の組』となる混戦ぶりだった。

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グループラウンドではヨーロッパ1位のスペインにこそ敗れたが、ヨーロッパ3位のベルギーを延長の末に77-75で下した日本は、グループ2位での突破が濃厚になった。だが、グループラウンドの最終戦で、ヨーロッパ女王で開催国のスペインがベルギーに9点差で敗れる波乱が起きた。この結果により、2勝1敗が3チーム並び、得失点差によってベルギー、スペイン、日本の順位となったのだ。グループ1位は準々決勝に直行できるが、2位と3位は準々決勝進出をかけた決定戦を行う仕組みであり、ここで日本の対戦相手は戦いやすいD組3位のセネガルではなく、アジアのライバルであるD組2位の中国と対戦することになったのだ。

中国に5年ぶりの敗戦

中国に対してはこの5年間で負けなし。昨年のアジアカップでは準決勝で激闘の末に74-71で制している相手だ。だが中国は今年に入って200㎝と205㎝の19歳コンビを起用し、平均身長では大会ナンバーワンとなる187㎝の高さを擁して挑んでいた。加えて今年8月にジャカルタで開催されたアジア競技大会の優勝メンバーとほぼ変わらぬ顔ぶれで出場し(日本はアジア競技大会にはB代表が出場)、チームの仕上がりという点ではのぼり調子だった。

日本は髙田真希と宮澤夕貴を中心に、中国の高さを2人、3人がかりで抑え込み、本橋菜子の得点を軸として前半は互角に持ち込んだ。だが次第にサイズのなさが響いてくる。インサイドを警戒するあまりに、アウトサイドへのディフェンスローテーションが乱れ、ガード陣に3ポイントやドライブで得点を重ねられてしまったのだ。

「高さの中国相手に、ガード陣に3ポイントを決められてしまったら勝ち目がない」とホーバスHC。12人全員が起用できれば運動量あるディフェンスで勝負できたが、選手層が限られては、策を仕掛けるまでには及ばなかった。

グループラウンドで勝利したベルギーがベスト4入りしたことを考えれば、日本にもメダル獲得のチャンスは十分にあったと言える。しかし、どんな相手にも想定して戦える選手層を準備できたかといえば、そうではなかった。そこが日本に敗れても大会中に立て直せたベルギーや上位国との大きな差だった。それでも――と、キャプテンの髙田はこのように大会を振り返る。

「日本はサイズがなくて、若い選手も多かったですが、半年間の長期合宿をしたからこそ、この若いチームでも戦えたのです。日本のような小さな国が、練習しなかったらここまで戦えるチームは作れません。確かに、準々決勝進出戦では、中国よりセネガルのほうがやりやすい相手でしたが、相手のことを言うよりも、スペインに勝ち切れず、ベルギーに点差をつけられなかった自分たちの問題。今は悔しい思いでいっぱいですが、若いチームで2勝できたことは価値があることなので、この悔しい経験を今後につなげていくことが大切だと思っています。そのためには今後はさらにチーム練習を積み、チームの精度をもっともっと高めることが必要です」。

若手の成長

収穫点を上げれば、宮澤夕貴がエースへと成長し、本橋菜子、馬瓜エブリン、オコエ桃仁花という代表歴の浅い若手が新戦力として浮上したことだ。4月の段階で選ばれた52人の代表候補の中には185㎝を超える若手選手が4人いる。インサイドの人材がいないわけではなく、次世代の逸材たちは台頭してきている。今後はインサイドの育成を急務として、サイズのなさを補うため、12人を起用できるチーム作りが求められる。

日本女子代表の次なる目標は4連覇がかかる2019年のアジアカップだ。なお、2019年以降に開催される女子のオリンピックとワールドカップの出場権をかけた予選方式が変更することが決定しており、近日中にFIBA(国際バスケットボール連盟)から正式に発表される予定だ。